<人生の摩訶不思議>

pressココロ上




僕はファミリーマートの澤田社長をこのコラムで幾度が取り上げていますが、その理由はその言動が「信頼でき、尊敬できる経営者」と思っているからです。企業の使命は「利益を上げる」ことですが、その結果を出すために姑息な手段をとるような経営者は本当の経営者とは思っていません。例えば、従業員を使い捨てにしたり、本来支払うべきお給料を支払わなかったり、または下請けいじめなどをして、利益を上げている経営者です。

澤田氏がファミリーマートの社長に就任後、最初にやったことは現場で実際に働くことでした。制服を着て店頭に立ち、発注をして品出しをして、レジ打ちを体験しました。もちろんほんの数時間ではなく数日間きっちりと体験したそうです。

中には、マスコミ受けもしくは外見的な評価を狙ってそういう行動をとる経営者もいます。ですが、澤田社長は現場を知ることが目的ですので、ほんの数時間働いてあたかも経験したように装うような行動はとっていません。澤田社長はそんな薄っぺらな経営者ではないのです。正しい経営対策をとるには現場の状況を正しく把握することが必須という信念を持っている経営者です。

澤田社長が「現場を体験しよう」と思った背景には、昨今報じられているコンビニ業界における加盟店と本部の軋轢があります。最近はコロナ騒動もありかなり下火になってきましたが、昨年あたりまでは本部の加盟店に対する横暴さが報じられていました。

実は、コンビニの加盟店が本部から虐げられているのは、今に始まったことではありません。「虐げられる」を具体的に言いますと、本部が極端に有利となる条件で契約が結ばれていることです。加盟店の立場からしますと「かなり不利な条件」ということになりますが、例えばお弁当の「値引きができない」「廃棄をしたらそのコストは加盟店が負担する」などです。

つい最近では、本部の社員が加盟店に無断で勝手に大口発注をしていた事件も発覚しました。僕の推測では、こうした本部社員は昔からいたはずで、現在はコンビニ本部に厳しい目が向けられていますので、表に出てきたに過ぎないと思っています。

繰り返しになりますが、コンビニ業界の本部と加盟店の関係の不平等さは30年以上前から存在し、加盟店の不満はくすぶっていました。そうした状況は一部のマスコミでは報じられていましたが、社会全体の関心を集めるほどではありませんでした。大手マスコミが報じなかったからですが、その理由はこれらコンビニ本部はマスコミにとっては大口の広告主でもあったからです。そうした関係がありましたので、今はやりの言葉で言いますと「忖度」が働いていたことになります。

そうした状況が一変したきっかけは、大阪の加盟店主が本部に対して大々的に反抗ののろしを上げたことです。覚えている方も多いでしょうが、ご夫婦で経営していた加盟店のが奥様がお亡くなりになったことで人手不足に陥り、営業時間の短縮を本部の了解なしに強行した騒動です。これを大手マスコミが報じたことでコンビニ業界の不平等さが一気に世間に知れ渡ることとなりました。

澤田社長はコンビ業界がそうした混沌とした状況のときに飛び込んだわけですが、澤田社長が取り組んだのは加盟店側の立場に立った経営方針をとることでした。24時間営業の見直しを最初に決めたのはファミリーマートですし、加盟店に対する支援金の給付なども行っています。これまでは出店拡大だけを考えていましたが、市場は飽和しているとの理由で店舗縮小も行っています。

これまでのコンビニ経営の根本を変えようとしているのですが、こうした英断をできたのも澤田社長だからこそと思っています。24時間営業は加盟店にとってかなり負担です。従業員が雇用できていればいいですが、いなければ店主が働かなければいけないのです。24時間、本当に気が抜けない仕事です。

しかも、従業員がいたとしても売上げがなければ深夜は実質赤字になります。深夜は従業員の時給は1.25倍に上がりますので、その人件費を賄うのは容易ではありません。そうした状況でも本部が24時間営業にこだわるのは、加盟店の立場では赤字であっても本部にとっては利益になるからです。こうした構造で成り立っているコンビニ業界は限界にきていました。

思い起こせば、最初に24時間営業改善に取り組もうとしたのは三菱商事からローソン社長に出向してきた新浪剛史氏でした。新浪氏も就任当初は加盟店の意見を尊重し、加盟店に寄り添う経営を目指していたようでした。しかし、時間の経過とともに24時間営業の見直しも新浪氏の口から聞かれなくなり、次第に財界活動に注力するようになっていました。

その後、新浪氏が後任に指名したのがユニクロで社長を務めていた玉塚元一氏でした。慶應の先輩後輩の関係でもありますし、二人は経営誌で対談なども行うなど親しい関係だったことが理由のようです。玉塚氏はユニクロ創業者の柳井 正氏のあとを継いで社長に就任したのですが、実は澤田社長もユニクロで玉塚氏と一緒に副社長を務めていた期間があります。

柳井氏は自らの引退に際して最初は後継者を澤田氏に打診したのですが、固辞されたために玉塚氏を指名したという経緯があります。そのときに澤田氏はユニクロを去り投資会社を創業しています。ユニクロの社長を務めていた玉塚氏ですが、数年後「経営のスピードが遅い」という理由で柳井氏に解任されてしまいます。解任された玉塚氏は澤田氏の投資会社の共同経営者に就任しています。柳井氏が経営者として復帰したのはご存じのとおりです。

このあたりのそれぞれの人生模様はとても面白いものがあります。まとめますと、ユニクロを去った澤田氏と玉塚氏は共同で投資会社を経営し、そのときに玉塚氏はローソンの社長を要請され、それから数年後に今度は澤田氏がファミリーマートの社長に就任しているのです。

玉塚氏はローソン社長に就任したのですが、大株主である三菱商事との折り合いが悪く、言い方は悪いですが、結局昨年追い出されてしまいます。実は、玉塚氏が社長に就任するにあたり、新浪氏と三菱商事の間に対立があったと伝えられています。最終的に新浪氏が押し切って玉塚氏の社長が実現したのですが、昨年三菱商事出身の社長が実現しているところをみますと、三菱商事の予定どおりともいえそうです。

さて、僕からしますとファミリーマートの経営を王道の正攻法で行っているように感じる澤田社長ですが、先週少々気になるニュースが報じられました。それは、澤田社長の経営方針を批判的に報じる記事です。現在澤田社長が取り組んでいるのは、これまでのやり方で時代に合わなくなってきたところを修正、改善する道を探っているところですが、現段階では結果が出ていません。

まだ道半ばですので当然のように思いますが、その記事では「本部の社員のやる気がなくなりつつある」とか「ほかの大手2社に比べて業績が落ちている」などまるで澤田社長の経営方針、取り組み方が悪いとでも言いたげな記事でした。現役社員による内部告発的な記事までありました。

昨年までは、どちらかと言いますと好意的に報じていたマスコミがここにきて一気に批判的なトーンになっているように感じます。先日ファミリーマートは株式の買占めにより伊藤忠商事の子会社なりました。こうした一連の流れを見ていますと、澤田社長の追い落としの動きが感じられなくもありません。

伊藤忠商事は商社の中でも最近めっぽう業績を伸ばしているのですが、現在会長を務めている岡藤 正広氏の功績が大きいと言われています。この岡藤氏は業界の中で有名な方なのですが、仕事に関してかなり厳しい考えをもっている方のようです。

その意味で言いますと、澤田社長は現在予断の許せない状況であるのは間違いないところです。そうであるだけに、ちょっと心配しています。僕のうがちすぎであればいいのですが…。

ちなみに、澤田社長の社会人一年目の会社はこの伊藤忠商事です。しかも米国にあったセブンイレブンを最初に日本に紹介したのは伊藤忠商事時代の澤田氏で、最初はダイエーの中内氏に話を持っていったのですが、断られています。

人生って不思議ですね

じゃ、また。







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