<転機>

pressココロ上




たまたま、お笑いコンビ「EXIT」の兼近さんの記事を目にしました。未成年期に逮捕された経験などから現在の状況までを語っている記事だったのですが、昨年未成年期の事件が週刊誌で報じられていたことを思い出しました。しかし、当時は「EXIT」というお笑いコンビのことをほとんど知りませんでしたので、気に留めることもありませんでした。

妻が見ているテレビ番組で派手な外見をした二人を見たことがあります。そのときに妻からお笑い芸人と教えられていましたが、単なる軽いオチャラケ系の芸人程度にしか思っていませんでした。しかし、先日その二人のうちの兼近さんという方がネットのニュース番組で「コメンテーターを務めた」という記事を目にして、少し興味を持つようになっていました。

そうしたタイミングのときに、冒頭の記事を目にしましたので読む気持ちになったのですが、そうでなければ読むこともなかったかもしれません。例えば、ある新人がデビュー前の苦労した経験などを披露する記事はよく見かけます。そして、そうした苦労話はたいがい「感動ポルノ」ふうになっています。僕はその「感動ポルノ」が好きではありません。

一応「感動ポルノ」について説明しますと、この言葉は自らも障がい者である米国のジャーナリストのステラ・ヤング氏が造った言葉です。簡単に言ってしまいますと、「感動を煽る」ことですが、僕には「無理やり感動に誘導しようとする」策略のように思えてしまいます。

僕の心の中にはそうした土壌がありますので、苦労話から現在の売れっ子芸人に至るまでの記事にはあまり興味が湧くこともありませんでした。しかし、「ニュース番組のコメンテーターを務めた」という記事でたまたま読む気持ちになりました。

芸人さんが情報番組のコメンテーターを務めるのは、今の時代のひとつの流れです。ダウンタウンの松本さんも務めていますし、それ以前でも北野武さんも務めています。しかし、コメンテーターを務めるにはそれなりの知見が必要です。ですから、松本さんも北野さんも大御所という立場になってからコメンテーターを務めています。

それに対して兼近さんはまだそこまで大御所の立場にはなっていません。それにもかかわらずコメンテーターをオファーされたことが兼近さんの記事を読む気持ちになったきっかけです。

コメンテーターとまではいかなくとも、芸能人が報道番組に出演することがあります。番組的には宣伝効果を狙っているのでしょうが、注目度が増すのは間違いありません。今ではアイドルもニュース番組に出演しています。もちろん誰でもが務められるはずはなく、それなりに新聞を読み、社会的常識を身に着けていると自負がある人に限られます。そうでなければ、恐くて出演などできるはずがありません。

僕の知っている限りでは、一番初めに報道番組に出演したアイドルは郷ひろみさんです。確か、30才を過ぎたあたりですが、アイドルを卒業しなければいけない時期でした。モデルを職業としている人が、年齢の関係でモデルからの卒業を迫られるのと似ています。モデルの方も30才過ぎあたりから次のステップを模索するそうです。ご存じのように、アイドルやモデルの方が進む次のステップはやはり俳優業が多いですが、もちろんすべての人が成功するとは限りません。

郷さんが出演していた報道番組で担っていたのは単なるコメンテーターではありません。今でいうMCで、ニュース原稿を読み上げてもいたのですが、僕は郷さんの努力家ぶりに感心していました。その時期の郷さんは英語を身につけようと留学もしていましたが、常に成長を目指している姿は目指すべき社会人の鑑といえるものでした。

「英語を身に着ける」で思い出すのは、「永ちゃん」こと矢沢永吉さんです。矢沢さんも「海外で活躍するには、完璧な英語が必要」と一時期移住しています。発音がネイティブでなければ通用しないと考えていたようです。成功する人は、皆さん覚悟と根性が違います。

お笑い芸人に話を戻しますと、芸人で最初にニュース番組に出演したのは島田紳助さんだったように思います。若手のお笑い芸人として活躍したあと一時期低迷した時期があるのですが、そのときにサンデープロジェクトというニュース番組に出演しています。

このときの共演者は当時深夜の討論番組「朝まで生テレビ!」で成功していた田原総一朗氏です。その田原さんが「紳助君はいつも早く来て、新聞で勉強していた」と話していました。お笑い芸人として売れてはいても、社会的な出来事には詳しくなかったはずです。報道番組に出演することで自らの視野を広げようと意識していたように思います。そうした努力が、そのあとのいろいろな番組の成功につながっています。

お笑い芸人でありながら知識量の豊富さで売れているのはカズレーサーさんです。今のテレビ界はクイズ番組花盛りですが、そうした時代にマッチして世の中に出て来ました。カズレーサーさんが売れたきっかけは人気クイズ番組『Qさま!!』で優勝したことです。この番組が転機となったのですが、この番組に出会わなければ今のカズレーサーさんはないでしょう。

転機は大切です。

∞∞∞∞∞∞

拉致被害者家族会の会長を務めていた横田滋さんがお亡くなりになりました。生きている間に取り戻せなかった無念さはほかの人にはわからないほど大きなものと察します。奥様と息子さんは、滋さんの死に際して記者会見を開いているのですが、その記者会見で息子さんは大手マスコミでは報じられなかった発言をしました。

「安倍政権が問題なんではなくて、40年以上、何もしてこなかった政治家や、『北朝鮮なんて拉致なんかしてるはずないでしょ』と言ってきたメディアがあったから、ここまで安倍総理、安倍政権が苦しんでいる」

「安倍首相は動いてくださっている。何もやっていない方が政権批判するのは卑怯(ひきょう)だ。的を射ていない発言をするのは、やめてほしい」

息子さんのこの発言は純粋な気持ちから発せられたものだとは思いますが、受け取り方によっては政治的発言とも取れます。僕はそれを心配しています。指摘していることは事実なのですが、事実であるがゆえに拉致被害者の方々の活動を狭めることになるのではないか、と危惧しています。

繰り返しますが、息子さんは純粋な気持ちで訴えたのだと思います。しかし、その純粋さが裏目にでる可能性もあります。今朝フジテレビの報道番組に息子さんが出演していました。拉致被害者の方はできるだけ多くのマスコミに取り上げられることが、救助につながると考えています。世の中の関心が薄れてしまいますと、救助がままならなくなるのは目に見えているからです。

今朝のテレビ番組を見て驚いたのですが、横田夫妻は「小川宏ショー」にも「失踪した家族を捜すコーナー」に出演していました。1979年のことです。まだ若い横田夫妻が映っていましたが、あれから40年以上苦しみ続けてきたのです。

僕が願うことはただひとつ!

マスコミや政治家の方々は拉致被害者の方々を利用しないでいただきたい。「視聴率のため」とか「票のため」といった利己心で動かないでいただきたい。40年以上苦しんでいるのですから、ときには感情的な発言があるかもしれませんが、そうしたときもマスコミや政治家の方々は中立的に冷静に対応してほしいと思います。

今回の発言が「転機」にならないことを願っています。

じゃ、また。




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