<自法自縛(ジポウジバク)>

pressココロ上




イカさんタコさんシリーズ
イカ:「やだなぁ…。僕、風紀委員になっちゃった」
タコ:「まぁ、仕方ないじゃない」
イカ:「でも、みんなのこと見張るみたいで…」
タコ:「そうか、でもやるしかないじゃん。クラスみんなで《クラス16ヶ条》を決めたんだし。それに委員長の大泉君だって一生懸命やってるし協力しようよ」
イカ:「そうだよね。さっき大泉君に呼ばれて『うちのクラスは土足で校舎内を歩かない』ことを重点目標にすることになったんだ」
タコ:「そ、そうか…。あ、いけない。僕、上履きに履き替えるね」
イカ:「ごめんね。タコ君にどうやって言おうか悩んでたんだ」
タコ:「いいよいいよ。タコ君の任務なんだから」
イカ:「そう言ってもらえると助かるよ。僕、委員長に報告しなくちゃいけないから」
タコ:「それも大切だよね。せっかく《16ヶ条》を決めてもみんなが守らなかったら意味ないもんね」
イカ:「そうなんだ。みんなで《16ヶ条》を守っていいクラスにしたいよ」
タコ:「僕は素直に従うけど反発する奴もいるでしょ」
イカ:「いるいる。そういう奴に限って声が大きいんだ」
タコ:「人間は自分に後ろめたさがあると大声になるらしいよ」
イカ:「やっぱり…」
タコ:「それに人間からしたら僕ら海に生きる動物は少数派だから差別の気持ちがあると思うし」
イカ:「それは僕もたまに感じる。やっぱり人間と動物が仲良く暮らすのは難しいのかな」
タコ:「最後は多数決で負けちゃうもんね」
イカ:「そうだよねぇ。あともう少し僕やタコ君の数が多ければ多数決で負けないのにね」
タコ:「そうそう。僕の手が八本でイカ君が十本もあるしね」
イカ:「ハハハ…」
タコ:「まぁ、とにかく大変だろうけど頑張ってね」
イカ:「ありがとう。でも風紀委員やってて思ったんだけどあんまり委員の力が強くなるのも考えものだよね」
タコ:「どういうこと?」
イカ:「みんなが委員の警告に従うのにちょっと不安があるんだ」
タコ:「でもそれもみんなが決めたことだし…」
イカ:「そうだけど…。元々は《16ヶ条》って“いいクラス”にしたくてみんなが決めたんだよね」
タコ:「うん」
イカ:「でもいつの間にか“クラスのみんながやること”をクラス委員が縛りつけてる気がするんだ」
タコ:「なるほど。クラスみんなで決めたことで逆にみんなが縛られてるってことか」
イカ:「そうなんだ」
タコ:「そう言えば、隣のクラスじゃ《クラス憲法》を何人かで集まって悪く言ったら罰を受けるらしいよ」
イカ:「知ってる。共謀罪って名前らしいよ」
タコ:「やりすぎだよなぁ…」
イカ:「僕もそう思う。最近、クラスのみんなが《16ヶ条》を守ってるかどうか見張るの抵抗あるんだ。なんか監視してるみたいで…」
タコ:「わかるよ、その気持ち」
イカ:「イカ君、委員でもないのに僕の気持ちがわかるんだ」
タコ:「うん。だって僕、《委員が任務をちゃんとやってるかどうか調査会》のメンバーだから」
イカ:「……」
 じゃ、また。




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