<シワ寄せ>

pressココロ上




 電車に乗っていましたら前に座っていた50才前後のご婦人二人の会話が聞こえてきました。どちらも外見はセレブのいったふうで上品な感じです。会話の中身はお肌の悩みのようで「最近、シワが増えて嫌よねぇ」などと言っています。女性にとりシワは大敵のようです。
 先週の新聞に「雇用保険特別会計から年間4千億円が厚生労働省の外郭団体に流れていた」と いう記事が載っていました。昔は失業保険と言っていましたが、私も二十数年前にもらったことがあ ります。毎月1回、今はハローワークと言いますが職業安定所に出向き数万円の給付を受けてい ました。当時は新しい仕事の準備中でしたのでとても助かった思い出があります。失業保険は雇用保険と名称が変わったのですが、それ以外に給付内容も変わっています。もちろん厳しくなっているのですが現在の財政状況を考えますと致し方ないものと思われます。しかし今回の報道を見ますと財政状況以外にも厳しくなった「苦しい原因」があるように思えます。そうしたことをあまり議論せずに安易に給付内容を厳しくすることは受給者にシワ寄せがくるだけとなります。受給者にシワ寄せを押しつける前に無駄な出費を減らすなどしてシワが偏らないようにしてほしいものです。
 同じく先週の新聞に「混合診療」について投稿がありました。投稿者は看護士の方でしたので現 場での実感なのでしょう。「混合診療」は金持ちだけが充分な医療を受けられるような制度である、 と言っています。「必要な最新の医療が保険診療に含まれていないこと」が問題なのだ、と主張しています。「なるほど!」と思いました。
 私は今まで混合診療を認めたほうが患者の選択の幅が広がり患者にとって喜ばしいことだと考えていましたが、よくよく考えますと投稿者の主張するように「最新医療が保険診療に含まれないこと」がおかしいのです。やはり医療の基本は貧富に関係なく治療を受けられることです。そうは言いましても医療に対する国の負担がかなり重たいのも事実です。ですから患者の側がある程度の負担をすることは仕方ないとしましても患者の側だけにシワ寄せがくることはないようにしてもらいものです。
 以前、このコラムで労働組合「連合」の会長選挙に関連して鴨桃代氏に触れたことがありました。 先週鴨氏が新聞に取り上げられ、正社員とパートの格差について語っていました。この格差を市場原理だけに任せるなら広がるのは当然です。そしてもっと問題なのは正社員をパートに置き換えることです。外資系の傘下に入った大手スーパーでは正社員を解雇し同じ人をパートとして再雇用しているそうです。このことは正社員の賃金がより低いパートの賃金に合わせられることにつながります。労働者の賃金が低い方へ低い方へと流されていっています。ここでもシワ寄せは労働者のほうだけにきています。一方にだけシワ寄せがくる社会が暮らしやすい社会であるはずがありませ ん。
 と、ここまで書いてきて気がつきました。今週のコラムは全て厚生労働省の管轄の問題です。これからの日本を暮らしよい社会にするには厚生労働省の改革をすることが一番かもしれません。
 いろんな人が生活しているのですから全員が満足できる社会はありえません。ある人が快適な生活を営んでいることは他の人にそのシワ寄せがいっている可能性があります。このような社会で皆が納得できて暮らしやすい社会にするにはシワがある一方にだけ偏っていないことが必須条件で す。一番の理想はシワが全くないことですが社会も人間もそれは無理なことです。そうであるからこそシワがあることは認めつつシワ寄せがどこにもいかないように工夫することが大切です。「シワ寄せ」を少し変えると「シアワセ」になるのですから。
 じゃ、また。




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