<士(サムライ)の責任>

pressココロ上




 マンションの耐震偽装問題が混沌としています。新たに(株)総合経営研究所という企業まで登場しそれぞれの企業が自分の正当性を主張しています。本当の責任はどこにあるのでしょう。責任とはもちろん「居住者に対する責任」です。国会の参考人質疑でのやりとりを見ましても意見がかみ合っていないという印象です。場所を司法の場に移さない限り真実はわからないようです。
 ニュース映像を見る限り、ヒューザーの小嶋社長は強面の迫力ある経営者に感じられます。その強烈な個性ゆえに早速、週刊誌に取り上げられていますが、流れ的にはヒールになっていく感じです。週刊誌の特性として全体の構図からヒールとなりうる人物を特定し徹底的に報道するのが常だ からです。今から約10年前オウム事件のときに河野義行さんを報道したときもそうでした。私たち読者としては週刊誌の見出しに惑わされることなく冷静に見守ることが大切です。
 ときに大きな声を出し怒鳴ることがマイナスの印象を与えていますが、小嶋社長の言った「経済的圧力を与えずコストアップを認めることが正しい経営判断と言えますか?」という発言は一理あるように思います。市場競争において少しでも経費を抑えようと考えることは決して間違ってはいませんし、そうしなければ生き残っていくことはできません。ただ一点の問題は「法律を犯してまで」を求めたかどうかです。この点について意見の食い違いがあるのですから誰かが事実を曲げていることになります。
 「法律を犯して」いたかどうかを判断するのが検査機関です。しかし報道によりますと詳細な審査は物理的時間的に不可能ということです。これではいったい「なんのための検査機関であるか」と思ったのは私だけではないでしょう。検査機関という制度そのものに不信感を持ってしまいます。
 思い出すのはカネボウの粉飾決算事件です。先週、東京地裁で元社長、元副社長の二人は罪状を認めました。そこで問題となるのはその粉飾を見抜けなかった、もしくは見逃した監査法人です。決算が正しいかどうかを監査する機関がその役目を全く果たしていなかったことになります。監査が機能しない監査機関とはいったいなんのでしょう。
 検査にしろ監査にしろ、共通点は他人の作ったものに判断を下すということです。「作った人」はできあがったものに対する責任を負わなければなりません。本来は、同様に「判断を下す」ことにも責任が伴わなければなりません。しかし現状はあいまいなままになっていることが多くなっています。そしてもう一つの共通点は検査、審査をする職種は資格が必要だといことです。一級建築士、 公認会計士といった資格が必要です。いわゆる士(サムライ)業です。以前、HPで「資格をとって収 入3000万円」いった内容の本を紹介したことがありますが、士業は一般の仕事より収入が高い傾 向があります。この傾向は超難関な資格であればあるほど顕著になります。士業の中でも超難関と言われる弁護士などは年収数千万円という例も珍しくはありません。このように士業は収入で恵まれているのですからその責任があいまいであっていいはずがありません。
 毎年、年が明けると税務署から確定申告用紙が送られてきます。その中には「確定申告は自分で書きましょう」と書かれています。以前税理士さんにお願いしていた頃、税理士さんは言っていました。「帳簿は自分でつけてください。私たちは内容が正しいかどうか見るだけですから」。そして顧問税理士の欄に名前と印鑑を押していました。確かに私のつけた帳簿を基にPL表やBS表は作成し届けてくれていました。しかし私は心の中では「確定申告が正しいかどうかを見るのは税務署の 仕事ではないか」と思っていました。「なぜ、確定申告が正しいかどうかを見てもらうために年間20万円の顧問料を払わねばならないのか」と。
 私がHPで「経理ソフト」や「税理士さんを探すサイト」をアフィリエイトで宣伝しているのはこのよう な理由があるのです。私の税理士さんは次のようにも言っていました。「税理士は保険のようなも のだ」と。監査をするだけの仕事で年間20万円の保険はちょっと高いです。税理士さんの中にも顧問料にふさわしい仕事をしている方もいるでしょう。みなさん、もし税理士さんに頼むならじっくりとその人の仕事の取り組み方をよ~く確かめてからお願いをしましょう。
 先週のコラムで、住居を失った方々の補償は購入者に直接接した販売者がするべきであると私は述べました。しかしその販売者の補償能力がなくなることも予想できます。私は思います。今回のようなケースは公害と同様に扱うのがよいのではないか、と。例えば水俣病を発生させたチッソという企業は倒産しないように県と国が支援しています。今回の問題も販売会社を県や国が支援 をしながら販売会社を継続させるのが一番よい方法だと私は考えているのですが…。
 普通の人にとって住宅を購入するということは一生で一番高い買い物のはずです。その買い物をする際の決め手になるのはやはりその建物なり販売会社が信頼できるかどうかです。その判断材料となるのが建築士や宅地建物取引主任者といった資格の有無です。資格の有無を判断材料にすることは住宅の購入に限りません。その資格を持っているということは社会から信頼されていることです。士業の方たちはその信頼を裏切らないことをいつも心に持っていてほしいと思います。
 ところで、小嶋社長が大きな声で怒鳴るようすをテレビで見ていてなんか似たような人を知ってるよなぁ、と思っていました。じ~っと、考えていましたら隣の部屋から声が怒鳴り声が聞こえてきました。
「ちょっとー! なんでこんなとこに灰皿置いとくのよ!」
 じゃ、また。




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