<確信犯>

pressココロ上




 語句やことわざの意味を本来の意味とは間違って使っている、と指摘されることがあります。有名な例として「情けは人の為ならず」は本来は「他人に情けをかけておけば、回りまわって結局は自分に良い結果をもたらす」という意味ですが、全く反対に「他人に情けをかけると甘やかすことになる」という意味で使っている人が多いそうです。私が今年半ばまで間違った意味で使っていた言葉 が「確信犯」でした。
 「確信犯」の本来の意味は「政治・思想・信仰上の信念から、自分の行為を正しいとしてなされる犯罪・犯人」でした。それまで私は単純に「悪いことと自覚しながら行う犯罪・犯人」と理解していました。「情けは人の…」と同じように全く反対に思っていたのです。それ以来「確信犯」という言葉が気 になり注意をしながら見渡していますと私同様間違って使っている人が多いようでした。テレビでのタレントの方なども間違って使っていますし、それに反応する周りの人たちも間違って理解しているようです。たぶん「確信犯」に限らず間違って一般に用いられている語句やことわざは他にもたくさんあるのでしょう。
 先週行われました国会証人喚問での姉歯氏は間違った意味での「確信犯」だったようです。
…ややこしくなりますのでここから先は「間違った意味での確信犯」を「認識犯」と呼ぶことにします …
 私は2ヶ月ほど前に駐車違反で罰則を受けたのですが、これなども認識犯です。悪いことと知りながら駐車したのですから…。しかし言い訳をさせてもらうならその悪いことの重要度は全く違うはずです。皆さんも小さな認識犯になった経験はありますよネ。中国のことわざにも「大事は理を以って決し、小事は情を以って処す」とありますし…。ん?、このことわざの使い方は合っているのでしょうか…。
 マンション耐震偽装問題での認識犯は姉歯氏ただひとりです。それ以外の関係者は「自分たちは正常に業務を遂行したに過ぎない」と考えているようです。もしそうだとするならある政治家が話していたように建築業界の制度に問題があるということになります。
 一般の人がマンションを購入するとき安全面に関しては審査機関を信用する以外に判断の材料とすることはできません。その審査機関が機能を果たせていないのですからやはり制度を改革する必要があります。そして残念に思うのは建築士をはじめとする建築関係の方々が今までの制度に対して何も疑問を持たなかったことです。ひとりでも建築業界に「確信犯」がいたなら現在のような事態にはならなかったでしょう。しかし姉歯氏が話していたように生活がかかっていたなら容易で はないでしょう。
 思い出すのは数年前、関西の倉庫業者が雪印の偽装を告発した事件です。あのときの倉庫会社社長は正しい告発をしましたが業界側からすると「犯人」でしかありませんでした。告発により一度倒産したあと復活するまでのドキュメント番組は、正しいと思う信念からでも告発するには相当な覚悟がいるということを教えてくれました。
 今週のプチアビリトは漫画家のやなせたかし氏の「正義は常に逆転する」ですが、法律や慣習が全て正しいとは限りません。法律や慣習を守りつつ自分の正義を作ることが大切なようです。そして法律や慣習と自分の正義が対立し、それでも自分の正義を貫くときは生活や生命を失うことも覚 悟しなければなりません。ソクラテスは「悪法も法なり」と言って処刑されました。しかし現実問題としてソクラテスになれる人が少ないのは当然ですから、審査機関の制度が正しく機能するようにすることが今一番求められていることです。
 先週アメリカ産牛肉の輸入が再開されましたがこの決定は専門家の方々が下したものです。マンション耐震偽装問題とアメリカ産牛肉輸入問題は根っこが同じだと私は思っています。どちらも専 門家が審査をしているからです。マンションについてはその審査が間違っていることが明らかになりましたが、牛肉問題ではまだ答えが出ていません。牛肉問題に答えが出るのはもっと先になるでしょう。そこで一般の人たちにとって大切なことは自分で判断するということです。私もBSEについてもっと勉強して調べて知ることから始めなければならないと思っています。それから食べるかどうか決めようと思います。皆さんもちゃんと調べて真実を知ってから決めてくださいネ。
 あ~そう言えば、ソクラテスはこうも言っていました。
「世間で知恵ある者と思われている者は、例えば善や美について『自分は知っている』と思っているが、私は彼らのように『知っているとは思っていない』分だけほんの少しばかり知恵ある者である」
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする