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pressココロ上




 先週のライブドアショックは株価の下落を招きました。ライブドア捜査の報道後2日間はほぼ全銘柄が値を下げる状態で人間の心理とは皆似たようなものだと実感しました。もちろん私もその一人…。私の心理状態を振り返ってみますと…。
 月曜夜に速報が入ったときはそれほど深刻に受け止めたわけではなく
「多少は下がると思うけどまだ売~らない」
と決めていました。ところが翌日火曜の市場を見ますと私の予想とはかけ離れた結果で大幅な全面安でした。それでも
「今日は下がったけど日本の景気は決して悪いわけではないから明日は元に戻る」
と悠然としていられました。ところがところが翌日午前10時頃にパソコンで市場を見ますと株価の下落が止まっていません。さすがに「ウッ!」と思いました。
「どうしようか…」。
 そう思った瞬間に心はもう動揺を始めたのです。それでもまだ
「必ず反発するはずだ」
という思いが7割は占めていました。人間とは動揺が始まるとジッとしていられなくなるものです。それからは20分おきくらいに株価をチェックするようになっていました。午前の部が終わる10分前、まだ下落が続いています。私の心は「う~ん」。「反発するはずだ」という思いが5割5部まで下がっていました。
 お昼ごはんを食べながらも頭の中ではディベートが行われていました。
強気「絶対反発するに決まってるよ。日本は景気がいいんだよ。別に企業の業績が悪くなって株価が下がってるわけじゃないんだから」
弱気「そんなこと言ったって現実的にほとんどの銘柄が下がってるじゃないか」
強気「あのな、これは機関投資家が売りに走ってるからだよ。機関投資家は自分のお金じゃないから自由がないんだ。それに会社からの評価だってあるんだから余裕がないはずなんだ」
弱気「そうは言ってもなぁ…。これ以上下がると損が大きすぎるしなぁ…」
 こんなディベートが行われていたのですが、そんなとき頭の中に株とは全く関係ない小学生時代の思い出が蘇ってきました。
 あれは小学生5年の秋。
 学校では秋の運動会の準備が始まっていました。当時は運動会の種目に100メートル走という競技があり生徒全員が参加することになっていました。そのため各生徒のタイムトライアルがあったのです。これは生徒に対して配慮するためでした。6人一組で走るのですが、そのメンバーをできるだけ同レベルの速さの人たちの組み合わせにするためです。そうすることによって生徒のやる気を引き出すとともに順位が下位になるにしてもそれほど大差がつかないからです。やはり家族が来ている前であまりにひどい負け方は子供の心を傷つけます。
 タイムトライアルは運動会前に体育の時間に行われました。僕の足の速さは中の上くらいといったレベルでしょうか。メチャクチャ速いわけでもないがそれほど遅いわけでもない、といった感じです。
 その僕がタイムトライアルでなんとクラスで1番早いタイムを出してしまったのです。先生が僕のタイムを告げるとクラスのみんなは「おお!」という歓声とともに訝しげな雰囲気も漂っていました。1番驚いたのは当人です。「足の速さは中くらい」と自覚していたのですから当然です。あとで知ったことですが、クラスのみんなは「先生がストップウォッチを押し間違えた」と噂していたそうです。
 先生のミスであろうが先生の告げたタイムが結果となります。果たして僕は1番早い人たちが走る組に入れられたのです。
 1番驚いたのは僕ですがクラスのみんなも同様です。中でもクラスでは1番足が早いと自負していたナカちゃんは納得しがたいものがあるようでした。小学生の子供とはいえやはり直接「マルちゃんのタイムはおかしいよな」とは言えないものです。しかし真実を知りたいのは大人も子供も同じです。
 僕はナカちゃんと仲がよかったので一緒に遊ぶことがよくありました。タイムトライアルのあとナカちゃんと歩いているとナカちゃんが急に言い出したのです。
「マルちゃん、あそこの電信柱まで競争しようよ」
「えっ?」
僕はナカちゃんの気持ちが察せられました。ナカちゃんは僕が本当に自分より速いのか確かめたかったのです。もちろん負けました。でもナカちゃんは走り終わったあとなにも言いませんでした。結局運動会の日までナカちゃんとは電信柱競争を3回走りました。僕としては「間違ってクラスで1番になった者」の義務だと思っていたのです。
 懐かしい昔のことを思い出していますと午後の部が始まりました。相変わらず株価は下落を続けています。午後1時半、「これ以上下がると反発するにしても相当時間がかかるな」と考え始めていました。午後1時45分、「2001年9月のアメリカテロがあったとき株価下落は長引いたよな」。午後2時過ぎ、…売却。
 典型的な狼狽売りでした。あとで調べますと僕の持っていた銘柄は直近1ヶ月で1番高いときに購入し1番安いときに売却したことになります。
 僕って株のセンスがないのかなぁ…。
 ライブドア事件は捜査が始まったばかりですが、もし本当に「風説の流布」など犯罪を犯していたのなら厳しく断罪されるべきです。健全なマーケットであってこそ株を楽しもうとする個人投資家は増えるはずです。株式はゼロサムゲームです。間違った情報のもとで競争に勝てるはずはありません。100メートル走で最下位だった僕のように…。
 じゃ、また。




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