<ブランドと審査機関>

pressココロ上




 この数ヶ月、新聞で「偽」という字を見ない日はありません。昨年末のマンション耐震偽装からはじまりライブドアの偽計発表があり先週はお米のブランド偽装が報道されました。コシヒカリでない米にコシヒカリのシールが貼られていたわけですが私たち消費者としては偽物と見抜くことは容易ではありません。しかしこの事件はブランドを利用した犯罪でしかありませんからブランドそのものの価値、評価が損なわれたものではありません。
 ブランド品といえば一般に高級、高価といったイメージを持ちます。本来はブランド品は品質がよいことの証となりますが、人によっては「ステータスを高める」と思っている人もいるでしょう。実際、テレビなどではセレブと言われている人たちがたくさんのブランド品を持っていることが紹介されています。
 それほど社会から認められているブランドですので企業にとってはブランドを確率することが成功への道となります。
 以前、経済誌に載っていましたお弁当を作っている会社の記事を紹介します。
 その会社の社長は自分の会社の弁当にとても自信を持っていました。どこの高級料理店の弁当と比べても遜色はないと思っていました。販売チャンネルはコンビニでしたが今ひとつ売上げは芳しくなかったそうです。そこで社長は実験をしました。有名な料理評論家に食べ比べてもらうことにしたのです。
 最初は弁当にどこで販売しているかなにも表示をせずにそれぞれを食べてもらったところ評論家は自分のところの弁当のほうがおいしい、と答えました。次にそれぞれの弁当を販売している店を表示して食べ比べてもらいました。一つはコンビニで他方は高級料理店です。その結果は高級料理店のほうがおいしい、というものでした。この実験から社長はブランドを確率することの重要性を再認識しブランド構築に力を入れ成功したそうです。
 ブランドって大切ですよね。先週の記事でもバッグで同じような社長が登場していました。一般消費者を相手に販売するメーカーはブランド確立が生命線と言えるようです。
 ブランドを確立させるには広告・宣伝が欠かせません。そして成功したときそのブランドは消費者が信頼性を与えたことになります。その過程には評論家などその道に詳しい専門家の意見も入りますが、専門家がいくら認めようが消費者に受け入れられなければブランドを確立させることはできません。ブランドの審査機関は消費者でありマーケットと言えます。
 それに対してマンション耐震偽装やライブドアの偽計発表に登場する審査機関は資格を持った専門家でした。バッグや宝石などは一般の人でも評価できますが、マンションといった建物や経営に関する難しい数字は一般の人には評価できないからです。一般の人では評価できないほど重要な審査機関に実は信頼性がなかったことが今回明らかになりました。先日も熊本県で新たに偽装計算が発表されましたが、記者会見での担当課長は
「自分たちは専門家ではないからわからない」
と答えていました。「わからない人」が審査する審査機関とはなんなのでしょう。この偽装計算問題は他の県でも見つかる可能性が高いようですが一歩間違えると日本経済に悪影響を与えるほと大きな問題になりそうで不気味です。
 また、偽装計算以外に作業現場での不正も疑われはじめています。コンクリートの強度違反です。経費削減のためにコンクリートを薄めて使っていることが指摘されていますが、これも事実だとするなら日本の建物に安全性はないことになってしまいます。
 まだ問題はあります。政府は偽装マンションの住居者に補償を発表していますが、11年前の大震災では「個人の財産」ということで補償はしていません。私は以前「倒壊」という本を紹介しましたが、この本は正しく大震災で住宅ローンだけが残った人たちをルポしたものでした。大震災で倒壊したマンションなども偽装されていた可能性が高いようです。今となっては検証するわけにもいきませんが、もし大震災で倒壊したマンションの原因が耐震偽装にあったなら大震災の被災者と今回の住居者との間に整合性がないことになってしまいます。不公平になってしまいます。もしこの不公平が声高く叫ばれだしたなら収拾がつかなくなってしまいます。政府としてはどこかで線引きもしくは幕引きをするしかないでしょう。現実的にはそれしか方法がないと思いますができるだけ公平に幕引きをしてほしいものです。
 年末から起きたいろいろな事件も元を正せば審査機関の信頼性にたどり着きます。ブランド品のようにブランドの偽物が出回るほどの信頼性が審査機関に認められるような制度にしてほしいものです。
 子供が保育園の頃に質問されました。
娘:「ねぇ、ブランド品ってな~に?」
父:「バッグとか洋服とかの高級で高いものだよ」
娘:「ふ~ん。…ウチにはある?」
父:「ないなぁ」
娘:「そっか。でもアタシにとってはお父さんがブランド品だよ」
父:「うれしいな。でもね、父さん本当はブレンドなんだ」
娘:「ふ~ん。似てるね」
 じゃ、また。




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