<人の性(さが)>

pressココロ上




オリンピックもとうとう本日が最終日となりました。正直に言いますと、オリンピックが始まる前はあまり楽しみにしていなかったのですが、いざ始まってしまいますとやはり感動するものです。先週のコラムを書く時点では羽生選手の金メダルが一番感動しましたが、その後も感動する場面がたくさん生まれました。やはりスポーツっていいですよねぇ。
今回のオリンピックで僕が一番印象に残っているのはスピードスケートの小平奈緒選手と高木美帆選手です。小平選手のスポーツマンシップは世界から賞賛されましたが、さらに素晴らしいのはそのスポーツマンシップを殊更押しださなかったことです。
テレビなどマスコミは小平選手が金メダルを獲得するまでの道のりをどうしてもドラマティックにしたがったりストーリーを作りたがります。ですが、小平選手はインタビューなどにおいても自身の喜びや周りへの感謝の気持ちを素直に出しながらもできるだけ淡々と対応していました。
特に親しい友人が昨年亡くなっているという出来事はマスコミ的には感動的なストーリーに仕立てあげたい格好の材料でした。しかし、小平選手は涙を流しながらも感動を強調させるような言動をとっていなかったところがスポーツと商業主義の間に一線を画していたようで好感でした。
一部のマスコミでは小平選手を哲学者になぞらえていますが、「金メダルは名誉。でも生き方が大事」という名言は後世に残るでしょう。これほどスポーツ選手の目指すべき生き方の核心をついた言葉はありません。
同じようなことが高木美帆選手にも言えます。高木選手の場合は15才で代表に選ばれ19才のときは代表を落選し、そして今回また代表に選ばれ、しかも銅、銀、金と3つのメダルを獲得しています。まるで漫画原作の基本のような生き方を生身の人間がたどっているのですから感動を呼び起こさないはずがありません。小平選手と同様にもしくはそれ以上に感動ストーリーを作りやすい材料が揃っていました。しかし、それでも感動に行き過ぎることもなく、淡々と受け答えをしていたところに感激しました。
さらに高木選手が「すごいなぁ」と思えるのはまだ23才という年齢であることです。小平選手は30才を超えていますので素敵な対応をできても「不思議ではない」という思いがあります。しかし、敢えて「弱冠」という言葉を使いますが、弱冠23才であれだけ素晴らしいマスコミ対応をできるのですから、どれほど辛く厳しい人生を歩んできたのだろうと思うと、尊敬の念を覚えずにいられません。
高木選手にこだわってしまいますが、実は高木選手にはあと一つ「すごいなぁ」という思えたことがあります。それは姉である高木菜那選手との距離のとり方といいますか接し方です。
実は、60才を超えた今になってわかりますが、子どもを育てることほど難しいことはありません。同性の子供の場合は尚更です。男にしろ女にしろ同性の場合は子供なりにライバル心が生まれます。同じ親の元に生まれ、同じ育て方をされてもその結果が違うのですから劣っているほう心中穏やかでいられるはずがありません。そこに確執が生まれます。
そして、その確執は二人の年齢が近いほど顕著に現れます。人間というのは大人になっても嫉妬心とか羨望、顕示欲といったポジティブな感情が芽生えます。大人でさえそうなのですから子どもが出ないはずはありません。
大人の場合は感情をコントロールまたはごまかす術を身につけていることもありますが、子どもの場合はそのような術を持ち合わせていません。このような状況で子どもは育てられます。確執が生まれて当然です。
例えば、フィギュアスケートの浅田真央さんと舞さんの姉妹がそうでした。真央さんが引退した現在でこそお互いの気持ちを素直に伝えられるようになっていますが、以前はどちらも心を閉じていたそうです。こうした例は枚挙に暇がありません。繰り返しますが、これは人間の性(さが)がさせる業です。人間には感情というコントロールしがたい自分の気持ちを操作するスイッチがありますので仕方のないことです。神さまであるならそうしたポジティブなスイッチをのけることもできるでしょうが、人間は神さまではありません。
話は逸れますが、実は僕は学生時代「世の中を平等にするには社会主義とか共産主義も一つの方法だよなぁ」と思ったことがありました。遊び惚けていた僕ですが、深夜に帰る電車の中で窓から見た夜空を見ながらそんなことも考えていました。しかし、社会主義や共産主義の国家がどんどんと消滅していく様を見て、これらの主義は「現実的ではない」と思い至りました。その理由が、人間の「どうしようもない感情」です。結局、嫉妬心とか羨望、顕示欲という感情が世の中を平等にさせないのです。結局、チャーチルの言葉に行きつきました。
「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」
(民主主義と資本主義は正確には違いますが、あまり固いことは言わずに)
話を戻しますと、23才という若さで姉妹の確執さえも乗り越えている高木美帆さんに拍手です。もちろん姉の菜那さんにも拍手です。女子マススタートで初代金メダルに輝いて本当によかったです。
同じ年頃の同性の兄弟姉妹で仲がよい人を見ていますと、僕はその親御さんを尊敬してしまいます。普通の親というのは誰でも子育ての素人です。僕にしても子供が小さい頃はお店を運営することで精いっぱいで子育てについて勉強したこともありませんし、真剣に考えたこともありません。ただ普通に自分の感覚で接していたように思います。僕の場合はたまたま女と男と言う異性でしたからよかったですが、同性だったならうまく育てられたか自信がありません。
おそらく同性の子育てについてきちんと勉強して細心の注意を払って接している親はあまりいないのが実状のはずです。そんな中でも子供のみんながたまたま運よく素直に育ってくれることを願ってやみません。
ところで、オリンピックをテレビで見ていますと選手の顔がアップになる場面があります。男性選手の場合はあまり興味も湧きませんが、女性選手の場合は自然と自分の好みでランキングをつけたりします。そこで最後に僕のランキングを紹介しようと思います。
僕のルックスランキング!
日本人ではカーリングの本橋さん、スピードスケートの小平奈緒さん、スノーボード選手の藤森由香さんです。外国の方ですと、フィギュアスケートロシアのアリーナ・イルナゾヴナ・ザギトワさん、スノーボード米国ジェイミー・アンダーソンさん、アルペンスキー米国リンゼイ・ボン(アメリカ)さんかなぁ。
えっ、スポーツの世界でルックスで順位をつけるのは不謹慎だって?
これも人間の性(さが)ですから。
じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする