<フェアプレー>

pressココロ上




先週は日大アメフト選手の悪質タックル問題で新たな展開がありました。ほとんどの放送局で大きく取り上げていましたが、僕もいろいろな思いがありましたので書きたいと思います。
その前にボクシングの井上尚弥選手のタイトルマッチについて書かせてください。とにかく強かった。実は、僕は試合をリアルタイムで見ていませんでした。試合があることを知らなかったからですが、あとから見た映像は井上選手の強さを証明していました。
元々はフライ級の選手ですので体格的には不利でしたが、その不利を感じさせない戦いぶりでした。これで井上選手はバンタム級もチャンピオンになりましたので3階級を制覇したことになります。試合後、今秋に行われるボクシングのチャンピオン同士が戦うトーナメント大会に参戦することを表明しましたが、世界が「モンスター」と認めていますので今から秋の大会が楽しみです。
井上選手の強さを物語るエピソードとして、高校生のときに日本ランカーになっていた田口良一選手とスパーリングをしたときの逸話があります。普通に考えますと、プロのランカー選手とアマチュアである高校生がスパーリングをしますと高校生は歯が立たないものです。しかし、そのスパーリングで田口選手は高校生である井上選手にダウンを奪われたのです。常識では考えられない光景です。田口選手は悔しくてその夜に泣いたそうです。それほど井上選手はずば抜けて強かったのです。
僕はたまたまその映像を見たことがあるのですが、井上選手のパンチを受けてダウンをした田口選手の姿に驚かされました。周りで見ていた人たちがどよめいたいたのがわかりましたが、田口選手はこのあと日本チャンピオンになり世界チャンピオンにまでなるほどの選手です。その選手からダウンを奪ったのですからその強さがわかろうというものです。ちなみに、その後二人は日本チャンピオンと挑戦者という立場で対戦していますが、判定で井上選手が勝利しています。
その井上選手の素晴らしさは強さだけではなく性格や人柄にもあります。以前マスコミ受けすることばかりを狙っていたボクシング選手がいましたが、対照的にパフォーマンスをすることなく礼儀正しく自然に振舞っている姿勢は好感です。やはりプロといえどもスポーツにはフェアプレー精神が求められて当然です。
そのフェアプレー精神とはかけ離れたプレーが問題となったのが日大アメフト選手の悪質タックルです。先週は当該選手が記者会見を開いていましたが、あの率直な話し方や受け答えをする姿勢に好感した人は多かったのではないでしょうか。
若干二十歳の学生が多くの記者が周りを囲んでいる会見場で発言するのは勇気と覚悟と度胸が必要です。もちろん小心者の僕にはできませんが、大人の中でもどれだけの人ができるでしょう。それを思うとき当該選手の行動は賞賛されるべきことです。
当該選手が記者会見を行った翌日に日大の監督とコーチも記者会見を行いましたが、「自分たちの立場を悪くしないため」という印象はぬぐえませんでした。多くの人が指摘していますが、「選手のため」とか「責任はすべて監督の自分にある」などと言いながら「選手が間違って理解した」と選手に責任を押しつけているのはあまりにみっともない姿でした。
結局、当該選手と監督・コーチの説明には齟齬があり、どちらに真実があるのか判断に迷うところです。ですが、その後に会見を開いた被害者側である関学のGMマネージャー・監督は「当該選手のほうに真実がある印象を持っている」と話していました。
関学の会見に追い打ちをかけるように、日大の内田監督がマスコミのインタビューに「俺がやらせた」と答えている生々しい音声を週刊誌が公開しています。これだけいろいろな証拠が出てきますと、日大の監督・コーチの言い訳は通用しなくなるように思います。
さらにこの問題はアメフトだけではなく日本大学のガバナンスの問題にまで広がっていきそうな気配です。かつて日大で教授を務めていた女性が過去に相談を受けたパワハラについてもマスコミで告発していました。「#Me too」が世界的に席捲している現在の状況ではなにかのきっかけで問題が広がる可能性もあります。
また、日大の理事長がパチンコをやっている映像が流れていましたが、こうしたマスコミの動きはこれから「日大を追求する」という狼煙を上げたようにも感じました。理事長のかつてのスキャンダルなども伝えられていますのでアメフトから日本大学の本体にまで問題が広がりそうは気配です。
今回の監督・コーチの記者会見には多くのマスコミが集まり質問がなされました。マスコミは監督・コーチがどのように答えるかに注目していたのですが、現場では日大広報部の司会者を務めた方にも注目が集まることとなりました。理由は、その尊大な話しぶりや会見の仕切り方に問題があったからです。
僕はこの会見をリアルタイムで最後まで見ていたのですが、謝罪会見の司会者として不適切な言動に違和感を持ちました。この司会者に関してテレビ各局に登場するリスクマネジメントの専門家たちが一様に「下手さ加減」を批判していましたが、誰が見ていても尊大と感じる仕切りぶりでした。この方は元々は共同通信社の記者をやっていた方のようでマスコミの内側にも精通しているそうです。その経験がマスコミに対してぞんざいに対応させていたようです。
この方の発言で僕が印象に残っているのは「同じような質問ばかりですので」という言葉です。会見を終了させたいがための発言のようにも受け取れますが、僕には的を射た発言のようにも思えました。実は、記者会見を見ていて僕が感じたことは記者の方々の質問の仕方が下手なことでした。
記者の個人的な資質もあるでしょうが、根本的な問題としてマスコミ各社がバラバラに質問しますることが記者会見を実りの少ないものにしているように感じました。僕も司会者と同様に同じような質問ばかりで「全然進展しない」と感じていました。時間ばかりが過ぎてしまい、意味のない記者会見の印象になっていました。
記者会見におけるこうした問題は今回に限ったことではありません。そして、その理由はマスコミ側にあると僕は思っています。僕はニュース番組を見ることが多いですが、番組を見ていて最近感じることがあります。それは会見のようすを放映する場面でですが、わざわざ番組の出演者が質問している映像を流すことです。まるで「こうしてちゃんと質問していますよ!」と訴えているようです。
このようなことを各番組の出演者がしますので自ずと同じような質問ばかりをすることになってしまいます。番組的には出演者をアピールする効果があるのでしょうが、取材を受ける側にしてみますと同じ質問ばかりが続くことになります。日大の監督・コーチへの質問はそのような場面が多々ありました。質問する前にマスコミ名と氏名を名乗ってから質問していましたので余計に非効率な取材現場となっているように感じました。
マスコミの皆さんもおそらく僕が感じていることと同じことを感じているはずです。ここはひとつ自らを反省するという意味で記者会見の質問のやり方をマスコミが揃って工夫することを考えてほしいと思っています。取材する立場であるマスコミにもフェアプレー精神が求められるはずです。
じゃ、また。




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