<キング・カズの思い出>

pressココロ上




ワールドカップで世の中が盛り上がっていますが、格上のコロンビアに勝利したのですから当然といえます。いろいろな番組で解説していますが、開始早々にペナルティキックとはいえ得点できたこととコロンビアに退場者が出たことが勝因です。このプレーを振り返ってみますと、相手チームがまだエンジン全開になる前に日本が攻撃したのが勝因のように思います。まだ気持ち的に集中していなかったからこそのコロンビア選手のハンドです。まさにコロンビア選手の油断、気の緩みです。そして、その隙をついた日本チームの集中力の賜物です。「なんとしても勝つ」という強い気持ちが起こさせた奇跡です。
僕の年代でワールドカップの思い出と言います、やはり「ドーハの悲劇」が強く記憶に残っています。そして、僕の頭の中にはあの試合での三浦知良選手の最後まで集中力を切らさない強い精神力を示す姿が刻み込まれています。
実は、僕はこのコラムでこのときのカズ選手についてたびたび書いています。ですが、ワールドカップで盛り上がっていますので久しぶりに書きたい気分になりました。あの試合はワールドカップ初出場の可否が決まる大事な試合でした。対戦相手はイラクでその試合に勝利すると初出場が決定したのですが、2-1で勝っていた試合の終了間際のロスタイム(今はアディショナルタイムと言いますが、当時はロスタイムと言っていました)にゴールを決められ同点となり、ワールドカップ初出場を逃してしまう結果となりました。これが世に言う「ドーハの悲劇」です。
この試合で僕が忘れられないのはキング・カズこと三浦知良選手が最後まで必死にプレーしていた姿勢です。終了間際ですから、当然どの選手もみんな疲れていたはずです。そんな中イラク選手が最後の力を振り絞って攻撃していたのですが、右サイドをドリブルで上がっていくイラク選手に必死に食らいついて対応していたのはなんとカズ選手だったのです。カズ選手はフォワードの選手です。そのフォワードの選手が自陣の右サイドの守りについていたのです。
僕が忘れられない映像は、右サイドを駆け上がって行くイラクの選手に必死について行き、イラクの選手が中央にセンターリングを上げるときにスライディングをして防ごうとする姿です。残念ながらセンターリングをあげられてしまい、ゴール前にいたイラク選手がそのボールにヘディングで合わせて得点されてしまいました。僕はこのときのゴールキーパーの動きも頭に残っています。
本来ならゴールキーパーはヘディングされた瞬間に横っ飛びで防ごうとするはずです。しかし、そのときゴールキーパーは反応していなかったのです。ただボールの行方を目で追っているだけでした。たぶん疲れていたこともあるのでしょうが、最後のロスタイムとい時間帯で一瞬だけ集中力が切れていたように思います。この気の緩みはほかの選手も同様だったはずです。だから右サイドを駆け上がるイラク選手についていたのがカズ選手だったのです。最後まで集中力を切らしていなかったのはカズ選手でした。
ゴールを決められた瞬間にベンチにいた中山選手のなんとも言えない表情でグランドに倒れこむ映像をテレビで見た方も多いでしょう。あのときの中山選手が絶望する姿ほどあのときの日本中の気持ちを表すものはありません。このあと中山選手はjリーグで数々の記録を作るのですが、その原動力はこのときの体験にあるのではないかと僕は思っています。
さて、なぜ僕がカズ選手のプレーを書いたかと言いますと、コロンビア戦で大迫選手が同じようなプレーしていたからです。1点ビハインドのコロンビアは当然のごとく猛攻撃をしかけてきました。僕が見た映像でイラク選手がゴールの右側からシュートをした際に右足を上げながらスライディングをしてきたのは大迫選手でした。2点目をとったフォワード選手である大迫選手です。スローで見ますと、大迫選手の右足に当たったことによってイラク選手のシュートはコースが変わりゴールから外れています。もし大迫選手が右足を出していなかったならゴールしていた可能性は大です。
このように今の時代はフォワードと言えども守備もきちんとこなすことが基本です。しかし、口で言うのは簡単ですが実際に行動するとなると大変です。何しろあの広いフィールドを端から端まで全力で走り回らなければいけないのですから体力はもちろん精神力も半端ではありません。今はやりの「半端ねぇ」です。それを実行している選手たちは素晴らしいのですが、その模範を作ったのがカズ選手ではないかと僕は思っています。その意味で三浦知良選手は「キング」と呼ぶにふさわしい人格者でもあると思っています。
僕はサッカーの熱烈なファンではありませんのでマニアほどの知識はありません。ですが、カズ選手についてはいろいろな思い出があります。カズ選手の奥様は美しい芸能人の方ですが、ブラジルにいた頃のカズさんが奥様を見て積極的にアプローチをして結婚をしたそうです。
かつて「笑っていいとも」という番組がありましたが、その中のテレフォンショッキングは人気があったコーナーです。芸能人が次の日のゲストを電話で直に依頼するコーナーですが、ある日のゲストが次の出演者としてカズ選手を紹介していました。そこでその芸能人がカズさんに電話をしたのですが、電話に出たときカズさんは寝ていたようでした。そのときゲストの人が「お昼なのにまだ寝てるの?」と言いますと、カズさんは「スポーツ選手は体力があるから激しいだよ」と返したので会場内は爆笑になりました。ユーモアのセンスもあるカズ選手です。
このようにカズ選手は芸能人とも交流があったことがほかのサッカー選手との違いですが、当時は田原俊彦さんとの交流もいろいろな番組で取り上げられていました。ご存知の方も多いでしょうが、カズさんはコンビニへ行くのにもわざわざおしゃれなスーツに着替えて出かけるなどというエピソードは注目を集めました。一見派手な言動ですのでおちゃらけた感じがしますが、ぶれない精神力は当時から持っていたようです。
あるとき写真週刊誌で奥様の不倫が報じられたことがあります。奥様が路上で男性芸能人と抱き合い唇を重ねている写真が報じられたのですが、テレビのワイドショーでは格好の題材です。多くの芸能レポーターがカズさんの元へ押し寄せたのですが、感情的になるのでもなく淡々と冷静に対応して「なんとか勘弁してくださいよ」と言って、なんとその騒動を収めてしまいました。その後、離婚することもなく現在に至って幸せな家庭を築いているのですが、スポーツ選手は家を留守にすることが多い中で、トラブルに遭いながらも幸せな家庭を築いているのは奥さんやお子さんとの接し方もきちんとしているからと想像しています。
今、日本人のサッカー選手は海外で活躍している人が多いですが、その先鞭をつけたのもカズ選手です。それにしても同年代の選手たちが引退し指導する立場になっている中で選手にこだわっている生き方も「なにかを啓示したい」意図があるのでしょうか。
じゃ、また。
P.S 今日の夜もがんばれ!




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