<大人の責任>

pressココロ上




既に多くの人が非難の声を上げていますので「聞き飽きた」と感じる人もいるかもしれませんが、僕も書かずにはいられません。親による虐待事件です。前回、大きくマスコミに取り上げられた虐待事件からまだ半年くらいしか経っていません。

一般的に、大きな事件が起きますと、そのときは関心を持ちますが、少し時間が経ちますと「熱さ忘れる」状態になります。

一般の人がそのような精神状態になるのは、致し方ないことではあります。世の中にはいろいろな問題や事件が起き続けますので、一つの事件にいつまでもこだわっていては生きていけないからです。自分自身に直接関係のないことですと、誰でもそうなるのが普通です。

しかし、マスコミで注目を集めた事件が自分自身に関係することであったなら、少し時間が経ったくらいで忘れるのは問題です。特に仕事に関連する事件であるなら、その事件を自分の仕事に生かすのが社会人としての務めです。その意味で言いますと、半年前に起きた虐待事件を全く教訓としていない今回の関係者の対応は納得できるものではありません。真剣に仕事に取り組んでいるのでしょうか。

半年前の事件を覚えていますか? 父親から「しつけ」という名目で様々な虐待を受けていた目黒区の事件です。女の子が書いていた文章は涙を誘わずにはいられません。全文を書きます。

【残されたノートの言葉】
ママ
もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっと あしたはできるようにするから
もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします
ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして
きのうぜんぜんできなかったことこれまでまいにちやってきたことをなおす
これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします
もう あしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ

わずか5才の子供が「ひらがな」で必死にお願いする文章を書いています。大人なら最後の最後の選択をすることも可能です。しかし、5才の子供はそれさえ選べないのです。地獄以外のなにものでもありません。

このような悲しすぎる事件がたったの半年前に起きていたにもかかわらず、同じことが起きています。関係者の方々は前回の事件をどのように受け止めていたのでしょう。このようにして書いているうちに、また怒りがこみ上げてきました。

今回の事件でも「文章」が大きな反響を呼んでいます。学校が実施した「いじめに関するアンケート」で助けを求める文章を書いていたからです。

アンケートの内容
「お父さんに ぼうりょくを受けています。
夜中に起こされたり 起きているときにけられたり たたかれたりされます。
先生、どうにかできませんか。」

「先生、どうにかできませんか。」という文章を事件にかかわった大人たちはどのような気持ちで読んでいたのでしょう。
このアンケートを受けて担任教諭は詳細に話を聞いているのですが、そのときのメモには「口をふさいで 息がとまらない 床におしつける」「「頭なぐられる こぶし(10回)」「お母さんがいない時 せなかをける」と書いてあったそうです。

これだけの事実がありながら、関係者は助けられなかったのです。

こうした失態に追い打ちをかけるように、なんと「アンケート用紙を加害者である父親に渡していた」でというのですから驚かずにはいられません。そして、その理由はさらに憤りを増幅させるものでした。

「威圧的な態度に恐怖心を覚えたから」

アンケート用紙には「絶対に秘密を守るから、正直に書いてください」と書いてあったそうです。笑わせるではありせんか! 悪魔に魂を売り渡す行為です。このアンケート結果を読んだ父親がどのような対応をするのかは火を見るよりも明らかです。そんなことさえ想像しなかったのでしょうか。

担当者は、父親にアンケート用紙を渡せば恐怖心から逃れられますが、心愛ちゃん(被害者の女の子)はずっと地獄の状況になるのです。もし、担当者がアンケート用紙を渡したあとに同僚と楽しくお酒を飲みお話をして、自分の趣味を謳歌し、家族と団らんの時間を過ごしていたならそうした楽しい時間は心愛ちゃんを地獄に落とした見返りです。

この事件が報じられたとき、タレントのデヴィ夫人が怒りのツイートを発信し、その中で「児童相談所で働く人は、真に子供を助けたいと思っている人だけが就くべきだ」と書いているそうですが、全く持って同感です。

今回の事件にかかわった大人はそれなりの人数がいます。アンケートを実施した担任をはじめ教育委員会、児童相談所の関係者です。この中のたった一人でも真剣に心愛ちゃんの身を案じる大人がいたなら救えた事件です。「身を案じる」とは「ずっと一日中、頭の中から離れない」気持ちです。

心愛ちゃんは父親の元に戻されたなら、24時間中地獄の中で生活しなければいけないのです。「ずっと一日中、頭の中から離れなくて」当然です。

この事件に関連して、児童相談所の実態について書いている記事(https://www.buzzfeed.com/jp/akikokobayashi/hitogotojyanai5)を読みました。現場で働いている人は一般の公務員で、児童相談所は役所の職場の一つに過ぎないそうです。つまり、数年で異動することになります。そのような職場で真剣に虐待されている子供に向き合うことができるでしょうか。

このような虐待事件をなくすには、児童相談所のあり方を変える以外に方法はありません。お役所の職場の一つではなく、専門の部署にして専門の人材を雇用するのです。しかし、それを実現するには現在児童相談所で働いている人たちが業務に真剣に向か会うことが出発点です。

真剣に向き合えば向き合うほど、今の状況の限界がわかるはずです。それを上層部に訴えることが出発点です。もちろん、その行動は簡単なことではありません。間違いなく面倒なことですが、仕事に真剣に向き合っているなら自然に出てくる気持ちです。「次の異動まで適当に働いていればよい」という発想ではできない行動です。しかし、そのくらいの行動力を発揮することは仕事をしてお給料をもらっている人の最低限の義務です。

結局、最終的には仕事にどれだけ真剣に向き合っているかに尽きます。今回の事件の原因を組織上の問題に求めるにしても、それを改善できるのは現場で働いている個人です。究極的には、どれだけ仕事に真剣に取り組んでいるかが大切になります。

至極シンプルな答えにたどり着きましたが、考えようによっては、そのシンプルなことができていなかったことが最も大きな原因と言えなくもありません。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする