<メーカーの販売ルート>

pressココロ上




先週の記事にメーカーの販売ルートが変わってきていることが解説されていました。今週はそれについて書きたいと思います。

僕は社会人の第一歩がスーパーでしたので、これまでにコラムでPB商品について書いたことが幾度かあります。PB商品とは小売業が開発したプライベート商品のことですが、最初に発売されたのは40年くらい前でしょうか。ちょうどスーパーが社会に台頭してきた頃で、それまで流通業に君臨していたデパートがトップの座をスーパーに取って代わられようとしていた時期です。

今は「セブン&アイグループ」とか「イオングループ」と言っていますが、これらのグループの最初は単なる普通のスーパーマーケットでした。「スーパーマーケット」と簡単に言ってしまいますと、地方の小さな小売業のイメージがしますが、スーパーマーケットの誕生は、当時の社会に大きなインパクトを与えました。

それまでは、庶民が食品や洋服を購入するのは個人が営んでいる小さな商店しかなかったからです。主婦が晩御飯の準備をするのは、小さな個人商店が集まっていた商店街に行くのが普通でした。

こうした状況を変えたのが、関東ではイトーヨーカ堂、関西ではダイエー、ジャスコなどのスーパーマーケットの誕生でした。当時ですと、これらの小売業は新興企業ということになりますが、これらの企業に共通しているのは、創業者のほとんどが欧米に小売業の勉強または視察に言っていることです。

これらの創業者の本を読みますと、必ず出てくる指導者の名前がありました。渥美俊一氏という方ですが、元々は東大出身の読売新聞の経済部の記者です。ダイエーの中内功氏、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏、ジャスコの岡田卓也氏など、当時の若手経営者の錚々たるメンバーが全員影響を受けていました。

その後、1972年にとうとうダイエーが売上高で三越を抜いたのですが、このときが小売業界で大変革が起きたときです。小売業界のトップに上り詰めたスーパーが次に手をつけたのが、商品を自分たちで作ることでした。誰が考えてもわかりますが、メーカーから商品を仕入れるよりも自分たちで作ったほうが儲けは多くなります。それを実行したのがPB(プライベートブランド)商品です。

ですが、やはり小売業が製造業に進出するのは簡単ではありません。製造のリスクまで負うことになりますので、当時は限界がありました。PB商品が出始めた頃は「安かろう悪かろう」のイメージはぬぐい切れませんでした。その頃の商品はほとんど下請けに丸投げの状況だったからです。

ですから、発売した当初こそ、価格の安さが受けて注目されましたが、次第に売り場からなくなっていきました。こうした浮き沈みを幾度か繰り返して今のPB業品があります。僕の感覚では、PB商品を一つのカテゴリーとして確立させたのは「セブン&アイグループ」です。品質にこだわったことが功を奏したように思います。

スーパー業界が製造業に進出する一番の有利な点は売り場を確保していることです。なにしろ売り場が自前なのですから、一番売れる陳列棚を使うことができます。メーカーは一般的には「魅力のある商品」を作り、効果的に宣伝することが肝要と思われがちですが、営業の現場では「売り場の確保」がとても重要な要因です。

簡単に言ってしまいますと、消費者に目立つ場所で手に取りやすい棚に置いてもらうことが商品の命運を決めます。ですから、メーカーの担当者は「いかにして売り場を確保するか」に命をかけています。こうした状況は、スーパー業界がメーカーよりも上の立場になっていることを示しています。

スーパー業界がこうした有利な立場をとれるようになったのは、一にも二にも売上げが高いからです。大きな販売力による仕入れ力の強さをバイイングパワーと言いますが、スーパーマーケットが誕生したメリットはここにあります。それを指導したのが、日本のチェーン理論の先駆者である渥美俊一氏だったのです。

数年前のコラムに書きましたが、「セブン&アイグループ」がPB商品を本格的に展開するようになったとき、イトーヨーカドーの主要な陳列棚がPB商品で占められてことがありました。僕は、そのあからさまぶりに違和感と言いますか反発感を持ったのですが、これではメーカーの立つ瀬がありません。

先ほど書きましたように、商品の命運を決めるのは商品を陳列している場所ですが、その場所をPB商品に占められてはメーカーは存続にかかわってきます。PB商品は、開発はスーパーが行いますが、実際に作るのは工場です。もちろんスーパーは工場を持っていませんので、下請け企業に依頼することになりますが、ナショナルブランドを作っている会社が作るはずはありません。

メーカーからしますと、スーパーは卸先ですので取引会社ですが、PB商品の製造においてはライバル会社となります。わざわざライバル会社の商品を作るような自分で自分の首を絞めるような選択をするはずはありません。ですが、スーパーがあまりに大きな力を持ちましたので、そのバイイングパワーによってメーカーの立場はとても弱くなってしまいました。

経済誌などでは、ナショナルブランドを展開している会社が辛抱できずにスーパーのPB商品を作るようになったことを「とうとう軍門に下った」などと伝えていました。ナショナルブランドを展開しているメーカーがPB商品の下請けになることは苦渋の決断だったはずです。ライバル社の商品を作るのですから本来なら考えられないことです。ですが、工場の空いているラインを遊ばせるよりは稼働させたほうが得策と考えた結果です。

僕は、スーパーの売れる棚や平台をPB商品が占めている光景を見て反発心を抱いたわけですが、その反発心の元は「優越な立場を利用した傲慢な振る舞い」に思えたからです。ちょうど、楽天が「プラットフォームという優越な立場を利用して、販売店に送料無料を押し付けた」行動に似ています。

立場が強いものがその立場を利用して、弱い立場の相手を打ちのめす姿は見ていて気持ちいいものではありません。製品を作ることを本業としているメーカーの消費者との接点はスーパーなど小売業の売り場しかしかありません。メーカーの最大の弱点です。

こうした状況に違和感を持っていた僕ですが、先週興味深い記事を読みました。それは通信販売の伸張です。今の時代は、「小売業・冬の時代」と言われていますが、消費者は店頭で商品を触り、実際に買うのはamazonまたは楽天といったネット上の販売業者です。僕自身もそうですが、家電製品にしても量販店で製品を手に取ってみて実際に買うのはほとんどamazonです。なにしろ価格が勝負にならないほど安いのですから仕方ありません。

消費者のこうした購入状況は、メーカーの復権につながるはずです。これまでは消費者との接点は小売業しかなかったのですが、これからはメーカー自らが消費者に販売することができます。「判官びいき」性格の僕からしますと、理想的なメーカーと小売業の関係になってきていると思い、喜んでいます。

いつの時代も状況は変化しますが、二十数年前に「問屋がなくなる日」という本を読んだことがあります。もしかすると、将来のいつか「スーパーがなくなる日」がやってくるのかもしれません。

じゃ、また。







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