<アフターコロナ>

pressココロ上




先週見たニュースで僕が興味深く感じたのは「日本チェーンストア協会が発表したスーパーの売り上げ」でした。そのニュースによりますと、6月のスーパーの売り上げは「2カ月連続で前の年を上回った」そうです。

売上げが増えた要因は「テレワークや外出控えなどで自宅で食事をする人が多く、食料品が好調だった」からですが、どうも今一つ腑に落ちない気分でいます。「自宅で食事をする人が多い」のはわかりますが、食料品を販売しているスーパーがコロナ対策として、売上げが落ちるような対策をとっていたからです。

例えば、「店内への入場制限を設けたり」とか「購入数量を制限したり」など、本来のスーパーの販売手法とは真逆の対応をとっていました。しかも、中には品切れしている商品(チャンスロス)もあり、誰がどう考えても、これまでの常識からしますと売上げが下がっているはずです。ですが、実際は売上げが落ちるどころか上がっていました。

僕が、狐につままれた気持ちになるのもわかってもらえると思います。

売上げは「客数×客単価」で作られますが、「入場制限」や「購入制限」または「チャンスロス」は売上げの各要素を下げることにほかなりません。強いて「売上げを上げる要因」を探すとすると、「客単価の上昇」でしょうか。「購入制限」や「チャンスロス」を補うだけの「客単価の上昇」があった可能性はあります。

僕がスーパーに行ったときに見た光景は、買い物かごに山積みされた商品の数々です。しかも、ほとんどの人が同じような買い物かごの状況でした。人間の心理とは恐ろしいもので、周りの人がたくさん買っている姿を見ると、なんとなく不安になり「自分も買わなければ」という強迫観念に陥ることがあります。

いわゆるパニックですが、1970年代にトイレットペーパー買いだめ騒動があり、今回もマスクの買いだめが起きました。大衆という人々は、不安心理で「余計に購入する」ことがあるのが普通です。本来なら売上げが下がるはずの環境で、実際にはスーパーの売上げが上がったのですが、この「余計に購入」という要因が大きかったのかもしれません。

今ふうにいいますとリアル店舗となりますが、先にも書きましたがリアル店舗において売上げを作る要因は「客数×客単価」です。もちろん、リアルでなくネット上の通販においても同様ですが、リアル店舗の場合は店舗の広さ、または客席により客数は上限があります。

例えば、飲食店においては客席が10席しかない店舗では、平均滞在時間が30分の場合、満席であっても1時間の客数は20人にしかなりません。しかし、ネット上の通販では客数に上限はほぼありません。ですから、リアル店舗では客数の持つ意味はとても大きな要因となります。

飲食店においては立食形態というお店がありますが、この場合は「座って食べる形態」よりも滞在時間は短くなります。ですので、「座って食べる形態」よりも客数を増やすことができますが、僕はそのことを身をもって経験したことがあります。

ラーメン店を廃業したあと、僕は電鉄系の立ち食いそばチェーンでアルバイトをしました。近くの駅で募集が出ていましたので応募したのですが、たまたま基幹店に配属されました。「たまたま」と書きましたが、僕の想像では、最初から基幹店で働いてもらうつもりだったように思います。

それはともかく、その基幹店に行って僕は「立地環境」と「客数」の大切さを痛感させられました。僕が営んでいたラーメン店は建前上は客席数22席でした。「建前上」とはテーブル席を4席とカウントした場合です。しかし、4人席に4人が座ることは稀で、最も混雑するお昼時などでも2人か3人です。客席数はカウンターが8席、4人席用テーブルが3つと2人席用テーブルが1つでした。

このような席数で回転率5回転を目指しますと、110人になります。この広さの店舗で夫婦ふたりで営むにはこのくらいの客数が限界です。これ以上客数を増やすには夜の時間もあとひとり要員が必要です。

ちなみに、110人の客数でも客単価700円としますと日販が7万7千円となり、月間売上げは約200万円になります。飲食業の粗利は65%ですので、そこからパートさんなどの人件費や家賃、水道光熱費など経費を支払っても普通の会社員の倍以上の利益が出ることになります。もちろん、客数が減ったときは利益も減ることになりますが…。

僕は22席の店舗で1日110人のお客様をさばくのに精いっぱいでしたが、1ヶ月では2860人(26日営業)の来客数になります。それがなんと、立ち食いそばチェーン店は1日の客数がこれ以上いたのです。これは驚きでした。小さなお店の1ヶ月の客数をわずか1日で越えてしまうのです。もちろん営業時間も違いますし、従事している人数も違います。それでもこれだけの客数が来店することに驚かされました。

それを可能にしたのは、一にも二にも立地環境です。世界一のターミナル駅とも称される駅ですので乗り入れ路線が多く、乗降客も多大です。そうした環境に立地する店舗ですので可能な来店客数です。いかに立地環境が重要かを思い知らされました。

このように、店舗を構える業種では立地の選定はとても大切です。しかし、そうしたこれまでの発想を今回のコロナウィルスは覆したことになります。冒頭に書きましたように、コロナ対策としてスーパー各社はお客様の入場を制限しました。入場を制限するということは客数が減ることです。それでも売上げは落ちないどころか、伸びたのです。

昔から「発想の転換の重要性」は指摘されてきたことですが、簡単にはできないのが実際のところです。その理由は、過去の成功体験や固定観念から離れられないからです。先日、スティーブ・ジョブズ氏に関する記事を読みましたが、ジョブズ氏が最も優れていたのは、普通の人では想像もできない「発想の転換ができること」ではないか、と思いました。

iPhoneが登場するまで、だれが電話でネットを利用することを想像したでしょう。天才と称される所以です。スタンフォード大学でのジョブズ氏のスピーチは有名ですが、ジョブズ氏はスピーチの中で「点と線」について述べています。

「点」が「線」になるのは、ずっとあとからだそうです。天才が言うのですから間違いありません。「線」になるのがずっとあとだとすると、「点」のときにはなにをすればいいのでしょう。天才はこう述べています。

目の前のあることに必死に取り組むことです。

もちろん天才は「運が必要なこと」も知っていました。伝説のスピーチはこちらから。

アフターコロナはこれまでとは全く異なった社会が出現するかもしれません。と言うよりは、異なった社会にならなければいけないのかもしれません。そして、その際に大切なことは「自由、平等、公平」を指針にすることです。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする