<平和は一人一人の意識から>

pressココロ上




YouTubeは有料でない場合は定期的にCMが流れるシステムになっています。先日のCMは歴史に関する本の広告でした。具体的に紹介しますと、先の戦争で日本の敗戦が決まったあとに、ソ連が侵攻してきたことの違法性を指摘する内容の本でした。前々から、ソ連が日本の敗戦が決まったあとに日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、攻め入ってきたことは聞いたことがありましたし、また、ソ連のそうしたずるがしこさを非難する意見があることも知っていました。ですが、今一つ実感が伴っていなかったのが正直なところです。

60代半ばの僕でさえそうなのですから、僕よりも若くあまり政治に関心を持たない人ですと、そうした情報があったとしても無頓着なのではないでしょうか。これは若者を批判しているのではなく、そのような若者が多いのが平和な国の実態であると述べているまでです。

僕がそうした若者を批判しないのは、自分自身がまさにそうした青春時代を過ごしていた若者だったからです。二十歳前後は日々を過ごすというか、遊ぶのに精いっぱいで世の中のことにはあまり関心を持っていませんでした。

学生時代にただ一つ覚えているのは、国際関係の講義中に教授が「国際関係は、パワー・オブ・バランスで成り立っている」と話していたことです。当時の大講堂における一般的な学生の授業の受け方は、後ろのほうに席を陣取り講義が終わるまで机に伏している姿でした。僕もその例に漏れず、うしろの席で机に突っ伏せていたのですが、なぜかこのときの教授の「パワー・オブ・バランス」だけは頭に残っています。

もうかなりの間、映画館に行ったことがないので現在はどうなっているのかわかりませんが、僕がまだ映画館に通っていた頃、映画が始まる前には必ず「北方領土返還」のCMが映し出されていました。北方領土は、「本来は日本の領土であるにもかかわらずソ連に実効支配されているので取り返そう」というように記憶しています。当時、歴史のことも社会のことも知識がなかった僕ですので、なんとなく「こういうCMって、右翼の人がやってるんだろうなぁ」くらいの感想しか思い浮かびませんでした。

若い頃はそうした青春を過ごし、25才で結婚してからは子育てに明け暮れ、つまり生活することに必死で、国際社会のこととか歴史認識などについて考えることもなく、そのまま年を重ねていきました。そんな僕に、最近のYouTubeは「北方領土問題で、ロシアがどれほど卑怯でずる賢くて酷い国か」というCMを流してきます。

僕のこれまでの北方領土の知識は、「先の戦争で日本の敗戦が決まったあとに、ソ連が日ソ不可侵条約を一方的に破棄し侵攻してきた」という漠然としたものでした。ですから、例えば、北方領土の島民の苦難がニュースで報じられても今一つ共感する気持ちが生まれることもありませんでした。しかし、現在のロシアによるウクライナ侵攻がこれだけ世界から非難されている事象を見ますと、北方領土に対する意識も高まってきます。

日本がロシアに経済制裁を課していることに対して、ロシアも「北方領土問題を含む平和条約交渉を中断する」と反発していますが、誰が考えても想定内の反応です。先週、yafooニュースでも取り上げられていましたが、日本維新の会の鈴木宗男参議院議員がネット週刊誌のインタビューで、「プーチン大統領を擁護している」と、とれなくもない発言をし、炎上しているそうですが、今の時代の雰囲気からしまうと当然の反応です。

ここから先は僕の推測の域を出ませんが、鈴木議員が一見「プーチン大統領擁護」のような意見を発しているのは、自らの政治生命と関係しているように思います。簡単に言ってしまいますと、鈴木議員のロシアとの関係の重要性を担保したいがためです。もっとわかりやすく言いますと、「自分がロシアと話をつけられる唯一の人間である」という立場を失いたくないからです。一言で表しますと「保身」という言葉が当てはまります。

ネット記事では、「安倍元首相のロシア外交のやり方を検証すべき」という意見が散見されますが、その窓口を務めていたのが鈴木議員でした。鈴木議員の炎上は安倍氏が首相を務めていた当時のロシア外交の在り方にまで波及する可能性があります。今になって考えてみますと、当時はあまり気に留めていませんでしたが、安倍首相がプーチン氏と「北方領土4島の返還ではなく、2島でもいいから」と進めていた交渉は、本来ならもっと大きな関心を持たれてもよかった案件かもしれません。

僕は安倍元首相の森友事件があやふやで終結しそうなことをとても不快に思っているのですが、ロシアのウクライナ侵攻などがあり、社会全体が「森友どころではない」という雰囲気になっていくことに不安な気持ちになっていました。しかし、もしかすると安倍元首相の在任時のいろいろな問題が、この「北方領土返還の外交の不手際」を突破口にして事実解明につながっている可能性に期待しています。どちらにしましても、国会で堂々と嘘をつきながらなんの責任も取らずに議員を続けられているのは民主主義国家にとってあってはならないことです。

ネットを見ていますと、ロシアのウクライナ侵攻に関連してウクライナという国家について解説している書籍や映画の紹介を多く見かけます。僕が映画を紹介するコーナー「シネマクラブ」では、先週そのウクライナ版の学徒出陣といえる「バトルフィールドクルーティの戦い」という映画を紹介しました。アマゾンプライムのトップページで表示されていたのですが、おそらくアマゾンプライムも意識的にそこに載せたのだと思います。

映画評論家の町山智浩さんが、ラジオ番組で「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」というウクライナについての映画を紹介していました。僕も最近ほかの記事で知ったのですが、ソ連はウクライナに対して「ホロドモール」という大飢饉を押しつけていました。

「ホロドモール」とは、1932年から1933年にかけてウクライナで起きた人為的な大飢饉のことですが、「人為的」とはスターリンがウクライナで収穫した穀物を強制的に取り上げていたことを意味します。オスマン帝国のアルメニア人虐殺や、ナチス・ドイツが行ったユダヤ人に対するホロコーストなどと並んで、20世紀最大の悲劇のひとつとされ、400万から1450万人以上が亡くなったと言われているそうです。
(https://eleminist.com/article/1106より引用)

ウクライナの歴史をさかのぼりますと、さらに複雑な侵略された過去がありますが、そうした歴史を振り返っていきますと、ウクライナが容易に降伏しないのも理解できます。降伏したとしても地獄が待っているのを経験則にわかっているからです。

西側にいる僕からしますと、ロシアはどう見ても民主国家ではありませんが、ロシアの一般的な人々は、今回の戦争・侵攻をどのように考えているのでしょう。一応、日本のテレビが伝える情報では、「本当のことが一般の人たちに伝わっていない」と言われています。情報統制が行われているからですが、そうした状況になる前にどうして行動を起こさなかったのか。

西側の感覚では、野党の政治家が拘束され、刑務所に入れられているのは国家として異常です。そうした状況に異を唱えないこと自体が国民の義務を放棄しているように思えてなりません。そもそもプーチン氏が「大統領の3選が認められていないから」といって、弟分といえるメドベージェフ氏に大統領を譲り自らは首相につき、その4年後に大統領に復帰するなどということが許されていいはずがありません。さらに憲法を改正して現在は2036年まで現職でいられるそうです。権力の私物化以外のなにものでもありません。

野党の指導者は選挙自体が違法と訴えていますが、国民がもっと行動を起こさない限り今の状況は変わらないように思います。ソ連が解体されたとき、民主派として行動を起こしたのはエリツィン氏ですが、その原動力となったのは民衆でした。その民衆が行動を起こさないのですから、プーチン大統領の悪行は収まりそうもありません。

結局、大切なのは国民一人一人の行動に尽きるように思います。翻って、日本の投票率のなんという低さよ。僕は若い頃、政治にあまり関心がなかったと書きましたが、実は選挙で棄権したことは一度もないのです。それが唯一の自慢です。

夏の参院選の投票率が上がることを願っています。

じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする