<映画の役割>

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最近、と言っても2~3年前くらいからですが週に1回は映画を見ています。人混みが好きではない僕ですので、もちろん映画館ではありません。amazonビデオで観ているのですが、本当に科学の進歩と言いますか、技術の進歩はとてもうれしいものがあります。

インターネットが普及する前ですと、映画を見るには映画館に行くしか方法はありませんでした。しかも混んでいる映画ですと、並ぶ必要もありますし、席の位置によっては気持ちよく映画に集中することができないこともあります。

それに比べますと、自宅のネットで見る場合は誰に気兼ねする必要もなく、好きな時間に好きな恰好で映画を観ることができます。しかも途中で「つまらなそう」と思ったなら、すぐにほかの映画に変えることも簡単にできます。科学・技術の進歩を思わずにはいられません。

僕が映画を観るようになったのは大学生になってからです。高校時代と違い熱中するものがなく、時間を持て余していましたので自然に映画を観るようになりました。ちょうど駅から学校までの途中に名画座がありましたので、それも影響しています。

僕に記憶違いがなければ、今から40年くらい前、名画座は300円で2本立てだったように思います。暇な大学生にはとてもうれしい娯楽でした。それまで映画など観たことがありませんでしたので嬉々として名画座に通っていました。

世の中にこんなに面白いものがあるんだ!

心を揺さぶられた映画はたくさんありましたが、生まれて初めて衝撃を受けた映画と言いますと「アメリカングラフィティ」です。映画の冒頭が大音量のロック音楽ではじまるのですが、その出だしで心をわしづかみにされました。

この映画は「高校を卒業する4人の主人公が地元で過ごす最後の一晩」を描いた青春映画です。この映画の素晴らしいところは、「たった一晩の出来事」を映画にしたことです。その発想の凄さに感動しました。監督はのちに「スターウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」を発表するジョージ・ルーカス氏ですが、やはり才能のある人は最初から違います。

当時、普通に映画館で観るとなりますと、1,000円~1,200円くらいはしていたように思います。名画座の300円が貧乏学生にどれだけ助けになったのかおわかりいただけるはずです。ちなみに、公開したばかりの映画をどうしても観たいときは、割引券を購入していました。今でもあるのかわかりませんが、新宿紀伊国屋近くの小さなブロマイド店で割引券を販売していました。バイト仲間に教えてもらったのですが、封切り映画を観るときはいつもそこで購入してから映画館に向かっていました。普通に映画館で買うよりも数百円も安く買えるのですから、とても得をした気分でした。

しかし、封切り映画を観るのは年に1度か2度くらいで、ほとんどの映画は名画座で見ていました。毎週1回は観ていましたが、その頃のベスト3を紹介しますと、先の「アメリカングラフィティ」と「スティング」「明日に向かって撃て」という映画です。

あとの2つは主人公を演じていたのが同じで、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードという男優でした。「スティング」は最後の最後に観客を驚かせるどんでん返しが面白く、「明日に向かって撃て」は追い詰められた2人が大勢の警察が包囲しているところへ死を覚悟して飛び出す映像が今でも頭の中に残っています。

映画が好きでしたが、結婚して子供ができ、ラーメン店を開業してからは映画を観ることもできなくなっていました。しかし、どのタイミングで観たのか全く記憶にないのですが、いつしか僕の映画ベスト1は「レオン」というジャン・レノ主演の映画になっています。

その「レオン」を先々週amazonビデオで放映していました。実に、20年以上ぶりだったのですが、あのときの感動が蘇ってきました。本当に科学・技術の進歩に感謝しています。

「レオン」の名場面は、なんと言っても映画の最後の場面です。傷ついたレオンがあと少しで逃げ切れるというときに、悪人の刑事にうしろから撃たれてしまいました。レオンは悪人刑事に馬乗りになられ、とどめの一発を打たれようというそのときに、自分の身体に巻きつけていた手りゅう弾の引き金を「マチルダ(主人公の女の子)からの贈り物」と言って握らせる場面です。自分の命と引き換えにマチルダの敵討ちを完結させました。

おそらくこの最後の場面が一番印象に残っている人は多いでしょうが、実は僕はこの場面と同じくらい印象に残っている場面があります。それは、レオンがあらぬ疑いをかけられてホテルを追い出され、次のホテルを探すまでの映像です。

最初、映像は道路だけを映しています。そして、道路の向こうから歩いてくるレオンの頭が見え、次第に顔も見え、そして上半身が見え、さらに歩いて来るのですが、次の映像ではその傍らにレオンの植木鉢を手にしたマルチダが並んで歩いているのです。当初、一緒に暮らすことを拒絶していたレオンが、結局は一緒に暮らすことに決めたレオンの気持ちをとても上手にあらわしている映像でした。

amazonで「レオン」を見つけたとき、とてもうれしく20年以上前の感動が蘇り、観る気分になったのですが、全く色あせていませんでした。もちろんストーリーはわかっていますが、それでも感動したのですから、いい映画というのは時代という荒波にも耐えうるもののようです。

amazonで映画を観るようになってから、思うことがあります。それは映画が、なんのために作られるのか、ということです。僕は、amazonビデオの中から作品を選ぶときに題名やあらすじなどを読みますが、その際に感じたことは映画には世の中に起きていることを「後世に残す」、または「多くの人に知らしめる」という目的があるように思いました。

例えば「シンドラーのリスト」は歴史の中に埋もれていた事実を世の中に知ってもらうきっかけになりましたし、昨年アジアで初めてアカデミー賞を受賞した「パラサイト」は現在の韓国で問題になっている格差社会を映し出しています。

もしかしたなら、「後世に残す」内容や「多くの人に知らしめる」内容が、感動を与えることにつながるからかもしれません。その意味で言いますと、「後世に残す」や「多くの人に知らしめる」という目的は結果論と言えなくもありません。どちらにしても、社会にインパクトを与えていることに大きな意義があります。

こんなことを思ったのは先日韓国映画「タクシードライバー・光州事件」を観たからです。この映画を観て、韓国という国は民主国家になってまだ歴史が浅いことや、民主国家になるために多くの犠牲を払っていることを知りました。

光州事件が起きたのは1980年ですが、僕が社会人1年生として現を抜かしていたときです。そのときに韓国では民主化を求めて多くの人が戦っていたのです。そうした事実を知るきっかけになったという意味において、映画の役割の大きさを感じずにはいられません。

ということで、新たに「映画の部屋」を作ることにしました。時間のあるときにamazonで観た映画について感想を書こうと思っています。

じゃ、また。




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