<菅政権>

pressココロ上




テレビのニュース番組で菅政権に対する自民党内の各派閥動向を伝えているニュースを見ました。その中で麻生派の会合の様子を映していたのですが、あいさつに立った麻生さんが「スガ政権…」というところを「カン政権…」と言い間違えたとき、周りから笑い声が起こり、麻生氏もすぐに笑みを浮かべながら言いなおしていたのですが、僕は「わざとではないか」と勘繰ってしまいました。

僕は政治の世界の専門家でもありませんし、精通しているわけでもありません。あくまでいろいろなニュース媒体や週刊誌、ネットなどから得た情報・知識で政権内の動きを知ることになります。おそらくほとんどの一般の人は僕と同じでしょうが、その一般人から見た「菅政権」に対する評価と言いますと偉そうですが、思い・気持ちを書いてみたいと思います。

冒頭に麻生さんが「スガ政権」を「カン政権」と言い間違えた話を書きましたが、この言い間違いが今の「菅政権」のバランス力学を示しているように感じます。マスコミ情報によりますと、菅さんが最初に総裁に立候補することについて支持を得たのは幹事長の二階さんのようです。そのあとに最大派閥の細田派と麻生派と竹下派の領袖がそろって記者会見を行っていましたが、この一連の動きが「菅政権」のバランス力学を表しているように思います。

最大派閥を含めて3つの大きな派閥が支持を表明した段階で、本当は総裁選の決着はついていることになります。ですから、岸田さんや石破さんが立候補しても意味がないように、素人的には思っていました。しかし、いざ選挙戦がはじまり、3人の候補がいろいろなテレビ番組に出演して様々な主張や意見を訴える姿を見ていましたら、「まんざら選挙戦も悪くはないな」と思ったのが正直な感想です。

外野席から見ていますと、元々石破さんが勝てる確率は一ミリもないように思っていましたが、岸田さんに対しては同情する気持ちがありました。安倍首相が退陣を表明する前までは、岸田さんに首相の座を禅譲するような話がまことしやかに流れていました。そうであるだけに、安倍首相が退陣表明の記者会見で「自分から後任を指名することは控える」と話したことは、岸田さんからしますと納得しがたい気持ちだったのではないでしょうか。

安倍首相が退陣を表明したのは8月の28日ですが、その3日前の25日に都内で行われていた岸田さんの講演内容がニュースで伝えられていました。その内容が本来の岸田さんの政治姿勢とは少し異なる内容でしたので、印象に残っていました。

その内容とは「もし私が政権を担うことになったとしても、憲法改正にしっかり取り組んでいきたい」、また「『自衛隊の明記』など自民党が示している4項目の改正案の実現に取り組む考え」と強調したそうです。

岸田派は元々は池田勇人首相が立ち上げた宏池会が出発点です。軍事力に対しては慎重でいわゆる「ハト派」と言われる派閥です。幾度かの分裂などはありましたが、それでも自民党内においてタカ派の対極に位置する重要な立場を築いていたはずです。その派閥の長が「憲法改正」や「自衛隊の明記」などを講演で明言したのには違和感がありました。

この時点ではすでに安倍首相が28日に会見を開くことは報じられていましたが、どのマスコミも退陣については報じていませんでした。しかし、僕は岸田さんの講演内容を聞いて、安倍首相が「退陣を表明する」可能性を予想しました。

安倍首相が久しぶりに会見を開くことが決まっている状況で、岸田派の本来の主義主張とは離れた主義主張をわざわざ講演で話したのです。岸田さんが25日の段階で安倍首相の退陣の可能性を予測していた、と考えるのが常識でしょう。そうでなければ、わざわざ講演で「ハト派にふさわしくない内容」を語ったりはしないはずです。

真相はわかりませんが、ただ一つ言えることは岸田さんの総裁実現の可能性が一段と低くなったことです。

総裁選挙の終盤に、菅さんの勝利が確実になった時点で、「菅さんに入れる投票を岸田さんに振り分けた」という話が出てきました。これは「岸田さんが石破さんにまで負けるのはあまりに忍びない」という理由もありますが、それよりも大きな理由は「石破さん潰し」だそうです。石破さんはほかの派閥の皆さんには人気がないようです。

真相や、いかに…。

さて、肝心の菅政権の閣僚の面々の評価ですが、蓋を開けてみますと「実力者を揃えた」というのが僕の正直な感想です。覚えているでしょうか。7年半の安倍政権ではいろいろな閣僚が任期途中で辞めています。その中には「実力不足が理由」と思われる大臣も幾人がいました。その中で一番記憶に残っているのは2017年8月に沖縄北方担当相就任した江崎鉄磨氏です。

江崎氏は一年あまりで辞任したのですが、表向きの辞任理由は病気でしたが、本当の理由はマスコミからの追及・非難に耐えられなかったことです。実際、江崎大臣は失言があまりに多すぎました。氏の発言を聞いていますと、悪い人ではないのはわかるのですが、内容を理解せずに会見に臨んでいたように見受けられることが多々ありました。

また、人が良すぎると言いますか、天然と言いますか、本当のことを言いすぎてしまっていました。なぜ、そうしてしまうかと言いますと、国政を担う大臣という自分の立場をしっかりと理解していなかったからです。

おそらく地元では仕事のできる頼りになる議員さんなのでしょうが、国政を担う国会議員として働くことに向いていないように感じました。本来ですと、そうした人を任命した安倍首相に責任があるはずです。よく野党が言うところの「任命責任」です。ではなぜ安倍首相が江崎氏を選任したかと言いますと、幹事長を務めていた二階派のベテランだったからです。

このように書きますと、驚く若い人もいるかもしれませんが、実際かつては、政治を政治家が動かしていない部分もありました。では、だれが動かしていたかと言いますと、官僚です。昔は大臣に就任した政治家が最初にやる仕事は、官僚から仕事内容をブリーフィングしてもらうことでした。なにしろ「なにも知らない人」が大臣になるのですから、官僚が教える以外に術はありません。これを裏返しますと、官僚の操り人形に徹しきれる人ならば、だれが大臣になっても問題ないということです。

記者会見などを見ていますと、原稿を読んでいる閣僚がいますが、その原稿は官僚が書いたものです。中には、内容をあまり理解しないまま「単に読んでいるだけ」の閣僚もいます。ここまで官僚に依存している閣僚になりますと、記者会見どころか、簡単なぶら下がり会見でも、官僚が書いた文章を一言一句間違わずに読む以外に対応できない状況に陥ってしまいます。

江崎大臣は完全に官僚に依存していた大臣でしたが、原稿を読み間違えたり、質問に答えられなかったりが続いていたことで精神的に追いこまれた末の辞任でした。ある報道によりますと、派閥の親分である二階さんからは「せっかく大臣になったんだから、もう少し頑張れ!」と言われたそうですが、限界を超えていたそうです。

このように当選回数だけが理由で大臣に任命される政治家もいる中で、今回の菅政権の閣僚の顔ぶれを見ますと、仕事ができそうな人ばかりです。官僚に依存していそうな大臣は一人だけで、あとは「菅総理が評価を間違えている」と感じる人が一人いるだけです。

閣僚の中で僕が一番驚いたのは厚生労働大臣の田村憲久氏です。田村氏の経歴を見ますと、若いころから地道に労働行政を勉強しているようで、第2次安倍内閣時の2012~14年にも厚生労働大臣を務めているのですが、実は石破派に所属しています。

僕は田村氏を厚生労働大臣に抜擢した人事を見て、菅総裁の本気度を好感しました。正直に言いますと、最初に総裁に立候補することを聞いたときは、あまりいい印象は持たなかったのですが、途中から少しずつ納得していったというのが正直なところです。

ただ一つ気になるのは、記者会見で嫌いな記者の質問を受け付けないことです。これは政治の基本にかかわることですので、改めてほしいと思っています。

素人の感想でした。

じゃ、また。




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