<一企業多看板>

pressココロ上




 今週はこの言葉から始めるのが妥当でしょう。
 メリー、クリスマス!
 皆さんにサンタさんは現れたでしょうか?
 経済ニュース番組を見ていましたら飲食業の現況について報告していました。最近の特徴として「一企業がいろんな種類の看板で出店する」のが流行っているそうです。以前ですと“すかいらーく” のように全国に同じ看板を掲げチェーン化することにより消費者にブランドを浸透させるやり方が 主流でした。しかし最近では同じ一企業でありながら店名を変えて出店するのが消費者に受け入れられる要素となっているようです。
 番組で紹介していた企業では社員の中から店長になりたい人が立候補し、自分がやりたい店のコンセプトなどをプレゼンテーションしていました。それに対して先輩や幹部連がその人物評も考慮 に入れて出店の可否を決めていました。つまりこのシステムは企業がその人物に対して出資するという形になっています。
 一般の企業ですと店長は企業で定められたコンセプトの範囲で店舗を運営するのが役目ですので店長=管理者という図式です。しかしこの企業ではコンセプトから内装まで全て店長の意志で決めることができるのですから店長=経営者となります。
 脱サラで飲食業を始めることは自分で店のことを全て決めることですから正しくこの企業の店長と同じです。個人で脱サラするには資金についても自分で調達しなければならないのですが、この企業の場合その資金調達の心配がないのですから評価できるシステムだと思います。そのうえ店長が考えているコンセプトが成功するか、または人物的に店長にふさわしい能力があるかどうかも 飲食業のプロによる第三者評価があるわけですから当人にとっても価値のあるシステムと言えます。
 私もそうでしたが、個人が脱サラ開業を考えているときは気持ちが高ぶってしまい、冷静な判断ができないものです。気持ちが先走っていることが多いのです。もし若い方で飲食魚の脱サラを考えているならこのような企業の存在を頭の隅に入れておくのもよいでしょう。
 働く側にとってはメリットがある企業システムだと思いますが、企業側にとってはどうでしょう。
 “すかいらーく”を筆頭にした大手と言われるファミレスが成功した要因はチェーン化にあると言われています。全国に出店し規模を拡大することによりブランドを定着させるとともに、原材料費などコストを削減することができるからです。チェーン化しない企業ではこの点において劣っています。チェーン化「している企業」と「していない企業」との差は内装費まで含めたあらゆるコストの多寡に表れます。そしてその差は個人店が大手チェーンに敵わない点でもあります。
 らーめん一杯180円、290円といったチェーン店が快進撃を続けていますが個人店でこの価格で販売することは不可能です。このように考えるとき一企業が多種類の看板を掲げ出店することはコスト面で考えるならチェーン店に比べ当然不利です。しかしコストが高いことが成功しないことにつながるとは必ずしも言えません。チェーン店と価格で勝負しなければよいのです。これは個人店にもあてはまります。チェーン店にコスト面で敵うわけはありませんから価格で競合することを避ければ生き残る道も必ずあるはずです。
 このような視点で考えるなら、一企業多看板の店や個人店といったチェーン化されていない店は価格でなくコンセプトで勝負することになります。例えば価格は多少高めでも豪華な雰囲気を望むカップルを対象にした店作りなどです。そうした店は消費者にとっては料理の価格だけで考えるなら割高ですが、価格に対する消費者の感覚は2000円、3000円といった数字ではありません。満足する価格かどうかです。経営書ふうに言うなら値ごろ感です。
 もし同じ一企業が多種類の看板を掲げ出店するシステムが成功し定着するならそれはとりもなおさず個人で脱サラを考えている人にとっては心強い見本となります。飲食業で脱サラを考えている方はこのような企業を注視していましょう。
 そうは言いましても「新しいコンセプト」が消費者に受け入れられるかどうかはプロでも判断が難しいものです。あの“すかいらーく”でさえ開業から30年以上過ぎた今までに約40種類以上のコンセプト(形態)を作っていますが、現在も残っているのはガストやジョナサンなどわずかでしかありません。それ以外はスクラップしています。こうした事実も念頭に入れておきましょう。
 このコラムも今回が今年最後となってしまいました。読んでいただいた皆様一年間ありがとうございました。当HPは「脱サラをする前に」というタイトルが示しますように飲食業を中心とした脱サラについて私の考えを述べているサイトです。その一コーナーですので今年最後のコラムでHPの趣旨に沿ったコラムが書けて個人的には満足しております。
 マスコミなどでは「景気が上向いている」などと報道されていますが、それも大企業を中心とした一部のことではないかと思っています。今後も勝ち組、負け組といった差別化の流れは変わらないでしょう。そんな時代の中で来年こそはこうありたいものです。
 メリー、クルシマズ!
 じゃ、また。




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