<プロ中の素人>

pressココロ上




 株価の低迷が続いていますが、個人投資家の中には損失もしくは含み損で気分が落ち込んでいる人も多いと思います。一般に株取引で勝ち組になれる人は全体の10%以下でしかないと言われていますので致し方ないのではないでしょうか。私のように小資金ではなく、多くの資金を運用している方や信用取引を行っていて追証が発生している方の中には夜も眠れない日々を送っている方もいるでしょう。
 新聞を読んでいましたら「投資は投機のなれの果て」という株式の格言が紹介されていました。うまいことをいうなぁ、と感心したのですが、今の私はまさしくその状態です。この格言をもっと早く知っていたかった…。
 「なれの果て」の私ですが、それなりに理由があります。私には毎日、ある証券会社から「本日の展望」を予想したメールが届きます。私のような素人としては株式のプロといわれるアナリストの意見はやはり参考にしたいものです。
 私の持っている銘柄は5月は下降し続けたのですが、ただ指をくわえて見ていたわけではありません。何度も売却を考えました。しかしそのたびにアナリスト氏のアドバイスが頭をよぎるのです。
「いくらなんでもここまで下がると反発するのではないかと思われます」
 これの繰り返しで5月が終わってしまいました。
 株は心理戦とも言われますが、人間の心は本当に弱いものです。株の本を読みますと、ほとんどの本に「損切り」の重要性が書かれています。しかしそれがなかなかできない…。ついついプロの言葉にすがってしまう私でした。
 プロが「常に正しい選択をするとは限らない」ことは村上ファンドの代表が証明してくれました。会見の発言にありました「プロ中のプロを自認している自分が…」というフレーズは印象に残ります。ファンドのプロを自認していた村上氏ですが、ニュース番組に出てきたファンド歴23年のマネージャー氏はファンド歴7年にすぎない村上氏をまだヒヨっ子と断じていました。ファンドの世界では7年の経験ではまだプロとも呼べないということなのでしょうが、有名人が失脚すると糾弾されるのは世の常です。
 村上氏のフレーズを聞いて真っ先に私が頭に浮かんだのは、前にも書きましたケネディ大統領の言葉です。
「今までに何度専門家の言葉に騙されただろう」
 専門家をプロに置き換えることができますが、昔からプロは間違えることが仕事だったのかもしれません。
 会見で村上氏は「聞いちゃった」と軽い言葉を使っていましたが、インサイダー取引は重大な犯罪です。本来なら「プロ中のプロ」でなく普通の「プロ」であっても気がつかなければならない犯罪でした。これでは「プロ中の素人」と言われても仕方ありません。
 あるテレビ番組で大物タレントのS氏が話していました。
 番組に登場した一般の若い男性が「お仕事は?」と聞かれ「役者」です、と答えると他の出演者の方が「全然知られてないよね」と突っ込みました。すると男性は「まだ卵なんでバイトもしてます」と答えました。それを聞いたS氏は男性に言いました。
「まだ卵だったら“役者”と答えたらあかん。“プロ”になってから“役者”と言わな。そんでな、“プロ”ちゅうのはそれだけでメシが食えることを言うんや」
 “プロ”がメシを食えることを意味するなら「プロ中のプロ」はメシが食える以上に贅沢な生活ができるほど儲けていることを意味します。村上氏は「信じられないくらい儲けた」のですからやはり「プロ中のプロ」と言えるのかもしれません。
 本屋さんでビジネスコーナーに行きますと「数千万、数億円儲けた」とい題名の本がたくさん並んでいます。こうした本を見ていますと世の中には「プロ中のプロ」ばかりがいるように思えてしまいます。でも、「素人中の素人」もたくさんいることを忘れてほしくないですよね。
 じゃ、また。




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