<オオヤケ(公)>

pressココロ上




 先日の新聞に次のような投稿がありました。
 「駐車禁止取締り強化により売上げが激減したため廃業を決意した」というラーメン店を営んでいる奥様からの投稿です。一般的にロードサイドに面している小さなラーメン店は違法駐車をするドライバーをお客様として想定しています。そのドライバーが来店しなくなったのですから売上げが落ちて当然です。私には投稿者の気持ちが痛いほどわかります。
 個人で脱サラを考えている方の中には「ラーメン店はいいかも」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし今回の駐車禁止の強化は明らかにラーメン店にとって不利な法律です。個人の場合、資金の問題から立地はどうしてもロードサイドになってしまいます。これからは脱サラにラーメン店を考えるのはリスクのほうが高いように思います。
 商売をしているとき、その環境の変化は自分ではどうすることもできません。変化に従うしかありません。投稿者は廃業を選択したのですが、私もその決断が一番よい判断だと思います。ラーメン店は立地で売上げがほとんど決まります。
 私のラーメン店時代の話です。
 ある日、役所の方が来て「店の前の歩道に木を植えることを了解してほしい」と言いました。街に緑を増やし住民が癒される環境を作るためです。話を聞きますと、木の高さはマンションの2階くらいのようでした。このことは店にとってはとても大きなマイナス要因です。看板が木で隠れてしまうからです。木の間隔が狭いなら看板は全く見えなくなってしまいます。普通、ドライバーはある程度遠くから看板を見て店に入ろうと考えるものです。しかしその看板が見えないならドライバーには店の前に来てからでなくては店の存在がわかりません。そのような状況ではドライバーは止まることなく通り過ぎてしまうのがほとんどです。
 ちっぽけなラーメン店が反対したくらいで役所の決定が覆るはずもありません。仕方なく了承はしましたが、せめて「木の間隔は広くとってほしい」とお願いしました。
 例えば、トラックが自分のお店に飛び込んできた場合は運転手に損害賠償を請求することができます。
*豆知識*
 火災保険にもいろいろ種類がありますが住宅総合保険または店舗総合保険に入っている場合はこのようなトラックが飛び込んできた場合の損害も保険金が支払われます。一般の方は火災保険は火災の場合だけ保障すると思っている方が多いのですが、名前は「火災」保険でも火災以外でも保険が支払われるケースがありますので自分の保険を確認しておくことは大切です。
 
 トラックが飛びこんできた場合は損害賠償を請求できますが、役所の決定により商売環境が変わり売上げが減少した場合などは、損害賠償を請求することは一般的ではありません。仮に裁判をおこしたとしても時間と費用がかかり最終的には負けるでしょう。やはり公を優先させるのが普通です。今回の投稿者のように法律が変わることにより売上げが減少した場合も受け入れるしかありません。もし個人個人の利益のためにオオヤケの損失を無視するならそこは住みづらい世界になってしまいます。総論賛成各論反対の世の中ですが、損失を皆が少しずつ受け入れる気持ちを持つことが必要ではないでしょうか。
 そうは言いましてもオオヤケをあまりに強く主張することも慎まねばなりません。オオヤケを優先させるがために個人がないがしろにされてもそのような世界も住みづらい世の中だからです。さきほど「少しずつ」と書きましたが、その「少しずつ」ほど難しいものはありません。個人によりその感覚の度合いはさまざまだからです。それを調整するには話し合うことしかありません。オオヤケを優先するのに最も大切なことはとにかく話し合うことです。どんなに面倒でも諦めずに話し合うことです。力で決着をつけることがなんの解決にもならないことは過去の歴史が教えてくれています。
 なにごともバランスが大切です。個人とオオヤケ、どちらが優先されるべきかはケースバイケースでしょう。どちらを優先するにしても度を越えることがあってはいけません。特にオオヤケを優先させるときは注意が必要です。度を越えたオオヤケは「オオヤケド」ですから。
 じゃ、また。




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