<リスクと報酬>

pressココロ上




 ゴールデンウィークも終わりいつもどおりの日常が戻ってきました。楽しいお休みも次は夏まで待たなければなりません。皆さんのゴールデンウィークはいかがでしたでしょうか。
 僕は、と言えばゴールデンウィークといえども普段の生活と変わらず仕事仕事の毎日でした。実は、春休みは売上げが伸びましたので「ゴールデンウィークも」と期待していたのですが、あに計らんや売上げは落ち込んでしまいました。皆さん、やはりせっかくのゴールデンウィークですので「海や山や行楽地」へ出かけたのでしょう。僕の店の周りではいつもの休日より人出が少なかったように思います。
 ガッカリした気分で迎えた連休後の定休日。天気もよく妻と一緒にちょっと遠くまでお買い物。さわやかな空気が車内に入り込み気分は最高です。そんなときに頭に浮かんできたメロディは30年前によく聴いた佐々木幸男さんの「君は風」♪(注1)
僕は早速カセットテープ(注2)を挿入しました。
(注1)「ほーぼー」というアルバムに収められています。
(注2)僕の車はまだカセットしか聴けないのです。
♪君の髪がッ 風の~~
♪中へ流れてい~~ッた~…
♪流れ髪の君は~ とても素敵です~
 いいですねぇ。1970年代後半ヤマハポプコンから出てきた佐々木さんです。当時ラジオから聴こえてきた佐々木さんの歌声を初めて聴いたとき、僕は一瞬で魅了されたのでした。あの少し「しゃがれた」「けだるそうな」声がなんとも言えません。
 次にスピーカーから流れてきたのは「ほーぼー」♪
 スティールギターらしき音がリズミカルにピャラリピャラリーラ~ン~と始まり
♪空とー雲とー ♪契りーを結び~
♪しがらみにー ♪うしろ髪を引かせ~
♪ほころびーだらけのポケットには~
 運転しながら僕の気分は最高潮。いやぁ、ホントに歌ってイイですねぇ。
 目的地はちょっと大きめの商業施設です。数ヶ月前に妻が見つけ「一度来てみたい」と言っていた場所でした。
 目的地に着きますと駐車場も混んでおらず店内も人混みはなく僕にとってはうれしい雰囲気でした。僕は人混みがあまり好きではないのです。
 僕は店内を一回りすると飽きてしまいましたので「外で待ってる」と妻に告げ、店を出ると出入口横のベンチに腰掛けました。
 実は、僕はこうなることを予想し「読みかけの本」を持ってきたのでした。今週の本コーナーで紹介しています「「バカになれる男」が勝つ!」青色発光ダイオードで有名な中村修二氏の本です。それではここで少し感想を…。
 企業はいろいろな部署が力を合わせて成り立っています。そのどれが欠けても成り立ちません。小売業であれば「仕入れ部門」と「販売部門」の両方が力を合わせなければ売上げは望めません。そのほかにも「宣伝部門」や「総務部門」の力も必要です。
 これはメーカーにおいても同様のはずです。よく言われるように「よい商品を作っても」売れるとは限りません。例えその商品が「すばらしく画期的な発明であって」もです。
 中村氏の裁判以降、企業に属していた研究者が自分の発明に対して「見合う報酬」を企業に求める裁判が続いています。報酬があまりに低すぎる、と…。
 野球のイチロー選手やサッカーの中村選手などスポーツ選手は自分の能力に見合ったナン億という報酬を得ています。それに比べ日本では世界的な発明をした研究者に対して「見合う報酬が支払われていない」のは事実です。違いはなんだろう…。僕は考えました。
 今をときめく有名スポーツ選手でも「一流になる前の時代」がありました。その二流三流時代に選手は企業やチームになんの貢献もしていません。ですからこの時代の選手に対して企業やチームは投資をしていることになります。投資ですからもしかしたらリターンがない可能性もあります。つまりリスクを負っています。
 選手の側から言いますと、いつまでも二流三流でいることはできません。やはり3~4年で結果が出ないなら見限られてしまいます。プロスポーツの世界を選んだ選手はみなそのリスクを負っています。
 私が、企業に属している研究者の方々が「見合った報酬を求める」ことへ違和感を持つのはこの点にあります。企業に属している研究者の方々は研究結果が出せなくともクビになるリスクはありません。生活費の不安を持たなくてよいのです。配置転換はあるかもしれませんが、財産を失うことや生活ができなくなることはありません。そのうえ研究する際の設備や材料などは企業持ちです。つまりリスクを負っていないのです。もし研究者の方々が「発明に見合った報酬」を得たいなら企業を飛び出し独立して全てを自分のリスクにおいて行うのが本来の姿ではないでしょうか。
 とは言え、中村氏の本を読みますと中村氏が在籍していた企業の研究環境や研究に対する対応にも問題が多かったように感じました。中村氏が裁判を起こした最も大きな理由は「企業側からされた仕打ち」にあるようです。中村氏の言葉を借りるなら企業に対する「コンチクショー」と言う気持ちからです。日本の労働環境、システムはまだまだ研究者に限らず働く側にとって満足できる状態ではないのは確かです。日本はまだ過渡期なのでしょう。
 報酬という対価を決めるのはとても難しいものです。誰でも高い報酬を得たいと思っています。しかし高い報酬にはなにかしらの根拠が必要です。そこで私なりの答えを出すなら、「報酬はリスクに比例する」となります。高いリスクを負って成功したなら莫大な報酬を得る資格があり、低いリスクを負うだけならそれなりの報酬しか得る資格がない、ということです。しかし必ず成功するとは限りません。失敗する可能性もあるのがリスクです。
 起業や脱サラに失敗した方の本をたくさん読んでいますが、失敗したときの惨めさ悲しさは体験者にしかわからないでしょう。しかし挑戦する快感もあります。やはり、起業に限らずスポーツでもなんでも、なにかに挑戦している姿は美しいものがあります。そうは言ってもやっぱりリスクって恐いですよねぇ。
 そんなことを考えながら本を読み終え店の出入口を見ますと、僕のリスクが出てきました。しかもなにかよい買い物をしたのでしょう。リスクが笑顔になっています。あっ、リスクが手を振りました。
 皆さんには、リスクが手を振り笑顔で近づいてくるときの恐怖感がわかるでしょうか…。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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