<さて、保険業界>

pressココロ上




 昔はテレビっ子だった私ですが、年をとるとともテレビをあまり見なくなってきました。最近は見るテレビ番組も決まっていまして、そうしますと自ずとテレビコマーシャル(CM)も限られてきます。
 そんな私が今、気に入っているのが「金麦」という缶ビールのCMです。私はアルコール類は全く飲みませんが、このCMがとても好きです。好きな理由は一言でいうと「懐かしい」なのです。
 このCMを作った人の意図がなんとなくわかるような気がします。新婚の若奥様が旦那様を待っている、大好きな旦那様の帰りをただひたすら楽しみにして待っている、そんな雰囲気が画面中から伝わってきます。例えば、昔の日活の映画を思い出させます。あの若奥様のアップでの表情がいいではないですか。純情で、おてんばで、そして逞しくて、そんな若奥様の人柄があの顔の表情からわかります。
 同じ番組のスポンサーに金融機関のCMがあります。実は、あのCMは私の嫌いなCMベスト5に入っているのです。理由は、なんとなく胡散臭さを感じてしまうからです。私は全体的に金融機関のCMに同じような感じを持つのですが、昔はそうでもありませんでした。「昔」とは私が保険業界に身を置く前の時代です。私は保険業界時代に金融について知識を得ました。そしてこの業界の問題点を感じずにはいられませんでした。
 保険代理店時代、私が保険料6,000円をいただく一人暮らしのお年寄りに対して費やす1時間半に、お金持ちを得意先にしている他の代理店は同じ1時間半で保険料を10万円を領収していました。その差94,000円です。代理店もそうですが、保険会社にしても客単価の高い契約者を大切にする傾向があります。
 どこの業界でも、お金をたくさん持っていて支払い金が多いお客さまを重要視したくなるのはあることです。しかし、金融業界はその傾向が顕著すぎるように思います。よく週刊誌などに書かれていますが、お金をたくさん支払うお客さまを「上得意」と呼ぶのに対して少ないお金しか支払わないお客さまを「ゴミ」と呼ぶ、などということはまんざら嘘でもないような気がします。
 そのような雰囲気の金融業界・保険業界ですから、いかにして普通のお客さまの単価を引き上げるかに血眼になっています。そうした傾向が無意味で不必要なオプションの「お勧め」につながっていました。
 私は保険会社が新しいオプションの勉強会を開くたびに、そのオプションには企業側の視点しかなくお客さまの視点が全くないことに疑問を感じていました。もし、「自分がお客さまの立場だったらそのオプションをつけようと思うか」、いつもそう自分に問いながら保険会社の説明を聞いていました。
 マスコミなどでは「保険金不払い」の報道が下火になっていますが、まだ解決しているわけではありません。生保にしろ損保にしろ「保険金不払い」を真面目に詳細に調べていったなら「止めどがない状態になっている」のが実情ではないか、と思っています。
 新聞によりますと、郵便局でも投資信託の販売が好調のようですが、不安を感じざるをえません。私の想像では、郵便局のお客さまは中高年以上の方が多く、そして何の疑問も持たず郵便局員の方を信頼しています。そうした方々は郵便局員の方の勧めるものを「あまり考えずに了承する」傾向があります。そこには「面倒くさい」という気持ちもあるでしょう。
 先月、私は自動車保険、傷害保険の更新時期でした。保険業界を離れ、一契約者として久しぶりの更新手続きでした。代理店の方から「更新の案内」通知が届いたのですが、内容をあまり見ませんでした。「面倒くさかった」のです。結局、代理店の方から電話があり「昨年と同条件」でお願いしたわけですが、電話を切ったとき思いました。
「ああ、お客さんってこういう感覚で保険とつき合ってるんだな…」。
 そうなのです。本当に「面倒」と思ってしまうのでした。
 たぶん、投資信託を買っているお年寄りの方々も同じような気持ちなのではないでしょうか。このような方々が「投資信託にお金を投じること」が、お金を「預けている」のではなく、投資信託という商品を「買っている」という意識を持っているのか非常に疑問です。
 8月に株式市場は株価の下落に見舞われましたが、それは投資信託にも影響を与えました。中には損失を被ったお客さまもいるはずです。投資信託を販売する方々は「リスクもある」ことを丁寧に説明してほしいと思っています。
 私自身の保険更新の手続きの際、私の現役時代より手続きが「より面倒」になっていました。金融庁の指導により契約者に「丁寧に説明する」「コンプライアンス遵守」を義務付けられたからだそうです。しかし、私の感想としては、そこにはやはり契約者の視点が欠けているように感じました。単に保険会社が「言い訳ができるように」しただけのように思えました。つまり問題が起きたときに責任を契約者に負わせるための手続きのような気がしたのです。これでは真の意味での「消費者保護」とは言えません。企業は利益を出すのが最大の目標ですが、社会的責任も忘れないでいただきたいものです。
 ところで…。
 僕の妻も新婚当初は、ビールのCMの奥さんのように僕を大切に思い、ただひたすら僕が仕事から帰ってくるのを待っていてくれるような純朴な女性でした。しかし、年月は人を変えます。ついこの間も僕のことを呼ぶのにこう言いました。
「おーい、うすらハゲ」
 僕の妻って、キャッチコピーがうまいんですよねぇ。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!





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