<ウマと信頼>

pressココロ上




 先日、仕事を終え帰宅しますと留守電ランプが点滅していました。保険代理店時代はお客さまや保険会社からの問い合わせなどでランプが点滅していることも間々ありましたが、最近ではほとんどありません。なんとなく懐かしさを覚えながらメッセージを再生しました。するとなんと、代理店時代に所属していた保険会社の男性社員の声でした。
 代理店を辞めて約1年が過ぎていますので久しぶりに聞く声にうれしさもあり早速翌日電話をしました。しかし、用件はうれしくないものでした。それは「代理店手数料の返還」を求める内容だったからです。
 会社に電話をしましたところ、最初に出た女性社員は会社の中で私が最も信頼していた女性社員Wさんでした。代理店時代、私の担当になった女性社員は幾人かいますが、中には真剣に仕事に向き合っていない女性社員もおり苦労した思い出があります。そのようなときWさんにはずいぶん助けられたのですが、私が電話をしますとすぐに私のことを思い出してくれ数分間世間話に花が咲きました。私としても久しぶりに若い女性とお話ができたので楽しい時間でした。
 花が咲き終わった頃、男性社員に取り次いでもらい「保険料返還の詳細」を聞きました。
 通常、保険会社の代理店手数料の支払い方法は次のような形式になっています。代理店がお客さまと保険契約を結び保険料を受け取ってきますとすぐに保険会社に全額を送金します。そして1ヶ月ごとに締め翌月中旬に代理店報酬として手数料が支払われます。今回の件は保険会社が私に手数料を支払ったあとにその手数料に対応する保険が解約されたことが理由のようでした。
 もう少し詳しく説明しますと、お客様が一度契約したあとに解約し、そして違う保険に変更したのでした。つまり変更前の保険を解約手続きをせずに変更後の保険の手続きをしてしまったのでした。私に二重に手数料を支払ったままですので「手数料を返してほしい」という内容でした。
 もちろん私は了承しましたが、それにしても約1年間も社員は誰も気づかなかったのでしょうか? 私はそれが不思議でなりませんでした。
 そのような気持ちでいましたら昔のことが思い出されました。代理店報酬の誤りは度々起こっていたことです。そのたびに私は担当女性社員に訂正をしてもらっていました。しかし、中には中々訂正をしてくれない社員の方もいます。
 いくら事務のコンピューター化が進んだと言ってもそれを動かすのは人間です。その人間が間違ってしまうとコンピューターと言えども誤りを修正するのは不可能です。
 ある月の代理店報酬が誤っていましたので女性社員に電話をしますと「了解しました」との返答でした。しかし翌月の明細を見ますとまだ訂正されていませんでした。再度訂正をお願いしましたが、その翌月も誤ったままでした。どうもその社員の方は訂正のやり方を間違っているようでした。困り果てた私は先ほどお話しましたWさんに相談しました。
 Wさんは最初「担当でない私が訂正するのは難しい」と言っていたのですが、「なんとかやってみます」と言って私の相談を聞き入れてくれました。数日後、Wさんから連絡があり無事に訂正できたのでした。
 このとき私はWさんという信頼できる親しい人間がいましたので無事に問題を処理することができました。仕事をするうえではこのような人は必要です。元々、Wさんとは「ウマが合う」感じを持っていました。誰しも「全ての人と仲良くなれる」わけではありません。そこには性格というか雰囲気というか目には見えない「ウマ」が存在します。その「ウマ」が合うときは自然と親しくなれるものです。「ウマ」が合って初めて「信頼」という次のステップに進むことができます。
 最近の私は「新しい問屋さん」を探すことが日課となっています。ですので初対面の人と会う機会が増えています。名刺をいただきしばらくお話をするのですが、そのときの身振り表情などで「ウマ」が合うかどうか考えます。正確には「考える」というより「感じます」が適した表現です。そして会話の中身で「その人となり」を推し量ります。
 先日、来訪した問屋さんは「ウマが合う」方でした。やはり「ウマ」が合いますと話もスムーズに進み信頼も生まれます。
 私が「ウマが合わない」と感じるのは上辺だけで「さもわかったように」話す人です。このような人は抽象的なことは言いますが、それ以上突っ込んだ話は言いません。「具体的なこと」がほとんどわかっていないことが多いからです。
 例えばFCに加盟している店主の方々です。
 もしFC本部が潰れたなら本来は喜ぶべきことです。それは無駄なロイヤリティを支払う必要がなくなることであり、またいろいろな制約から解放されることだからです。しかし実態は「ただ右往左往」するだけです。
 普段、多くの加盟店主の方は本部への不満や不平を言っています。また、「自分なりの経営方法を持っている」ように話します。しかし、いざ本部がなくなり自分の好きなようにできるようになると具体的には動けない方が多いのです。
 現在、私はそのような渦中にいるわけですが、他の加盟店の方と話しますと本部が潰れたあと「どのように問屋さんと交渉していいのか」わかっていないのです。それ以前に「どのように問屋さんを探していいのか」さえわかっていませんでした。それまでは「売上げがどうの」「粗利益がどうの」と経営に関する数字を並べて話していた方々ですが、具体的にはどのように動いてよいかわかっていないのでした。私は具体的に動けない人に対して「ウマが合わず」「信頼できない」人と感じてしまいます。
 一般的に、数字だけを並べてわかったように話す人は多いのですが、大切なのは具体的に動けるかどうかです。具体的なことがわからずそして動けない人が抽象論を語り、いくら数字を並べてもなんの意味もありません。経営に関する数字についてあまりに詳しく話す人は警戒したほうが賢明です。「信頼できる人かどうか」は「具体的に動けるかどうか」で決まってきます。
 ところで…。
 人生は不思議です。本来は「ウマが合わなければ」結婚生活など続けられるはずもありません。しかし現実は違うようです。「ウマが合わなく」とも25年間も連れ添っている人もいます。これは一重に僕の「我慢」と「辛抱」によるものです。
 「えっ? なんでそんな人と結婚したかって?」
 ええっと、それは…、だって僕の妻は結婚前は「ウマ」じゃなくて「かわいい子羊だった」からなんですよ。
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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