<ホンモノ>

pressココロ上




 店舗の契約が春に満期になるのですが、契約更新を断られ現在新たな引越先を探しております。飲食店は「立地が命」ですのでいろいろな人に声をかけ情報収集をしているのですが思うように情報が得られていません。
 今はインターネットの時代ですのでもちろん不動産サイトでも検索をしています。不動産サイトもたくさんありますが、どのサイトが本当に役に立つのか、つまりホンモノなのか、まずはそれを調べることからはじめなければいけませんでした。
 いくつかのサイトで実際に検索をし、そして問い合わせたところ「物件の情報」を提供することよりも「物件を探している人」を集めることを目的にしているようなサイトもあるように感じました。
 ホンモノのサイトは物件に不動産業者の名前や住所などが記載されていますのでその不動産業者に問い合わせをし間取りなどの詳しい情報を得ることができます。
 それに対してニセモノのサイトは不動産業者の名前などは記載されておらず大まかな住所と家賃・保証金などが記載されているだけです。そして詳しい情報を得るために「問い合わせ」をする必要があります。
 先日、そのようなサイトで興味を覚えた物件がありましたので実際に問い合わせをしてみました。すると次のように言われました。
「その物件はもう決まってしまいました」
 そして「新しい情報が入ったらお知らせしますので」ということで私の個人情報を求めてきます。そして営業担当がつきます。このような展開は一概にはそれほど悪い展開ではないように思えます。物件を探している人にとっては「新しい情報が入ったら教えてもらえること」ですからとても助かるはずです。しかし、その後の展開は私にとってはちょっと好ましくない進展になります。それは主導権が営業担当の方、つまり相手方になってしまうからです。
 主導権が相手方になりますとどのような弊害があるか?
 それは一言で言うなら「借主が説得される」ことです。セールストークにより借主が本来思っていた希望条件が少しずつ削られることです。よくある手法が、営業担当の方が勧めたい物件Aがあるときそれより劣るB・Cといった物件を紹介してAで借主が納得するように仕向けるケースです。中には強引な話し方で物件決定を迫る営業担当の方もいるでしょう。
 店舗の賃貸に限らず一般の賃貸契約においてもトラブルは発生しています。私の個人的感想では、基本的には賃貸契約は貸主有利な契約形態になっています。トラブルはそうした賃貸契約状態が原因のほとんどです。例えば敷金が戻ってこなかったり最悪なケースでは「部屋の現状復帰費用」まで求められることもあります。最近でこそ少しずつ借主の立場も強まっているとは思いますが、まだまだ貸主有利な契約形態であることには変わりません。
 そのような賃貸契約状態においては不動産業者にも「ホンモノ」「ニセモノ」があります。
 あるサイトで希望に近い物件を見つけ早速業者から詳しい情報を得、現場を見てきました。物件を見ますと、古びたシャッターが下りており雨風にあたったと見られる郵便物などがポストに汚く溜まっていました。しかし、賃料や周りの立地環境などからすると私にとっては60点はつけられる物件でした。その日の夜、早速業者に「好印象」であることを伝え私の中で「候補の一つ」に加えておきました。
 数日後、またいろいろなサイトで物件検索をしていましたが、最後に先日見に行った物件を確かめてみました。すると驚くべきことが起こっていました。なんと!下見をしてからまだ2~3日しか経っていないのですが、賃料が1.5倍に跳ね上がっていたのです。私は「なにかの間違いではないか」と思い翌日不動産会社に連絡をとることにしました。
 翌日、不動産会社に問い合わせてみますと、やはり「賃料の値上げ」は間違いではありませんでした。私が「まだ数日しか経っていない」ことを尋ねると返ってきた答えは次のようなものでした。
「賃料は家主様が決めるべきもので、需要と供給の関係で決まるので仕方がない」
 …当然、私はその物件を候補からはずしました。
 不動産業者は貸主と借主の中立の立場に立つのが本来のあるべき姿のはずです。そうでなければどちらかが圧倒的な不利を押し付けられてしまいます。それでは健全な賃貸契約はできないでしょう。貸主の立場に立って仕事をする不動産業者は「ニセモノ」、借主の立場になって仕事をする業者は「イイモノ」、そして中立な立場に立って仕事をする業者が「ホンモノ」です。「ホンモノ」に出会うのは容易ではありません。
 このような私の近況により、最近は「店舗・物件」といったキーワードで検索をすることが多いのですが、その際にあることに気がつきました。いろいろなサイトを見ていますと「どこかで読んだ文章」が少なからずあることです。これは広告代理店が関係していると思いますが、クライアントのサイトが検索結果で上位になるように同じようなサイトをたくさん作っていることが原因です。こうしたことは検索利用者が情報の「ホンモノ」に出会うことを妨げています。いろいろなサイトから文章だけを寄せ集めただけのサイトでは真に役に立つ情報は得られません。
 実は、私の体験記をまとめたようなサイトも見かけました。なかなかうまくまとめてあり「脱サラを考えている人」にはそれなりに役に立つ内容になっていましたので私の目的が少しはかなえられてはいると思います。ですが、やはりニセサイト作成者には実体験がありませんので薄っぺらな印象は免れません。
 …ホンモノの自負でした。
 ずっと前、約10年くらい前のことですが、音楽テレビ番組内での会話です。
 そのときの話題は「本当に『いい歌』とはどんな歌か?」というテーマでした。当時は小室哲也氏が全盛の頃でCDの売上げも過去の歴史を塗り替えるほどの勢いがありました。
 出演者の一人が「『売上げ」が『よい歌』の判断基準なる」と言ったのに対し他の一人が次のように反論しました。
「歴史に耐えられるかどうかだよ」
 つまり「いつまでも歌い継がれる歌」が「いい歌」である、という意味です。確かに、「なん年経とうが忘れられない歌が本当にいい歌」という考えには説得力があります。CDの売上げがどんなに凄かろうが消費され消えてしまう歌はホンモノとはいえません。10年後でも20年後でも歌われ続けられる歌こそ「ホンモノ」です。
 そのことは経営者にも言えることです。若手経営者として時代の寵児となり一世を風靡しても消えていった経営者はたくさんいます。私は本のコーナーで幾人かの若手経営者の本を紹介していますが、その方たちの中には現在問題が顕在化し世間を騒がせている経営者もいます。歴史に耐えうる経営者のみが「ホンモノ」です。
 どんな社会においても一時的に持て囃される人はいますが、歴史に耐えられる人はわずかしかいません。「ホンモノ」になるのは本当に難しい…。
 ところで…。
 先日、店内から道行く人々を見ていましたら派手な出で立ちの人が遠くから歩いてくるのが見えました。「オレンジ色のコート」を羽織り、「水色の手提げ紙袋」を右手に持ち、「A4ほどの大きさの真っ白い封筒」を左手に持った女性がゆっくりとした足取りで店の前を通り過ぎて行きました。
 さて、皆さんはこの女性のお仕事がおわかりでしょうか?
 ジャーン! 答えは…。
 オレンジ色のコートの背中には「au」、水色の紙袋には「DoCoMo」、真っ白い封筒には「Soft bank」と書いてありました。そうです。この女性は携帯電話販売会社の方だったのですね。着ているもの持っているものから判断すると、どこかの通信会社専属の販売会社ではなく携帯電話会社各社を取り扱っている販売会社だと思います。一度その方に聞いてみたいものです。
「携帯電話の『ホンモノ』はどれだ?」って
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




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