<数字>

pressココロ上




 今の僕の悩みの種は食料自給率の数字です。辞書で調べますと、食料自給率とは「1国内で消費される食料のうち、どの程度が国内産でまかなわれているかを表す指標」とのことですが、新聞で報道されている数字を信じてよいのかどうか…。新聞などを読みますと、39%という数字が登場することが多いのですが果たして真に受けてもいいのかどうか…。
 食料自給率とひと口に言いましても正確には「カロリーベース」とか「生産額ベース」とかいろいろな示し方があるようで39%という数字は「カロリーベース」での指標のようです。そのほかにもあるようですが、その中でしばしばマスコミに登場するのが穀物自給率です。読んで字のごとく小麦やとうもろこしなど穀物の自給率ですが、その数字は28%と報道されています。僕の店は小麦を使う製品がほとんどですので穀物自給率には関心を持たざるを得ません。
 みなさんご存知のように小麦の価格は昨年来高騰しています。7月に入り当店の仕入れ値も上昇しており利益を圧迫しています。穀物の価格が上がるのは輸入に頼っていることが原因とされ「自給率の低さ」の改善が喫緊の課題とされています。
 そんなおり、日経ビジネスではカロリーベースによる自給率39%という数字に疑問を呈していました。この自給率には畜産物も含まれているのですが、統計をとる際に餌の産地を計算するうえで要因に入れているからです。
 例えば日本で産まれ育てられた豚でも餌が外国産の場合、その豚は国内産とはみなされないそうです。豚肉だけに限った自給率でいいますとわずか5%という数字になってしまいます。つまり自給率を下げていることになります。食料自給率39%とはこうした要因を含んだ数字です。
 こうした記事を読みますと、僕が悩むのも理解していただけるのではないでしょうか。
 これだけでも悩んでいますのにさらに悩みがあります。それは、食料自給率を「上げる」か「下げるか」の問題です。
 普通に考えますと「食料自給率は高い方がよい」と思いますが週刊ダイヤモンド誌上で野口悠紀夫氏は一貫して反対の意見を展開しています。最近の世界の食糧事情などをみましても、また食糧安保の面から考えてもやはり「自給率は高いほうがよい」と思いますがそれでもやはり野口氏は反対の意見を主張しています。
 僕が困るのは野口氏の主張を読んでいますと納得できることです。しかし野口氏とは反対意見を取る経済学者の主張を読んでいても納得できてしまうのです。僕はどちらを信じ支持すればよいのでしょう。
 こうした専門家の主張にはいろいろな統計や計算の数字が出てきますが、これまで紹介してきましたように、数字にもいろいろな種類があります。その数字を前提としたうえでの意見・主張ですので一般人の僕は困っています。どの数字を選ぶかによって結果が違ってくるからです。数字の持つ意味は重要です。
 その数字を改ざんして汚職を報じられたのが大分県の教員採用にまつわる事件です。教育委員会の幹部が賄賂を受け取り試験得点の数字を水増ししていたのですからあまりにも単純です。数字は簡単にいじることができることを示しています。その後の調べでは採用合否だけでなく教員人事においても汚職が行われていたようですから大分県の教育界が震撼するのは間違いないでしょう。
 本来は子供たちの模範となるべき教師がその反対の行為を行っていたのですからあるまじきことです。しかし僕が想像するに、たぶん最初は軽い気持ちから贈賄をしたのではないでしょうか。いわゆる「付け届け」。
 日本社会ではお礼の気持ちを込めて贈り物を届けるのことは一般化しています。その延長線上にある行為だと思います。そうでなければ10年以上前から常態化しているはずがありません。しかしそうした慣習も限度を越えたなら犯罪となります。もし付け届けの許容範囲にあらかじめ数字が示されていたならこのような犯罪も起きなかったかもしれません。
 そう言えば数ヶ月前に大学の医局でも同じような事件がありました。教授が学生に学位を与える見返りとして現金を受領していました。こうしてみますとこの2つの事件には共通点があります。それは事件に関わった人たちがどちらも先生と呼ばれる職業であることです。教育界は危機に瀕しているように感じます。
 僕は店に来るお客様に勝手にニックネームをつけることを趣味としています。今までにも「仮面夫婦」や「じゃけん母さん」や「優しいジャイアン」などいろいろなニックネームをつけて楽しんでいました。新店舗でも当然つけていますが、その中に「先生」というニックネームをつけた方がいます。
 ちょっと話がそれますが、過去につけたニックネームの由来をお話しましょう。
・仮面夫婦
 30代半ばと思しきご夫婦です。奥さんは赤ちゃんをベビーカーに乗せて歩いていることが多いのですが、いつも必ず雑誌から抜け出したような服装をしていました。素ッピンで出歩いていることは一度もなく念入りにお化粧をしていました。ご主人とは休日に一緒に歩いているのですが、そのときももちろん奥さんはきれいに着飾っています。そしてご主人もスラックスにシャツというきちんとした服装をしていました。
 このご夫婦が歩いている雰囲気が、僕には「かしこまり過ぎている」ように感じていました。僕たち夫婦のようなドロドロしたものが全く感じられなかったのです。夫婦であるならばお互いに醜い部分も見せ合うのが普通です。そうした雰囲気がこのご夫婦からは感じられませんでした。なので「仮面夫婦」。
 お断りしておきますが、あくまでこれは僕の想像の世界です。真実かどうかは定かではありません。
・じゃけんかあさん
 いつも感じよく接してくれたお母さんです。普段は穏やかに標準語で話すのですが、お子さんを叱るときは「~じゃけん!」を連発していました。そのギャップが面白かったです。なので「じゃけんかあさん」
・優しいジャイアン
 ドラえもんに登場する悪がきはジャイアンですが、このお客様は容姿がジャイアンに似ていました。しかし話し方といい振る舞いといいドラえもんのジャイアンとは正反対の人柄でとても優しい人でした。なので「優しいジャイアン」
 以上、終わり。
 さて、話を戻します。
 僕が「先生」とニックネームをつけた方は僕と同年令くらいのスポーツ刈りの男性ですが、「先生」とつけた理由は高校時代のバレー部顧問のササキ先生に似ていたからです。僕はこの先生が好きでしたので当然このお客様にも好感を持っています。そうでなければ「先生」とはつけません。
 僕は毎日、閉店間際に店頭に立ち声出しをしているのですが、「先生」は最初の頃は僕の前を通り過ぎるとき歩きながら少し頭を垂れ目を伏せる程度でした。そんな日が幾日か続いたあと、ある日商品を買ってくれました。それからは軽く挨拶をするようになりました。その挨拶も少しの笑顔はしますが馴れ馴れしいものではなく親近感を抱かせる笑顔です。僕はこういうタイプの人が好きです。
 実は高校時代のササキ先生とは正確にはわずか数ヶ月しか顧問として接していません。理由はササキ先生が赴任してきたのが僕たちが3年生になったときだったからです。それまでの顧問の先生はいかにも体育会系といった若い先生でロボットのような体格をしていました。こういう先生が顧問でしたからほかの部に比べて練習も厳しく、また戦績もよかったのでバレー部は学校内でも一目置かれていました。そのような部を扱うのは「とても難しい」と思いますがササキ先生は部員をうまくまとめていました。
 当時ササキ先生は40代半ばだったと思います。バレー部の顧問に決まるとすぐに3年生全員を集め顧問として挨拶をしました。学校内で一目置かれているバレー部の顧問になるのですからそれなりに気持ちは引き締めていたと思います。少しずつ接していくうちにササキ先生の厳しくて優しい面に部員は信頼を寄せました。やはり先生は生徒から信頼されることが1番大切です。
 そうです。「1」番大切です。この「1」が重要です。数字は簡単にいじることができます。数字は正確であって初めて意味のあるものになります。
 ところで…。
 僕は社会人になってから小中高大のどの時代の同窓会にも出席したことがありません。その理由は…。
 携帯電話sofobankのCMでは父であるホワイト犬が同窓会に出席しています。でもあの同窓会に登場する出席者はホワイト犬以外は、職業が医者と弁護士なんですよねぇ…。
 
 じゃ、また。

紙.gif4コマ漫画
ジャーック!




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする