<無料の限界>

pressココロ上




 いよいよオリンピックが始まりました。スポーツは日々の努力の積み重ねが大切ですが、その努力が必ず報われるとは限りません。水泳の北島選手が語っていました。
「オリンピックは特別な場所だ」
 4年前に金メダルを獲得している北島選手にしてこう言わしめるオリンピック大会。実力を出すことがどれほど難しいかがわかろうというものです。「いかにして自分の本当の実力を出すか」が勝負の分かれ目のようです。それでも高いレベルでの戦いは人々を感動させます。これから約2週間の熱い戦いに期待しましょう。
 スポーツの祭典が始まろうとも商売をやっている身としては売上げが気になります。これだけ暑い日が続きますとやはり売上げに影響があり、しかもオリンピックが始まりましたので更なる影響があるのは必至です。前回のサッカーワールドカップ大会のときは小売業はどこも売上げを減らしたそうです。ワールドカップより規模が大きなオリンピック大会ですので多くのお店が戦々恐々としているのではないでしょうか。
 先週、メルマガを発行しているサイトからメールが届きました。僕は「あなたはこうやってラーメン店に失敗する」という本を販売していますが、それを見た編集者の方がメルマガサイトでの販売を提案してきたのでした。
 こちらのサイトでは9月より新たに「本の出版」業務を立ち上げるようでその案内を兼ねた提案メールでした。内容を見ますと、なんら問題はなさそう、というよりもこちらのメルマガサイトはメルマガ業界最大手ですので僕としてはうれしいお話でした。ということで来月くらいに新しい販売チャンネルが増える予定ですのでよろしくお願いいたします。…と宣伝でした。
 僕は自サイトで本を販売していますが、簡単に売れるものではありません。しかし、無料公開しています「体験記」は多くの方が読んでくださっています。やはり無料と有料とでは読者の対応は全く違います。それでも無料とはいえ、毎日必ずどなたかが読んでくださっているということはうれしい限りです。
 「毎日必ず読者がいる」ということを僕は解析ツールで調べているのですが、その解析ツールに2~3週間前から変化がありました。
 僕のサイトは検索エンジン経由でやってくる人が多いのですが、今まではそのほとんどはYafooからの訪問者でした。その理由はYafooの検索結果で上位に入っているからですが、検索エンジン最大手のGoogleからはひとりもやってきていませんでした。皆さんご存知の通りYafooとGooglでは検索の方法が違いますのでこのような現象がおきても不思議ではありません。
 僕は、いわゆるSEO対策といったものをほとんどやっていません。ですのでGoogle検索で上位に表示されないのは当然です。ですが、今から3~4年前はSEO対策を施しました。対策というほど大げさなものではありませんが、ちょうどSEOの重要性が言われ始めた頃でSEO対策の本を読んでそれを実行しただけです。たったそれだけでしたが、それでも当時はその対策が効果を発揮していました。
 例えば「脱サラ」とか「ラーメン」などのキーワードをGoogleで検索しますと僕のサイトは上位10位くらいまでには必ず入っていたのです。しかしそれから数ヶ月もすると全く上位に入らなくなっていました。上位どころか100位以内にも入らなくなりました。僕の想像では、僕のような素人ではなくSEO専門業者がいろいろな対策をするようになったからだと思います。今でもSEO対策を企業に販売しているIT広告会社はありますが、企業がこうした対策を広告会社に依頼するようになったからだと思っています。
 いつでしたかIT関連の本を読んでいましたら、IT広告業界での「2004年ショック」について書いてありました。それは、広告会社とSEO対策の契約をしそれまで検索結果上位に入っていた企業が、ある日突然100位にも入らなくなった現象でした。広告会社には契約している企業から苦情の問い合わせが殺到したそうです。企業としては高いお金を支払ってSEO対策を依頼しているのですから100位以内にも表示されないのでは苦情も言いたくなります。
 この現象はGoogleが検索技術を変更したことが原因のようですが、Googleにしてみれば「より役に立つ」情報をネット利用者に提供したい、という思いからです。それに対してIT広告会社は検索結果の上位に入るように画策することが仕事ですので両者は常にイタチゴッコを繰り返しています。この状態は今後もずっと続くのでしょう。
 話を戻しますと、僕のサイトに突然Googleからの訪問者がくるようになったのですが、理由はもちろんわかりませんが僕にとってはうれしい変化です。多くの人に読んでもらえる機会が増えるということはサイト運営者としては喜ばしいことです。
 そのような状況なので今回のGoogleの検索結果には感謝しているのですが、Googleについては考えさせられることがあります。それはサービスの無料提供についてです。先週のテーマは「収益モデル」と題して空気入れなどの無料サービスについて書きましたが、実は頭の中ではGoogle の提供している無料サービスが念頭にありました。
 現在、Googleはワードやエクセルなどとほぼ同等の機能を持ったソフトを無料で提供しています。今後は世界中の本を無料で提供することまで考えているようです。果たして、Googleはどこまで無料サービスを提供できるのでしょうか?
 しかし、過去を振り返ってみますと他の企業で有料で提供しているモノやサービスを無料で提供することはGoogleに限ったことではありません。これまでにもいろいろな企業が行ってきました。
 例えば、僕が前に属していた保険業界では自動車保険契約者に自動車のトラブルに対応するロードサービスを無料で提供していました。こうしたサービスは具体的に言うならばJAFなど車のトラブルに対応する会社の仕事です。また、クレジットカードに加入するとカード会社は加入者に無料で傷害保険をつけるサービスを行っていますが、このサービスは生損保保険会社の仕事です。
 このようにみていきますと、無料でサービスを提供できる企業には共通点があります。無料サービスにも当然コストが発生していますが、そのコストを吸収する術を持っていることです。先週の例で言いますと、空気入れのコストは店の売上げで吸収します。保険会社はお客様からいただく保険料でロードサービスのコストを吸収します。クレジット会社は金利で傷害保険サービスのコストを吸収します。
 そうはいいましてもコストを負担するのは容易ではありません。どんな大企業であっても無駄なコストを抱えていられる余裕はありません。あの世界のトヨタでさえ「乾いた雑巾を絞る」と言われるほどコストに関しては厳しく臨んでいます。
 そうしますとやはり無料サービスもできるだけコストのかからない内容となります。空気入れの例で言いますと、空気入れの装置は設置していますがその使い方や入れる空気の量などについて説明はおろか説明書もありません。それに対して自転車屋さんに設置してある空気入れの場合は有料ではありますが、使い方がわからないときは自転車屋さんの店の人が教えてくれますし場合によっては空気を入れる量についてもアドバイスをしてくれます。この無料サービスと有料サービスの違いは保険会社やクレジット会社でも同様です。それぞれ実際の対応は専門業者に丸投げしているのが現状です。
 無料の限界はここです。わかりやすく言うならば、丁寧な細かいフォローができない点です。仮にそこまでフォローをしていたなら企業として成り立たないでしょう。
 ところで…。
 先週今週と、無料サービスについて僕の見解を披露しました。しかし、この見解は僕の希望的見解です。このように考えなければ当店のようなちっぽけな店は大きな資本力のある店に対して生き残っていけないからです。考えてもみてください。
ウチのような店がコロッケを買ってくれたお客様にTシャツを無料サービスなんかできるわけないじゃん!
 じゃ、また。




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