<回り回って…>

pressココロ上




 新聞で興味を引く記事がありました。
 米国では、なにかの理由で借主が住宅ローンが払えなくなったとき、借主は担保となっている物件を金融機関に差し出すだけで債務を免除されるのだそうです。これは僕にとって驚きであるとともに、納得できることでした。
 これに対して日本では、借主が返済をできなくなったとき物件を差し出しても物件の市場価格が債務金額を下回っているときは債務者がローンとの差額を負担する必要があります。だからこそバブル期に住宅ローンを組んだ人たちは、その後バブルが弾けたとき残債を払えず自己破産をする人がいました。しかし、米国ではそのようなケースはないことになります。物件が下がることによる損失は金融機関が負うことになるからです。つまり貸すことによるリスクは金融機関が負っていることになります。
 このようなことを知り、よくよく考えてみますと米国のほうが合理的なような気がします。日本の金融機関はローンを組むときに審査をしますが、それは支払能力があるかどうかをみるわけです。その審査をするのはできるだけリスクを減らす意味があるはずです。ということはリスクを負うのは金融機関であると認めていることでもあります。
 日本のように担保物件の価値が下がったときその差額分を借主が負うのでは金融機関はリスクを全く負っていないことになります。そうであるなら本来は審査もする必要がないはずですが、いったい金融機関はなんのために審査までするのか不思議です。
 マスコミなどに金融機関の「貸手責任」という言葉がたまにでますが、これは借主を破産に追い込むことに対する貸手のモラルを指摘しているに過ぎません。なぜならリスクは全く負っていないからです。本当に「貸手責任」というなら、リスクも負うのが本当のあり方です。
 それにしても、この記事が真実なのかどうか疑問でしたので、ネットで調べてみました。その結果、どうも真実のようでした。これなら米国民は気楽な気持ちで家の購入を実行に移せるというものです。米国が羨ましい…。
 現在、政治の世界では消費者庁の設置が実現しそうですが、もし、消費者庁が本当にできたならローンに関するこうした消費者に不利なシステムも改善してほしいものです。僕は40才を過ぎてから金融業界に関心を持つようになりましたが、現在の銀行や保険などの金融業界のシステムは、金融業界にとってとても有利なシムテムになっていると感じています。
 現在、サブプライム関連で株価の下落が激しいですが、こうした状況が投資信託の運用に悪影響を与えていることは間違いありません。政府による「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、投資信託の販売に力を入れていた金融機関は多いはずです。現在の状況でそれら金融機関は投資信託の購入者にきちんと対応はできているのか、疑問です。もし、販売時に正しいリスク説明がなされていなかったなら損失を被るのは消費者です。そして個人と大企業である金融機関が対立したなら個人などひとたまりもないほど力関係に大きな差があります。早く消費者庁が設置され個人でも大企業と対等に戦える制度ができることを願っています。
 サブプライムローンはいろいろなところに影響を与えていますが、その関連で東京のあるホテルが閉鎖される模様がテレビで放映されていました。間接的にはリーマンブラザーズが破綻したことが原因のようでしたが、それはともかく資金繰りが行き詰まり閉鎖されるようでした。
 幾つかの番組で取り上げていましたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。経営者が突然、ホテルの閉鎖を告げ従業員解雇の説明会を開いたのですから、従業員が憤るのも理解できます。しかし、自営業者の僕としては従業員の方たちとは少し違う気持ちもあります。
 自営業者は、どんなに真面目に一生懸命働こうが、利益が出なければ廃業するしかありません。このことは民間企業でも同じはずです。番組で取り上げていたホテルも同じはずです。そうであるなら、いくら従業員が社長に詰め寄ろうが運営するために必要なお金が調達できないなら閉鎖も仕方ない、と僕などは思ってしまいます。
 それにしても、世の中には酷い会社があるのも事実です。従業員を奴隷のようにしか考えていない会社もあります。そうした会社は従業員をただの捨て駒にしか思っていませんから、そうしたあくどい会社には従業員が力を合わせて戦うのも一つの方法です。それでも…、と僕は思ってしまいます。
 そんな会社にいても将来的に幸せになれるような気がしません。そんな会社はさっさと辞めて新しく出直したほうが自分のためになるのではないでしょうか。
 今週の本コーナーで「米国サラリーマン事情」という本を紹介していますが、米国では労働者は「労働力を会社に売っているだけ」という意識で働いているようです。ですから、転職は日常茶飯事ですし、もし会社が倒産したなら次の職場を探すだけです。先ほどのホテル従業員たちのように「閉鎖の撤回」など求めないのではないでしょうか。僕はその考え方のほうが理屈にあっているように思います。それを無理矢理会社を存続させようという従業員の姿勢にはなにかしっくりこないものがあります。 
 あの番組で、社長に詰め寄っていた従業員の方たちは正社員の方たちではないでしょうか。僕は、そんなことも思ってしまいました。
 以前、ガソリンスタンドでアルバイトをしていた男性が突然解雇され、会社を訴えたドキュメント番組を見たことがあります。このコラムでも書きましたので覚えている方もいらっしゃるでしょう。
 その番組の中で、アルバイトの男性が直接「解雇撤回」を迫る相手は支店長である正社員の中年男性でした。支店長は「解雇撤回」を迫るアルバイトの男性の強い口調に対してつい言ってしまいます。
「アルバイトなんだから仕方ないじゃないか」
 当然、この発言に対して猛然と反発の声がアルバイト男性の応援者たちから上がりました。
 さて、僕がなにを言いたいのかおわかりでしょうか?
 ホテルの従業員、たぶん正社員であろう従業員の方々が解雇を言い渡される前の段階で、アルバイトなど非正社員の方々が先に「解雇されていた」いたのではないか、ということです。これは僕の推測の域を出ませんが、会社が業績が悪くなったとき最初に解雇するのは非正社員ですからあり得ることです。
 もしそうであったとき、正社員の方々は解雇された非正社員の方々に救いの手を差し伸べたのでしょうか。非正社員の方々と一緒になって会社を追求してくれたのでしょうか…。
 非正社員が解雇されるときは「仕方ない」と思い、しかし自分たち正社員が解雇されるときだけ激しい憤りで社長に詰め寄るのはどこか間違っている…、ような気がします。
 みんなが自分の「得」だけを考える世の中…。資本主義の世の中では仕方ないのでしょうか…。
 ところで…。
 定額給付金なるものがもらえそうですが、これは結局は将来の世代が負担するわけです。野党などは「ばら撒き政治」と揶揄しています。選挙目当てで「お金をばら撒いている」というわけです。でも、僕からすると、「お金」をばら撒いているのではなく「無責任」をばら撒いているように思えるんですけどねぇ…。
 じゃ、また。




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