<結婚>

pressココロ上




 テレビなどのトーク番組では、ゲスト出演する俳優さんやタレントさんは、そのほとんどがその方が関わっている映画やドラマ、または本の出版などの宣伝を目的としています。いわゆる告知です。それに倣いまして、今回のコラムは僕が新たに販売を始めました本の宣伝に役立てようと画策しています。
 本の題名は「あなたはこうやって結婚生活に失敗する」。
 僕は結婚して27年が過ぎようとしていますが、まだ離婚していません。これは一重に、また言うまでもなく、僕の「我慢、辛抱、忍耐」に因るところが大であることは間違いありません。そうではありますが、大切なことは「結婚生活中に感じる嫌なことや辛いこと」が僕の中における許容範囲内であることも忘れてはいけません。もし、許容範囲を超えていたなら「我慢、辛抱、忍耐」も続けることは不可能です。
 このように書きますと、妻が僕に対して行う「嫌なことや辛いこと」がそれほどひどいレベルではないように思う読者の方もいらっしゃるでしょう。しかし、そうではありません。それは一重に、また言うまでもなく、僕が年数を重ねるにつれて許容範囲を広げていったからです。ネ、僕って偉いでしょ。
 僕の自慢話はひとまず置いておきまして、僕は結婚をするには愛のほかの「相手に対する尊敬の念」も必要だと思っています。男性であれ女性であれ、相手を軽蔑、もしくは見下した気持ちを持っていたなら結婚などできるものではありません。
 先週、お笑い芸人の劇団ひとりさんとタレントの大沢あかねさんの結婚報道がありました。僕はその報を知り、正直少しの不安を感じました。この僕の感想について、読者の中には「余計なことを!」とか「おまえになんか言われる筋合いじゃないぞ!」などと思う方もいらっしゃるでしょうが、まぁ、ここはひとつ僕の話をお聞きください。
 僕は先ほど、この結婚に対して不安を感じたのは「少し」と書きました。「少し」の理由は僕の基準に照らしてギリギリセーフだからです。では、なにが基準かと言いますと、女性の年齢と二人の年齢差です。
 僕の経験からしますと、女性の年齢が22才以下で二人の年齢差が12才以上離れているカップルは長く続かないことが多いのです。仮に、年齢差が12才以上であっても女性の年齢が26才以上であったならその限りではありません。
 例えば、20才の女性が同年代の男性とつき合う場合、その男性も若いわけですから社会経験や人生経験も同程度ですし、収入も多くはありません。それに対して、年齢が12才以上離れている男性とつき合ったならば、社会経験も人生経験も女性より豊富ですから、いろいろなことを知っていますし、なにより若い男性より収入が多いのが普通です。このことはつまり、食事をするときは全て男性が払ってくれることですし、洋服などを買ってもらえることでもあります。このようなとき、若い女性は間違いなく年齢が離れた男性を「白馬の王子様」と思ってしまいます。もしかすると、その年の離れた男性が、その男性と同年代の女性の目から見たならば平凡な男性の一人に過ぎないと思える場合でもです。
 このようなカップルは年齢を重ねるにつれ二人の関係には変化が表れます。当初の数年間は、男性が「主」で女性が「従」です。男性のほうがかなり年長なのですから当然です。
 この数年間は、女性は男性に対して「白馬の王子様」の妄想を抱いていますので、憧れの眼差しで見ますし、自分の先生もしくはカリスマと思っています。なにを言われても素直に聞き入れますし反抗や反発など思いもよりません。まさに男性にとっては理想の関係と言えます。
 しかし、若い女性も年齢を重ねるに従い、人生経験や社会経験を積み人間的に成長します。すると若い女性の目から見て「白馬の王子様」と見えた男性を「平凡な男性の一人」とみなしていた女性と同じ目を養ってきています。そうです。「王子様」が「平凡な男」に変わるのですから二人の関係に変化があって当然です。二人の関係は「主」と「従」から対等、悪くすると女性が「主」で男性が「従」となることさえあります。
 僕の場合は、妻は22才で結婚しましたが、僕とは3才違いですので、初めから「王子様」ではありませんでした。それでも結婚当初は僕が「主」で妻が「従」の関係でした。…ああ、懐かしい…。
 その当時は、僕が言うことにいつも「ハイ」と返事をしていましたし歯向かうことなどこれっぽっちもありませんでした。たまに僕が強く怒ると涙ぐむことさえありました。それが、年月とともに主従関係は対等になりいつしか逆転していました。今では、「ハイ」と返事をすることを「損をした」ことでもあるかのように素直に「ハイ」と言うことはありません。それどころか、言葉を返すのはいいほうで、なんの反応もしないことが多い今日この頃です。僕の「我慢、辛抱、忍耐」を理解していただけると思います。
 こうした夫婦関係の移ろいは僕だけではないようです。僕の周りを見渡してみますと、女性の年齢が若く年の差が離れた男性と結婚した夫婦は、多くのケースで、女性が30才前後になったときに女性の態度に変化が表れています。
 昔、通っていたラーメン店は奥さんが高校生のときにバイトをしていたのがきっかけで結婚しました。そのときの店主は30才半ばを過ぎた男性でした。二人の年齢差は14才~15才でした。その店に久しぶりに食べに行ったとき、奥さんはすでに30才を越えており、その奥さんがひとりで店を切り盛りしていました。そのときに奥さんと常連客との会話から伝わってきた印象は、奥さんが旦那さんを完全に見下した話しぶりでした。
 また、以前仕事で知り合った男性は奥さんと14才離れていました。男性が35才のときに結婚したそうです。結局、奥さんが家を飛び出してしまい、そのとき男性は男手ひとつで小学生の子を二人育てていました。
 テレビ界を見ましても、三船敏郎さんの娘さんとロックシンガーの高橋ジョージさん夫妻はかなり年齢差があります。バラエティ番組に夫婦で出演しているようすでは、現在の関係は妻が「主」で夫が「従」であるのがわかります。僕の想像では、二人の年齢差から考えて結婚当初は夫は間違いなく奥さんの「白馬の王子様」であったはずです。
 このご夫婦のように、奥さんが若く年齢差が離れている夫婦でも破綻するとは限りません。例え、立場が逆転しても仲良く続いている夫婦もいます。その理由は、それぞれの本来の性格がその立場に合っていたからでしょう。つまり奥さんの本来の性格は「主」であり旦那さんの本来の性格が「従」であったということです。最初に勘違いでスタートしても結局収まるべきところに収まったわけですから一概に悪い変化とは言えません。
 結婚のスタイルはそれぞれの夫婦ごとに異なって当然です。大切なのは人生の最後まで添い遂げることです。しかし、現実は4組に1組が離婚しています。そうしたことがないためには、相手の本来の性格を見抜く目を養うことです。そして次に大切なことは、人間に完璧な人はいないのですから、相手を非難するばかりでなく、自分自身の相手に対する許容範囲を広げる努力をすることです。そうですよね。tomatoさん。(^^)ニコ
 ところで…。
 僕は毎日妻と仲良く(?)自転車通勤をしています。走るときは横並びになることはなく、必ず縦列で走っています。ほかの通行人の方の迷惑になるからです。縦列で走るということは、どちらかが前になり片方がうしろになることです。現在は僕が前を走っているのですが、以前は妻が前を走っていました。この前後が変わった事件は、以前このコラムで紹介しましたのでそちらをお読みください。
 さて、僕が前を走っていますとたまに揉めることがあります。それは、僕がブレーキをかけ止まると妻がうしろから追突してくることです。別に急ブレーキをかけたわけではありません。それなのに追突されることがあるのです。なん度か続きましたので僕は妻に言いました。
「ねぇ、ぶつからないでよ」
 こういうとき妻は一応、言葉を発します。
「え?…、ああ…、ムニャムニャムニャ…」
 それでも僕は、本文に書きましたように、僕は我慢辛抱忍耐です。
 ところがある日、いつもより強い衝撃でぶつかってきたことがありました。そもそも、なぜ妻が追突するかと言えば、それは単に不注意なのです。反応が鈍いというかとにかくブレーキをかけるのが遅いだけです。
 そのとき、いつもより強いぶつかり方だったので、僕は妻のほうに振り返り言いました。
「ねぇ、なんか言うことない?」
 僕は、謝罪の言葉を求めたのでした。普段、なにも言わないでいるのですからこのときくらい謝ってほしいと思ったのです。僕の言葉に妻はいつものように
「え?…、ああ…、ムニャムニャムニャ…」
 このときばかりは僕は我慢できず言葉を続けました。
「あのさ、そんな中途半端な言い方じゃなくて、『ご』ではじまる言葉なんだけど」
 すると妻は遠くを見つめながら目と眉毛の間を離しました。
 みなさん、一度目と眉毛を離した顔をして鏡を覗いてみてください。その顔を見せられたほうは本当に頭にきますから…。
 僕はなおも言いました。
「あのね、『ご』ではじまる言葉!」
 しばらくすると妻が口を開きました。
「ご・み・ぶ・く・ろ」
 僕は、ゆっくりとペダルを漕ぎ始めました。
 じゃ、また。




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