<自業自得>

pressココロ上




 「とうとう」というか「ようやっと」というか衆議院が解散しました。マスコミは麻生首相の決断について「最悪のタイミング」と論評していますが、僕的には、前の二人の首相が簡単に政権を投げ出したのに比べたなら、まだ首相の責任を果たしたのではないか、と評価しています。しかし、自民党の内紛を見ていますと選挙結果は悲惨な形で終わりそうな雰囲気です。僕は、いわゆる浮動票の人間ですが、「どこに」「誰に」投票しようか、まだ決めていません。今後の展開を見て決めるつもりです。
 実は、僕は選挙動向とは関係なく秘かに期待していることがあります。そして、そのことは選挙があるたびに書いているのですが、それは店の売上げアップです。
 選挙がありますと人の動きが活発になります。例えば、政党の支持を訴えたり候補者を推薦したりと通常より人の流れが出てきます。それに応じて売上げアップを狙っているわけです。また、人の流れ以外にも直接的に客数アップに貢献する動きがあります。それは選挙活動をしている人が政党や候補者の支持を訴えるためにお客様になってくれることです。そういう方は購入したあとに「○○さんをよろしくお願いします」とか、反対に「お願いします」と言ったあとに購入してくれます。僕にしてみますと、どちらでもいいのですが、とにかく選挙が売上げに貢献してくれることを願っています。
 ある日、初来店の中年のお客様がいらっしゃいました。メニューをしばらく眺めたと言いました。
「ここのおいしい?」
 お店を営んでいて最も難しいのが接客です。接客がうまくいきますとその後常連客になってくれますが、接客を間違えてしまいますとトラブルにまで発展することもあります。接客をうまく捌くにはお客様の性格まで予想する必要があります。先ほどの「ここのおいしい?」と聞いてきたお客様はどういう意図があったのでしょう。
 普通に考えて「味を試してみよう」とか「店員の答え方で店の方針を探ってみよう」など、またはそれほど深い意図はなく単純に「世間話のつもり」で冗談っぽく話しかける人もいます。店側の人間はこれらのうちのどれに該当するお客様か、その表情や声のトーン、スピードなどから瞬時に判断しなければなりません。
 また違うお客様は注文を終えたあとにこう言いました。
「おまけしてよ」
 こういう言葉を発することができるのは中年女性と相場が決まっているのですが、この言葉にも先ほどと同様にいろいろなケースが考えられます。そのときの言葉にユーモアや機知に富んだウィットが感じられる場合はこちらとしましてもそれなりに微笑ましい気分になります。しかし、その言葉の背後に「自分だけが得をしたい」という邪まな臭いが感じられるときはやはり気持ちのいいものではありません。
 これとは反対に「自分のことはさておく」思い遣り深い人もいます。例えば、お釣りを受け取らなかったり、意識的に高価格の品物を注文したりする方です。僕は閉店間際におまけをすることがありますが、そのときに「その分のお金を払いますよ」と丁寧に言う方もいますし、おまけをした翌日に来店し高価格の品物を大量に買ってくれる方もいます。
 解散後のニュースで麻生さん鳩山さんの動向が紹介されていました。麻生さんは組織票固めのために経済団体や業界団体を訪問し支持を訴えていたようです。反対に、鳩山さんは街中に出てマイクを握り支持を訴えていました。
 僕は元々組織票を快く思っていないのですが、組織票には先ほどの邪まな臭いの「おまけしてよ」を感じてしまいます。自分の組織だけが得をすればいい。
 そもそも今の時代に組織票はあまり期待できないように思います。以前のように終身雇用制が機能していた時代ですと、会社という組織が得をすることは従業員個人の雇用や給与に直接の影響がありました。ですから、従業員個人が会社の推薦する候補者に一票を投ずることは意味がありました。しかし、終身雇用制が崩壊した現在はいつリストラされるかもしれず、また本人の希望で転職することもあり、会社に言われるままに会社の推薦する候補者に一票を投じても従業員個人の境遇待遇に反映する可能性が低いように思います。つまり投票した甲斐がないのですね。こうした状況の中、果たしてどれだけの人が会社の推薦する候補者に一票を投ずるでしょう。これからは組織票は効果がなくなるように思いますし、そう願っています。
 それにそれに、僕は終身雇用制ウンヌン以前に従業員が会社の意のままに投票をすることに賛成しかねます。会社に勤めるということは労働力を売ることですが、精神や魂までを売っているわけではないからです。いえいえ売ってはいけないのです。選挙の一票は個人の精神や魂です。会社の言いなりになるのではなく個人の考えで決めるべきです。
 その「個人の考え」も「自分だけが得をする」ことを考えて決めるのはいかがでしょう。自分を大切に考えることは重要ですが、それとともに「ほかの人のことも考える」思い遣り深い気持ちで投票したいものです。簡単に言ってしまうなら、自分だけの損得ではなく「社会全体にとって」という基準で判断してほしいものです。いくら自分だけが得をしても社会全体が得をしていないなら最終的には自分も立ち行かなくなってしまいます。僕は、今のアメリカはそれを証明しているように思っています。
 未来の人類から「昔の人間は自業自得だよなぁ」などと言われないために…。
 ところで…。
 僕の妻は血液型がO型ですので性格は大雑把です。血液型は関係ないかもしれませんが、とにかく計画性がありません。そんな妻ですのでよく忘れ物をします。A型のような計画性があるキッチリとした性格の人ですと、例えば、翌日の準備を前の晩に済ませておくなどしてできるだけミスをしないように心がけているものです。ですが、妻はO型です。
 そんな妻は朝、家を出てものの数分もしないうちにこう言います。
「あっ」
 この一言は「しまった。忘れてた」を意味しているのですが、僕はこの一言を聞くといつも「ドキッ」とします。あまり重要でないことがらですと問題はないのですが、なにかの支払いを忘れていた、などというような信用問題に発展しそうなときは大変です。ですから、僕は妻が「あっ」と言うたびに「今度はいったい…」といつも不安に駆られます。心臓に悪いのですね。心臓に悪いのは身体に悪いですから言葉を変えてもらおうと思っています。
「いっ」
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする