<薄利多売>

pressココロ上




 昨年の夏ごろにも紹介したことがありますが、僕のコラムを検索で訪れる方のキーワードとして「PB商品」が上位に入ります。そしてその傾向は現在も続いています。約1年経ちますが、今でもやはり「PB商品」に関心を持っている人が多いようです。僕の気持ちとしては「なぜ、今現在も多くの人がPBに関心を持つのか」不思議なのですが、ともかく上位に入っています。
 今週は小売業やPB商品について書こうと思ったのですが、それについては以前書いた記憶がありましたので「いつ書いたのか」調べてみました。その結果「昨年の夏」とわかった次第です。自分でも不思議なのですが、僕は夏になると小売業、PB商品について書きたくなるようです。
 さて、本題。
 PB商品の特徴は小売業にとっては利益率が厚いことですが、反対に製造業にとっては利益率が薄いことです。報道では大手スーパーはどこもPB商品が絶好調なようで今後さらに種類を増やしていくようです。
 僕は以前、「製造小売業か小売製造業か」という題名でコラムを書いていますが、もちろんPB商品は製造小売業の分類に入ります。この「製造」が先にくるか「小売」が先にくるかは僕が勝手に区分けしたものですが、どちらにしても製造から販売までを行うことには変わりはありません。そしてそのような業態を製造小売業、横文字でSPAといいます。
*これらについては昨年8月と11月に書いていますので、興味のある方はそちらをお読みになってください。(「私のココロ PB商品」および「私のココロ 製造小売業」で検索しますと出てきます)
 SPAの代表格としてはユニクロが有名ですが、リーマンショック以降の不景気の中、ほとんどの企業が低迷している中でユニクロだけは現在も絶好調です。一昨年だったと思いますが、経済誌で<ユニクロ>と<しまむら>を比較する記事がありました。<しまむら>とは<ユニクロ>と同じようなカジュアル系の衣料品専門店ですが、当時は<しまむら>も<ユニクロ>に負けないくらい好業績を上げていましたので経済誌で比較していたわけです。しかし、現在の<しまむら>は低迷しており両者にはくっきりと差がついてしまいました。
*<しまむら>と<ユニクロ>につきましても以前に書いたことがありますので興味のある方はそちらをお読みください。
 そのくっきりと明暗を分けた差はやはり「業態の違い」だと僕は思っています。<ユニクロ>のSPAという業態と、メーカーや問屋から仕入れて販売する旧来的な小売業という業態の差です。この2つの業態の最も大きな違いは利益率の違いです。もちろんSPAのほうが利益率が高いのですが、小売業だけの利益に製造業としての利益を取り込むのですから当然です。しかし、それは製造業のリスクも負うことを意味しますから、SPAとは経済学的に言うなら「ハイリスクハイリターン」の業態と言えます。
 今から約30年前、スーパーが小売業の世界で台頭してきたころ、しきりに叫ばれた言葉があります。「薄利多売」です。スーパーはこの言葉を旗印に成長していました。それまでの一般小売店より利益を薄くして商品価格を下げることで消費者の心を掴んだのです。利益を薄くすることは当然利益額が減ることですが、その分を「多売」で補うシステムがスーパーのバックボーンとなる理論です。
 話は少し逸れますが、スーパーが成長していた時代、今でいうところのベンチャー企業の若き経営者たちは当時スーパーチェーンの理論を唱えていたコンサルタントの方々に師事していました。それらの理論を勉強し実践していたのがダイエーやジャスコやユニーなどの若き経営者たちでした。今でも本屋に行きますと、当時の経営コンサルタントの方々の名前を見つけることができます。しかし、現在のスーパーの状況は決して芳しいものではありません。ダイエーは国に助けてもらいなんとか生き延びていますが、好業績とは間違ってもいえません。そのほかのスーパーチェーンもほとんどが合併や倒産などで名前が消えてしまっています。理論を唱えていた人が今でも現役でいられるのに対して、理論を実践した人たちが第一線から消えているのはなんとも不思議な気持ちにさせられます。コンサルタント業という職業は「ローリスクハイリターン」といえるのではないでしょうか。もしかしたら「ノーリスクハイリターン」かもしれません。僕がコンサルタント業に批判的なのはこうした理由にあります。
 それはさておき、SPAとしてのPB商品は薄利を少しでも補うために行われるようになりました。PB商品によって薄利を少しでも厚くしようというものですが、これも他社が同じことをするなら最終的には価格勝負になってしまいます。旧来的な小売業の競争と同じ状況になるのは目に見えています。どこまで薄利を追求できるか…耐えらるか…が勝負です。
 市場競争に敗れた企業は消え去るのみですが、それでも企業として生き残っていける利益率はどれくらいなのでしょう。これを考えるとき重要なポイントとなるのは「どれだけ多売できるか」です。しかし、競争相手が多数ありそのうえモノが溢れている現在の社会で「多売」にも限度があるはずです。
 このような状況の中で、企業が目指すべきは「薄利多売」ではなく「薄利少売」ではないでしょうか。「多売」ではなく「少売」です。利益を薄くしたうえに売る量までも少なくしてもなお生き残っていけるシステムです。このようなシステムを「薄利少売」転じて「薄利商売」と名づけましょう。
 一見すると、成り立ちそうもない「薄利商売」ですが、実はすでに実践している業種があります。皆さんはフリーペーパーという雑誌をご存知でしょう。いろいろな種類の雑誌がありますが、それらは「売る」どころか無料で配布しています。また、現在有料で販売している経済誌も多少新鮮味には欠けますが同じ内容の記事をネットで読むことができます。これらは立派な「薄利商売」です。
 またgoogleはいろいろなソフトを無料で配信していますが、これなども「薄利商売」と言ってもよいでしょう。「薄利商売」が人々から支持されるのは当然の流れです。
 しかし、この流れが今後さらに加速し定着するかは定かではありません。アメリカのある新聞社はネットで記事を無料で配信していましたが、赤字が続き有料に変えることを検討しているそうです。
 基本的にネットの世界は「薄利商売」ですが、成功している企業はわずかです。企業は無料に慣れている利用者からいかにして利益を上げようか四苦八苦しているのが現状です。「薄利商売」は本当に難しい商売ですが、その「薄利商売」のシステムを確立できた企業だけが生き残る権利を持つことになるのは間違いないように思います。
 ところで…。
 我が家のインタフォンが昨年あたりから呼び出し音が小さくなり困っていました。最近では消え入りそうな音しかしなくなり、精神を集中していなければ聞こえないほどでした。しかし、家でくつろいでいるときに精神を集中させて生活するのは苦痛ですので自分で交換することを考えました。
 電気製品など生活用品を自分で取り付けたり修理するのは僕の趣味ですので、なんとなく「できるのではないか」とは思いましたが、1つだけわからないことがありました。それはコードです。
 玄関にある押しボタン機と屋内にある呼び出し音機本体は配線コードでつながっています。そのコードをどうやって「つなげるのか」がわかりません。コードは建物の壁の中を通っていますが、まさか僕が壁の中を這いずり回るわけにもいきません。僕は思案しました。
 いろいろ考えてみましても想像がつかず、とりあえずホームセンターにインタフォンを見に行くことにしました。
 売り場に行きますと、たくさんの種類のインタフォンが並んでおり我が家と同じような機種を手にとってみました。説明が書いてある文章などを読みましたが、肝心の配線コードのつなげ方などは書いてありませんでした。しかし、気になる一文がありました。
 電池交換の方法です。
 よくよく考えてみますと、押しボタンを押して呼び出し音がするわけですが、音を出すためには電気の力が必要なはずです。しかし、インタフォンのコンセントは見たことがありません。ということはインタフォンは乾電池で音を出していることになります。僕は説明書で乾電池の保管場所を確認しました。それは呼び出し音機本体の裏にあるようでした。
 家に帰り早速呼び出し音機本体を眺めますと壁にピッタリとくっついています。説明書には呼び出し音機は壁からはずせることが書いてありました。僕が今までに考えもしなかったことです。僕は説明書に書いてあったとおりゆっくりとそして強く壁づたいに上に上げてみました。なんと呼び出し音機が壁からはずせるではありませんか。裏を見ますと、説明書どおり乾電池を入れる蓋がありました。蓋を開けると乾電池が4つ…。
 結局、乾電池を入れ替えただけで呼び出し音は大きくきれいに出るようになりました。なんのことはない。単純に乾電池を交換するだけでインタフォンの不具合は直すことができたのでした。今では、精神を集中することなく訪問者を知ることができるようなり快適な生活を送っています。
 妻は、僕が乾電池のことを調べ不具合を直したことを褒めてくれました。そして妻は言いました。
「これでやっとインタフォンになったね」
 妻はインタフォンが消え入りそうな呼び出し音しか鳴らさない頃、インタフォンのことをこう言っていました。
「インタあほン」
 じゃ、また。




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