<保険>

pressココロ上




 ニュースを見ていますと、政治に関する内容のとき閣僚が官邸や国会の中を歩いている映像が映し出されることがあります。重要な政策が物議を醸しているときなどは、その政策の担当大臣の動向が大きな要因になりますから、記者に囲まれながら歩いている大臣が大写しになります。そうした大臣の映像を見ていて、他の大臣もしくは今までの大臣と異なった姿勢で歩いている大臣がいます。なにが異なるかといえば、それは歩いているとき必ず片手に大きな鞄を手にしていることです。もし記者に囲まれていなかったなら、その姿はまるでセールスマンのように見えます。
 岡田外務大臣です。
 大きな鞄を持って歩いている姿だけで「仕事を一生懸命やっている」と判断するのは早計ですが、僕は岡田外相の姿に好印象を持ちます。たぶん外務官僚に頼ることなく、また取り込まれることなく自分で得た情報を整理し決断するにはあのくらい大きな鞄はいつも携帯していなければ本来の仕事はできないのではないでしょうか。
 大きな鞄を手にして歩いている姿は僕の保険セールス時代と同じです。保険を販売する際も、パンフレットやら書類やらで鞄は膨れ上がっていました。損害保険は生命保険と違い自動車保険から火災保険、傷害保険と扱う種類が多いのですのでどうしても大きな鞄になってしまいます。
 僕は飲食業から保険業に転業しましたので、当然保険業界については全く知識がありませんでした。当初は戸惑いと驚きの連続でした。僕が飲食業と保険業の違いを最初に感じたのは売上げの作り方です。
 飲食業で売上げを作ろうとした場合、例えばラーメンなどで一時間に一万円の売上げを作るにはテキパキと身をこなし無駄な動作をなくし必死に身体を動かし汗をかく必要があります。その上、基本的に一人で作れる売上げ金額には限界があります。
 それに比べて保険業ではお客様へのセールストークの上手下手で、いくらでもと言ったら語弊がありますが、売上げを数倍にすることも可能です。例えば、自動車保険ですと補償額を増やしてもらったりさまざまなオプションを追加してもらうなりして売上げ金額を増やすことは容易です。飲食業のように一時間における限界もそれほどありません。
 保険の中で一般に知られ身近に感じられるのは自動車保険です。その自動車保険においてさえ、保険知識を得ることで驚くことは度々ありました。その一つにいわゆる強制保険と言われる自動車賠償責任保険(自賠責)がありました。
 自動車を運転する方で自賠責について知らない方はいないでしょう。自賠責がついていなければ車検は通りませんし自動車を運転することもできません。僕が驚いたのは自賠責の対象となる範囲です。
 ご存知の通り、自賠責は「対」「人」の場合のみ支払われる保険ですので「物」を壊したときなどには適用されません。あくまで「人」を死亡させたりケガを負わせたときのみ支払われるものです。このように書きますと、つい考えるのが「人を轢いたり」「人にぶつかったり」した場合ですが、自賠責は「自動車に乗っている人(搭乗者)」に対しても適用されます。つまり、賠償する相手が「人」でありさえすれば車に乗っていようがいまいが関係はないのです。僕は保険業に携わるまで、そのことに全く気が回っていませんでした。
 大分前ですが、有名女性タレントが実の父親を車庫入れ時に過って死亡させるという事件がありました。当時、週刊誌などでは「実の父親は保険の対象にならないので保険は支払われない」などと報じられていましたが、これは半分は正解で半分は不正解です。
 自動車保険には自賠責と任意保険がありますが、「実の父親に保険が支払われない」のは任意保険においてです。自賠責では実の父親であっても保険金は支払われます。自賠責と任意保険の最も大きな違いは賠償相手に家族が含まれるかどうかにあります。
 このように保険はとても細かい契約が決められていますが、一般の人はそこまで細かく保険内容までは意識しないものです。しかし、細かい内容を知っているのと知らないのでは任意保険における保険料に大きな差が出てきます。面倒ではありますが、細かいところまで注意深く知識を蓄え保険料を安くする工夫をしましょう。
 大きな鞄を手にしている岡田外相ですが、現在とても苦悩しているようです。言うまでもなく沖縄の普天間基地の問題ですが、この問題を誰もが納得する形で決着するのは不可能のように思います。閣僚の間でも北沢防衛大臣や岡田外務大臣では主張が異なることがありますし、大臣自身に言葉の揺らぎがあります。鳩山首相はどのような決断をするのでしょう。
 普天間問題は元を辿れば日米安保の問題ですが、日米安保は日本にとって保険のようなものです。日本が外国から攻撃されたとき日本を守ってくれる約束ですから保険です。日本は戦後、その保険のおかげで経済に集中することができ高度経済成長を成し遂げることができた、と言われています。保険は使われることがなくとも意義があったといえなくもありません。
 保険をかけるには保険料が発生しますが、日本は「思いやり予算」や「基地提供」などで保険料を負担してきました。民主党はその保険を見直そうとしています。しかし、保険の見直しが容易でないことは米国の対応を見ていても明らかです。現実的には大幅な見直しは難しいのではないでしょうか。
 仮に、見直しがされないなら本土にいる国民は沖縄の苦痛を思い遣る気持ちを持つべきです。本来、国民全体で負担すべき米国に対する保険料を沖縄だけに押し付けているからです。このことは常に頭の中に置いておくべきものだと思います。
 保険とは、将来のリスクを予想することですが、誰にも将来のことはわかりません。本当に保険のかけ方は難しい…。
 ところで…。
 タイガーウッズが不倫騒動を起こし無期限に試合を辞退する、と発表しました。週刊誌などでは「神の子も人の子」などと揶揄していますが、世間から「模範的人間」と見られていましたので批判されるのも仕方のないことかもしれません。
 僕などは「タイガーが不倫をしていても不思議ではない」と思ってしまいますが、世間という社会は許せないようです。有名なばかりに非難の嵐を受けてかわいそうですよねぇ。そこで僕の提案ですが、有名になった人はスキャンダルが起きたときのために保険に入ったほうがよいと思います。えっ、どんな保険かって?
「去勢保険」
 じゃ、また。




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