<マッチョマン>

pressココロ上




 最近、僕がYou Tube にハマっていることは幾度か書いていますが、ここ数ヶ月で一番観ているのは長渕剛さんの動画です。それも、初期の頃の動画です。個人の好き嫌いはあるでしょうが、長渕さんに対する感想としては、「マッチョマンになる以前の長渕さんが好き」という人が少なからずいます。僕もそのひとりですが、今のマッチョマンになった長渕さんはあまり好きではありません。
 なにが「好きではない」かと言いますと、メロディが原曲と離れてしまっているからです。中には、あまりに離れてしまって「全く違う歌」になってしまっている曲もあります。そこまで違っていますと、題名も変えて「違う歌」として歌ったほうが、スッキリするとさえ僕などは思ってしまいます。原曲のメロディを全くとどめていないのですから、僕の意見には一理あるはずです。
 僕が長渕さんの歌い方・風貌での好き嫌いの境目を調べましたところ、1993年でしょうか。You Tube にアップされている動画で確認した限りこの年までが「ギリギリ」で初期の頃の長渕さんの歌い方・風貌をとどめているように思います。この年が本当に境目かどうかは自信がありませんが、僕が一番好きな動画「愛しているのに」を見ている限り、妥当な判断のような気がします。この頃までの長渕さんは素敵でした。
 そういえば、長渕さんが薬物容疑で逮捕された頃、サザンの桑田佳祐さんとの揉め事がありました。きっかけは桑田さんが長渕さんを揶揄したような批判的歌詞の歌をアルバムに納めていたからです。歌詞を読む限り誰でもが長渕さんのことを歌っていると感じてしまう内容でしたので、長渕さんが怒るのも無理なからぬことのように思います。結局、このふたりの争いは長渕さんの逮捕でうやむやになってしまいましたが、当時マスコミを騒がせました。結論はつかないまま現在に至っております。
 長渕さんがマッチョマンになったのは、それまでのやせ細った肉体にコンプレックスを持っていたからだと言われています。男性は誰でも「強いものに憧れる」資質を持っていますが、その思いが高じての肉体改造だったのでしょう。
 同じように肉体改造をしてマッチョマンになった人にバラエティ番組で活躍している所ジョージさんがいます。所さんも昔はやせ細ってひ弱な体つきでしたが、今では筋肉隆々の逞しいマッチョマンに変身しています。僕的には、長渕さんがマッチョマンに変身したのは「さもありなん」と思いますが、所さんがマッチョマンを目指していたのは意外でした。性格的に「強い男」願望とは無縁な人に見えていたからです。ですが、実際にマッチョマンになっていたのですから、人の心の中はわからないものです。
 マッチョマンに変身した人の話を聞いていますと、少しずつ筋肉がつくことが快感になり、途中で止めることができないそうです。僕はマッチョマンではありませんでしたが、この気持ちは理解できます。僕はスポーツ大好き少年でしたので、中学でバスケットボールクラブに入り、初めて厳しい練習を体験したときの快感が強く記憶に残っています。腕立て伏せや腹筋運動などをすることによって、盛り上がっていく上腕二等筋、分厚くなっていく胸筋、クッキリと6つに割れていく腹筋、僕は毎晩筋肉を眺めては悦に入っていました。こうした傾向は高校に入り、さらに厳しい鍛錬を課せられたバレーボール部に入ってからも続きました。少しずつ筋肉がついていく過程はとても心地よいものだったことを思い出します。
 このような身体つきになりますと、他人に自慢したくなるのはマッチョマンの心理と同じです。きれいに引き締まった肉体は30才前頃まで維持できていましたので、会社などで着替えるときなど、さりげなく肉体を披露するのが慣わしになっていました。僕の肉体を見た人は必ず「おお、いい身体してるね」と褒めてくれました。あ~、快感。
 それはともかく、僕の場合はあくまでバスケットボールやバレーボールをするための肉体であり、筋肉をつけることが目的ではありません。そこがマッチョマンを目指す肉体改造と違う点です。マッチョマンは見てくれを重視した肉体改造です。
 肉体で思い出すのが総合格闘家の船木 誠勝さんです。舟木さんは肉体に関する本まで出していますが、舟木さんによりますとレスラーは筋肉をつけたあとに贅肉をつけるそうです。そうしないと、衝撃を吸収できないそうです。言われてみますと、腑に落ちます。格闘家で筋肉隆々の人は少ないように思います。筋肉隆々よりも贅肉がついたポッチャリ系の人が多いように思います。そういえば、お相撲さんも贅肉がついていますが、もしかしたら同じ理由からかもしれません。
 筋肉隆々が相応しくない、と言えば野球もそうです。昔、野茂さんが語っていたのを思い出しましたが、ピッチャーは筋肉隆々でマッチョマンになるよりも筋肉が柔らかいほうが早いボールを投げられるそうです。言われてみますと、筋肉隆々のピッチャーはいないように思います。ピッチャーに限らず、筋肉隆々では素早く身体を動かすことはできないのではないでしょうか。
 ちょっと話は逸れますが、野球関連で興味深いことを発見しましたので書きたいと思います。ヤクルトのヨシノリ投手は右投げですが、利き腕は左だそうです。これはあるテレビ番組で知ったことですが、文字を書くときやお箸を使うときは左手を使うそうです。これはとても驚きで、ヨシノリ投手は日本人最高速度のボールを投げる記録保持者ですが、それほどの速いボールを利き腕でないほうの腕でできることが不思議でした。
 昨年まで楽天で活躍していた岩隈投手が今年からメジャーリーグのマリナーズに移籍しました。その岩隈投手をニュースで報じることがありますが、先日その映像を見て驚かされました。
 映像では、練習のあと子供たちにサインをする岩隈投手が映し出されていましたが、映像では岩隈投手が左手でサインを書いていました。岩隈投手は右ピッチャーですが、利き腕は左手である証拠です。岩隈投手も速球投手として知られていますが、ヨシノリ投手と同じように利き腕でないほうで速いボールが投げられることが驚きでした。
 僕が最初に野球選手で利き腕と反対の腕でボールを投げる人を知ったのは張本選手です。今は解説者として活躍していますが、プロ野球界で3,000本安打を達成しているただひとりの選手です。それほどの選手が利き腕と反対の腕でボールを投げていたのが信じられませんでした。
 張本選手の場合は右手のやけどが理由ですが、それでも外野手としてプロ野球で通用するほどのボールを投げられたというのが信じられませんでした。しかし、このようにいろいろな選手がいることを知ると、利き腕というのも自分で選択することができるのではないか、と思えます。
 そういえば、左利きの子供を「将来不便だから」という理由で、右利きに変えた親は昔からいました。実は、僕の妻もそうです。妻は左利きですが、文字は右手で書きます。僕は妻を尊敬するのが悔しいので口には出しませんが、左右両方の手を器用に使っている様にはいつも感心しています。昔から「左利きの人は器用」と言われていましたが、それはこうしたことが理由ではないか、と思っています。
 それはともかく、速いボールは筋肉隆々とは関係ないようです。実際、400勝投手で全盛時代は160キロを越えるスピードボールを投げていたかもしれない、と言われる金田投手は言っています。
「速いボールは下半身で投げるのだ」
 思えば、平泳ぎでオリンピック2連覇の北島さんも引き締まった均整のとれた体つきではありすが、筋肉隆々ではありません。こうしたことから考えますと、筋肉粒々がスポーツに実際に役立つのはほとんどないように思います。その北島さんがあるインタビューで話していました。
「勝負で大切なのは、精神の強さじゃないかな…」
 もしかしたら、本当にマッチョにならなければいけないのは、肉体ではなく心かもしれません。でも、心をマッチョにするのは難しそうですよねぇ。
 ところで…。
 先日の朝方のことです。僕は妻に、「2階から雨の日に着る大きなポンチョをとってきてよ」とお願いしました。その降りてくるときに、「ドタバタ、ドシ~ン」という大きな音がしました。僕の想像では、妻が階段から滑り落ちたようでした。それからしばらくして、案の定、妻が足を引きずりながら降りて来ました。妻の話では、ポンチョを抱えていたために足元がよく見えず、足を滑らせたそうです。痛いのは足だけではなく、腰も肋骨のところも痛いようでした。
 僕が軽い感じに「大丈夫?」と言ったのが気に障ったようで、僕に八つ当たりをしてきました。
「ポンチョを取りに行かせるから、こんな目にあった!」
 目には怒りの火がともっていました。僕としては八つ当たりにしか思えませんが、面倒なので聞き流して、そのまま仕事に出かけました。でも、頭にきていたのが正直な気持ちです。
 その日の晩御飯時、僕と妻と娘の3人で食卓を囲んでいました。僕は娘に質問をしました。
「あのさ、一般論だけどさ、50才過ぎくらいの女の人が2階から降りてくるときに足を滑らせて落ちたんだ。それでね、全く責任のない旦那さんに八つ当たりをしたんだけど、一般論として、そういう女の人の態度、どう思う?」
 僕の「一般論戦法」、もしよかったら皆さんも使ってみてはいかがでしょう。
 じゃ、また。




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