<大型会員制倉庫店>

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 「時代遅れ」と笑われるかもしれませんが、僕は今、スマホに興味を持っています。「時代遅れ」かもしれませんが、基本的に僕は「時代遅れ」をモットーとしていますので僕的ではあります。考えようによっては、その僕にしてはちょっと「早い」気がしないでもありません。
 そんなわけで、僕は時間があると、携帯売り場でスマホを見て勉強しています。勉強でもしないと契約の仕方や購入の方法が今ひとつ理解できない僕です。我が家では娘だけがスマホを使用しているのですが、僕がスマホに興味を持ったきっかけはその娘のスマホにあります。
 ゴールデンウィークのことです。ゴールデンウィーク最後の日はたまたま妻と娘と僕の3人が家にいました。これは珍しいことで、3人が揃って休日に朝から家にいるのは稀有なことです。大体は休みがずれるか、休みが揃っても娘が出かけることが多く、3人揃って家にいることはあまりありません。
 そのときに妻が「知り合いがトコストに行った話」をしました。あっ、間違えました。トコストではなくコストコです。理由はわかりませんが、僕はカタカナを覚えるのが苦手です。ですから、トコストなのかコストコなのかステテコなのかいつまで経っても覚えられません。
 まぁ、名前はともかく、要は倉庫型の会員制大型量販店のことです。アメリカ生まれというだけあって、スケールの大きさは桁違いのようでした。生来の買い物好きな妻です。知り合いの話を羨ましそうに話していました。娘は楽しそうに聞いていました。僕も会話に少しだけ参加しました。すると、徐々に話が盛り上がり「じゃぁ、今から3人で行こう」となりました。
 「行こう」はいいのですが、実は僕は地理というか地図が苦手です。運転するのは嫌いではありませんが、道順などを調べるのが好きではありません。今までの経験では、初めていく場所を地図で調べても、実際の道路が地図が違うことがままあり、スムーズに着けないことが多かったからです。
 昔、「話を聞かない男、地図が読めない女」という本が売れましたが、普通、男性は地図を読むのは得意なはずです。しかし、僕の性格が女々しいからか、僕は地図・地理が苦手です。ですから、車で出かけるのはいいにしても、目的地にたどり着くまでの道のりを考えると憂鬱になります。妻とふたりで初めての行き先に出かけるときは、ルートや道順の選択で喧嘩をすることがよくあります。
 話は少し逸れますが、先日の新聞に運転に関する面白い記事が載っていました。
 それは、旦那さんが車を運転しているとき、助手席の奥さんが寝ていることの是非についての内容でした。そのことに関しては、以前僕たち夫婦もよく喧嘩をしていました。僕は運転している人の気持ちを考えるなら、「助手席の人が寝ているのは失礼だ」と考えるタイプです。僕の奥さんは最近はありませんが、以前はよく寝ていました。
 話を戻しますと…。
 ネットでお店の場所を調べますと、自宅から車で1時間ほどかかりそうでした。やはりかなりの距離ですから、問題はその場所までの道のりです。妻は僕の性格を知っていますから、娘に言いました。
「お父さん、知らない場所に行くの苦手なのよねぇ」
 すると、娘が意外なことを言いました。
「スマホでナビしながら行けばいいじゃない」
 僕は驚きでした。スマホでカーナビのようなことができるとは…。
 てなわけで、スマホに導かれてなんの問題もなく道に迷うこともなくスムーズに思ったほど時間もかからず、お店に到着しました。スマホがあればカーナビなど要らない、というのが今の僕の気持ちです。
 因みに、特別なアプリを使ったわけではなく、googleのルート検索機能を利用しただけです。この機能はすばらしく、きちんと「次の信号を右方向」などと指示を女性の声でしてくれます。ただし、ひとつ問題なのは指示の声がする前に「ポン」というお知らせ音が鳴ることですか。僕たち家族にはこの「ポン」の音が妙におかしく、お店に着くまでずっとこの「ポン」で盛り上がっていました。
 この日以来、僕はスマホに対する尊敬の念が芽生えたのでした。
 では、お店について感想を書きたいと思います。
 企業のHPによりますと、正確には「大型会員制の倉庫店」というようです。大型と名打っているように、店内は天井も高く広さも充分にありました。倉庫と名打っているように、倉庫をそのまま売り場にした雰囲気でした。よく言えば、シンプルです。その売り場に商品を山積みにして販売していました。そのボリューム感は日本のスーパーの比ではありません。ボリューム感には「安い」印象を与える効果があるようにも感じました。
 問題点をあげるなら、支払い時に利用できるカードが限定されていることです。現金で支払うつもりの人は問題ありませんが、カード払いを考えている人は不便を感じます。
 また、商品のボリューム感はありましたが、細かく観察しますとアイテム数が少ないことに気がつきました。この点においては物足りなさを感じる人も多いと思います。この2点は改善の余地があります。
 また、従業員の方々に日本語がわかるとはいえ、外国人の方が多かったのが印象に残っています。日本のお店でありながら、外国人が働いているのはなにか目的があるのでしょうか。例えば、「アメリカ感を強調するため」とか…。本当の理由はわかりませんが、日本で展開しているのですから、日本人の雇用にも貢献してほしいものです。
 最後に、全体の感想を述べますと、「決して、新しい販売形態ではない」というが僕の率直な感想です。
 確かに、規模こそ大きいですが、店舗内を倉庫のようにする販売形態は20年以上前からありました。僕が覚えているのは、ダイエーが「ビッグA」という名前で展開していたチェーンです。たぶん、今もどこかで展開していると思いますが、規模こそ小さなスーパーほどですが、やり方は全く同じで商品をダンボールに入れたままの状態で陳列し高く積む販売形式でした。やはり「ウリ」は低価格です。しかし、あまりチェーンとして伸びていないようですから、それからしますと、この販売形式は日本では受け入れられないのかもしれません。
 また、販売する単位についても日本人には向かないように感じました。お肉を例にあげるなら、販売単位が大きすぎ多すぎで、あの量では食べきるのにかなりの日数を要します。友人などと数人で買いに行き、あとで分けるという買い方が日本人向きかもしれません。一家族ではやはり多すぎます。
 日本の小売業業はアメリカの物真似と言われていました。実際、現在成功しているイオンやヨーカドーは60年代に若かった中内さんや岡田さんや伊藤さんなどがアメリカに視察に行って体験した中から誕生した企業です。このことは小売業に限りませんが、戦後日本はアメリカを手本として成長してきました。当時の若手経営者連はよく言っていました。
「アメリカで起こったことは10年後に日本でも起こる」
 戦後の経営者は「いかに早くアメリカの情報を入手して日本に持ち込むか」が勝負の分かれ目でした。ですから、高度成長時代はそのやり方が通用して時代ともいえます。しかし、ここ最近は失われた20年といわれていますが、それはつまりは戦後のやり方が通用しなくなったことの表れです。
 そうした経緯がありながら、新しく日本で展開しているアメリカ型の大型会員制の倉庫店の業態。僕は「定着しない」と予想しているのですが、さて結果はどうでしょう。
 ところで…。
 僕は今、「スマホがほしくてほしくて仕方ない」心境になっておりやんす。あれだけルート検索で役に立つのを目の当たりにしましたので、読者の方々にも僕の気持ちをわかってもらえると思いやんす。しかし、僕のこの気持ちを理解してくれない人が僕の近くにおりやんす。…妻でやんす。
「なにかがほしくなると、すぐに『ほしいほしい』ばっかりで気持ちを抑えられなくなる癖があるけど、それで失敗したことがたくさんあったでしょ!」
 こう叱責されると返す言葉がない僕でありやんす。こんな僕ですが、実は、子供たちが小さい頃、娘にはこう言っていました。
「ほしいものがあるときは、すぐに買わないで、3ヶ月経ってもほしい気持ちが変わらなかったら買ってもいいよ」
 妻に叱責されている僕を見て、娘が意味深な笑顔を向けました。
「お父さん、3ヶ月後に考えてみたら…」
 笑顔の裏には復讐心が隠されていたように感じたのは僕の心がひねくれているからでしょうか。
 それはともかく、妻の言うことには説得力があるのも事実です。僕の過去を振り返ってみますと「ほしいほしい」で失敗した例が山ほどあるからでやんす。
 そうですねぇ、これまでで「ほしいほしい」で失敗した一番の例は、僕を叱責しているその人でした。
 じゃ、また。




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