<最善の選択>

pressココロ上




先週、僕は傷害保険の更新手続きをしました。僕は以前保険代理店を営んでいましたので、元々は自分で自分が営む理店と契約した保険でした。こういう保険を自己契約といいます。ですから、僕は自らの代理店の顧客だったことになります。
 因みに、代理店を営むには「自己契約は総保険料の50%以下にしなければならない」と法律で定められています。そうしないと、保険料を割り引くためだけに保険代理店になる人がいるからです。
 それはともかく、先週は僕の知り合いの代理店の方がいらっしゃいました。僕はこの方と年に3回会うことになっています。理由は、僕が自動車保険と傷害保険、そして火災保険と3種類の保険に加入しており、それぞれの加入時期がずれているからです。友だちの少ない僕としては、数少ない同年代の知人ですので来宅するのを毎回楽しみにしています。いつも数時間滞在し、保険業界のことやそのほか仕事のことなどいろいろな話をしています。
 この方の話によりますと、最近の保険代理店業界も、厳しさは相変わらずのようで、一段と手数料が引き下げられたそうです。僕が廃業する頃に、既に代理店の手数料見直しは行われていました。ですが、当時よりさらに手数料を引き下げているようですから、代理店業を本業としているこの方にとっては死活問題です。
 実際、廃業に追い込まれている代理店は多いようで、代理店をサポートする営業所もかなりの数が閉所されていました。今一応、遠慮して「サポート」と書きましたが、本心は「統括している」とか「管理している」、もっと本心でいいますと「いじめている」…と表現したいところですが、自制したところです。…といいながら書いてしまいました…。まぁ、とにかくそんな心境になりました。僕が所属していた営業所もトウの昔に閉所されていました。
 代理店と保険会社の関係は微妙です。この「微妙」という表現も「ビミョウ」かもしれません。昔は、代理店からの「反発が起きないように」と少しとはいえ配慮がありました。しかし、現在では皆無といってもいいでしょう。今の関係は、完璧に上下関係です。一般的に企業と取引先の関係は、売る側と買う側の上下関係がありながらも、ある程度は対等に近い雰囲気はあります。いざとなったら、「おまえのところになんか売らないよ」という態度も取れるのが取引先との関係です。売る側の立場といえども、奴隷ではありませんから強気になれる自由はあります。
 しかし、保険業界での保険会社と代理店の関係はそうではありません。一応「今の」と注釈がつきますが、完全に上位関係になっているようです。「対等」という雰囲気はほんのひとかけらもありませんでした。間違っても、昔のような和気藹々とした面影を見ることはできないようでした。
 元々の保険会社と代理店の関係は、商品を「作る側」とそれを「売る側」の関係でした。ですから「作る側」にしてみますと、「売る側」の人たちをおもてなしをする必要がありました。いくらいい商品(保険)を作ろうが、売る人たちがいてくれなければ売れないからです。代理店になる人を紹介するだけで、保険会社からお礼として金品をもらい、保険に加入してくれる人を紹介するだけで、代理店手数料という報酬を得ていました。大げさに感じる人もいるかもしれませんが、保険会社の人を保険に加入する人に引き合わせるだけで代理店業が成り立っていた時代が当初の損害保険業界の実態でした。
 今50代以上で20年以上代理店を営んでいる人はその時代を知っている方々です。先週、我が家にやってきた代理店の方はそのうちのひとりですが、当時を振り返り懐かしい思い出に話が盛り上がりました。保険会社の営業員が飲みに誘ってくれたり、ボーリング大会を開催したり、定期的にレクリエーションをしてくれたり…。今から思えば、天国のような時代でした。(当人の弁です)
 僕は月に1回は必ず行くショッピングモールがあります。あまり大きくはないモールですが、ホームセンターを核とした専門店が入居しているモールです。そこにはファッションセンター島村が入っているので、妻は必ずウィンドショッピングをします。そのとき僕はどうしているか、というとほかの売り場を見学してりホームセンター内をウロウロしたりして、それなりに楽しんでいます。ホームセンターは大工道具などがあったりしてウロウロするのに最高のところです。
 その専門店の中に「いろいろな保険会社の中から最適な保険を紹介する」という方式の保険コンサルタント会社がテナントとして入っています。僕はショッピングモールに行くときは必ずそのお店の様子を窺います。店頭のパンフレットの種類や並べ方など、そしてお客様の入り具合です。
 繁盛しています。僕が見に行ったときでお客様がゼロのときは一度もありません。因みに、僕たちがモールに行くのは日曜祭日ではなく平日の午後3~4時くらいです。その時刻に「必ずお客様がいる」ということはお店として満足できる結果のはずです。保険会社が代理店手数料を引き下げ、営業所を閉所する背景がわかろうというものです。
 最近、僕のサイトで保険について説明しているページの閲覧が増えています。実は、今週コラムで保険を取り上げることにしたのもそれが関係しています。数年前に比べて、一般の人の保険に対する意識が高まっているのは間違いないように思います。僕はこうした傾向を喜ぶべきことだと思っています。
 僕は基本的に、ひとつの保険会社の商品の説明だけを聞くのではなく、複数の保険会社の商品を比べ、その中から選択するのがベストの加入の仕方と思っています。その意味でいいますと、モールの中に入っているような保険コンサルタント方式の企業が増えることを期待しています。
 ですが、この保険コンサルタント方式の企業に問題点が全くない、というわけでもなさそうです。以前、読んだ経済誌にこうした企業の問題点が取り上げられていました。
 結局、複数の保険会社の中からベストな商品を紹介する企業であっても、最終的には手数料の高い保険商品を紹介する可能性を指摘していました。言われてみれば当然ですが、そこまでを一般の人が見抜くのはかなり難しいのが実際のところではないでしょうか。
 一昔前まで、保険に加入しようと思ったお客様は、ひとつの保険会社の商品の中から気に入った保険という商品を選ぶのがほとんどのやり方でした。ですから、「選んだ」つもりになってはいましたが、見方を変えるなら、狭い選択の範囲の中の商品を押し付けられていたことになります。つまり、主導権はあくまで販売する側にありました。このような状況ですから、当然のごとく販売する側が「最適」といいながら、「手数料の高い商品」を勧めていたとしても不思議ではありません。
 それと同じ構図が、保険コンサルタント方式でも行われていることになります。唯一違うのは、選択の幅が広がったことです。「ひとつの企業」からだけでなく「複数の企業」の中から選べる、という幅の広さです。それを除くなら、結局は以前と同じことをしているような錯覚に陥ってしまいました。しかし、選択の範囲が広がったことは悪いことではありません。僕の持論ですが、選択の範囲は広ければ広いほど消費者にとってのメリットです。
 このように、選択の範囲が広がったことはいいことなのですが、なにかしっくりこない気持ちにならないでもない自分がいます。そうしているうちに、あることに気がつきました。それは、以前読んだ本に書いてあったことを思い出しましたからです。
「人間は、選べる範囲が広がるほど、最適な選択をする確率は低くなる」
 そう言われればそうだよなぁ、なんてこの言葉を読んだとき思ったのでした。最善の選択って簡単ではないですねぇ…
 ところで…。
 先週は思わぬニュースがありました。日本IBMの元社長が逮捕されたのですが、その容疑があまりに稚拙すぎて僕にはどうにも腑に落ちない気分でいます。肩書きで人物を評価するわけではありませんが、日本を代表する大企業の社長にまで登りつめ、その後もほかの一部上場企業の社外取締役を複数務めていた人物です。また、政府の要職も務めていたそうです。そんな人物が盗撮などするのでしょか。僕にはどうも…。
 世の中にたくさんいる中小企業の社長ではありません。国際的にも有名な企業の社長を務めた人物です。これだけの地位を務めたのですから、お金も有り余るほど持っているはずです。銀座で豪遊もしていたでしょう。駅のホームを歩いているお嬢さんたちよりもっと美しくエロティックな女性と知り合うどころか、付き合うことだって容易だったはずです。本当にスケベ心がさせた行為なら、こうした女性たちにいくらでもお願いすることができたはずです。それなのに、盗撮だなんて…。
 以前、養老孟司氏はなにかの本の中で「僕は、大学の教授が金品に絡む事件で逮捕が報じられるとき、ほとんどを信用しない」と書いていました。養老氏によると、ほとんどの大学教授は研究に夢中でお金儲けなどには無頓着な人が多いそうです。養老氏は、そういう事件が起きる背景には、大学という塔が権力闘争や派閥闘争が起きやすい場所であることを指摘していました。
 同じ論理で考えるなら、今回の元社長の逮捕にもなにかほかの背景があるように思えてなりません。それにしても、最近盗撮のニュースが多い気がするんですけど、そんな気がしているのは僕だけでしょうか。
 今回に限らず、盗撮で逮捕されているケースはほとんどが現行犯のようです。つまり、駅などには警察の人が張り込んでいることの証拠です。皆さん、人混みの中で携帯電話を使うときは携帯の向きに気をつけましょう。
 じゃ、また。




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