<蓋を開ける>

pressココロ上




 尖閣諸島問題で日中間が揉めています。そもそものきっかけは都が購入したことですが、それを決断したのは都知事の石原氏です。その石原氏は以前から中国を敵視した発言を繰り返していますが、そのほかにも各方面で差別発言を指摘されたことがあります。
 人材コンサルタントの辛 淑玉氏などは石原氏を差別主義者と辛らつに批判していますが、石原氏は人権派といわれるジャーナリストの方々に嫌われていることが多いように思います。
 それはともかく尖閣にしろ竹島にしろ、はたま北方四島にしろ、政治家が対立ばかりを煽っていったいどうしようというのでしょう。僕はそれが不思議でなりません。
今から30年前にフォークランド紛争というイギリスとアルゼンチンの戦いがありました。フォークランド諸島を巡る両国間の戦争でしたが、これと同じように日本は武力で戦うつもりなのでしょうか。日本は戦争放棄を憲法で謳っていますが、「自衛のためにならよい」という解釈が一般化しています。その理論でいいますと、尖閣にしろ竹島にしろ日本は自国の領土と主張していますから、どちらも戦争を行なう根拠とはなりえます。自分たちの領土を守るためですから、いくらでも戦争を始めるための方便は成り立ちます。
 外交には各国の国内の政治状況が大きく影響しますが、中国では強硬派の動きを気にかけながら、民衆の怒りが共産党に向かわないように綱渡りの対応をしているように見えます。少し前までは、中国政府は一党独裁のいい意味での側面が出て、日本に対して抑制した対応をとっているように見えました。こうした対応は一党独裁でなければできない対応です。しかし、ここ数日の対応は反発を強めた対応に変化しており、半日デモも容認せざるを得ない状況に追い込まれています。その原因は日本が尖閣諸島を国有化したことですが、先に書きましたように、その元々の原因は石原都知事です。野田政権は石原氏に振り回されているように見えますが、もう少し大局的に見てほかの対応を考えるべきだったと悔やまれます。
 このような意見を述べますと、一部の保守派有識者に怒られそうですが、今のままでは落としどころが掴めず問題が大きくなりそうで心配です。
 韓国に関しては、今回の動きは李明博大統領の国内事情が大いに関係しているようです。もうすぐ大統領選がありますが、そのためのパフォーマンスと解説するメディアが多いようです。もちろん日本政府もそうした背景を理解しているはずです。にも関わらず騒動が収まる気配がしないのは、やはり民主党政権が外交の素人だからでしょうか。そうとしか思えない野田政権の対応です。
 こうした中国や韓国との外交問題は一気に噴出してきた感がありますが、相手側の事情があるにしても、その前の情報収集という点で日本側にも問題があるように思えて仕方ありません。それは官僚との付き合い方です。ここに問題の核心が集約されているように思います。
 今回、中国大使が民間人の丹羽氏から官僚に戻るようですが、こうした動きも野田政権と官僚の力関係が変化したことを思わせます。一言でいうなら、野田政権なり民主党は官僚との距離のとり方がわからなかったように思います。そして、官僚を「コントロール」することが政治家の務めとやってきましたが、結局うまくいかず元に戻りつつあるのではないでしょうか。この人事はそうしたことを想像させます。
 そもそも政治家と官僚の関係を力関係として表現するものではありません。ましてやコントロールを「する側」と「される側」の関係でもありません。「力を合わせる」関係です。そうでなければいけない関係です。どちらも国家をよくすることが目的であることは同じなのですから、徒に対立していては国民にとっても大きな損失です。今回の領土問題の紛争が両者が力を合わせて解決されることを願うばかります。
 現在、民主と自民ともに党のトップを決める選挙が行なわれていますが、トップが決まったあと、この流れからしますと近々選挙がありそうです。
 そうしたときに思い出すのはやはり3年前の選挙です。民主党の政権奪取は画期的な出来事に思えました。あのときの興奮は忘れられません。
 しかし、結果的には残念な思いをした人が多かったのではないでしょうか。僕もそのひとりですが、それでも民主党に政権を担わせたこと事態はよかったと思います。民主党が政権政党に相応しいかどうかは蓋を開けてみないことには全くわかりません。蓋を開けもしないでいろいろと言ってみても仕方のないことです。
 先日、久しぶりに昔住んでいたところに行ってきました。ちょっとした用事があり出かけたのですが、その変わりぶりに驚かされました。町並みといいますか、風景はさほど変わっていませんでしたが、その中身が相当変わっていました。具体的には、お店関係です。今まであったお店がなくなり、新しいお店に衣替えしている場所がいくつもありました。
 昔よく行っていたマクドナルドも閉店していましたし、よく前を通った食堂も居酒屋に変わっていましたし、そのほかにもたくさんのお店が変貌していました。
 そんな中、すかいらーくグループのお店が業態を変えていたのが印象に残りました。以前はすかいらーく○○(○のところは思い出せません)という名前でしたが、それからガストに変わり、そのあとに同じグループのスパゲッティ専門店になり、今回「おはしカフェ・ガスト」になっていました。
 以前にも書いたことがありますが、すかいらーくグループは開業してから40年くらい経つ間に40くらいの業態を作ってはやめ作ってはやめを繰り返してきました。たぶん、経営する側にしてみますと、業態を変えることで差別化を計るつもりなのでしょう。ですが、40以上も業態を作っていますと、業態的にはほとんどやりつくしているように思われます。それでも、業態変えを決行するのは、僕には自信のなさの現われのように映ります。
 但し、昔と今では経営者が違いますので本人たちはそのことを意識していないかもしれません。すかいらーくといえば横川四兄弟が有名ですが、その兄弟の中でも茅野さん(養子に行って名前が変わった)が最もすかいらーくの発展に貢献したといわれています。その茅野さんが第一線を引退したあと、バブルの崩壊とも関連し業績が悪化し、MBOを実施したのちファンドに経営権を奪われて現在に至っています。ですから、今のすかいらーくグループはファンドが選定した経営者が指揮をとっており、横川四兄弟の時代とは全く異なる企業といえます。
 そのような状況ですから、今の経営者が横川四兄弟時代にやっていたことと同じことをやっていたとしても、当の経営者にしてみますと「同じことのくり返し」という認識はないかもしれません。しかし、お店を利用している僕などからしますと、同じことのくり返しとしか思えません。
 ですが、経営者にしてみますと「蓋を開けてみないとわからない」という思いがあっても不思議ではありません。確かに、同じような業態変えであろうとも時代が違えば違う結果が出ることもあります。
 4~5年前でしょうか、すかいらーくグループの中で「ジョナサンだけが好調」という記事が経済誌に載ったことがあります。そのときは、その理由が僕には今ひとつピンとこなったのですが、今となってはピンとこなかったのが正解だったようです。先日は、ジョナサンが業態変えをしていました。すかいらーくグループをみていますと、この先いったいどこに進もうとしているのか迷っているように見えます。
 今週、このようなことを書いたのは、先週、牛角が外食大手のコロワイドに買収されたという記事があったからです。牛角についてはコラムで幾度か取り上げていますが、今回の出来事は「さもありなん」のことでした。
 牛角は不動産会社が多角化のひとつとして外食産業に参入して例です。一時は破竹の勢いで伸び、いろいろな外食業態に進出しましたが、結局どれも成功しているとはいえません。こうした例はほかにもたくさん見てきましたが、マスコミに登場した回数が多かった分だけその落差が大きく報じられます。
 先月来、ラーメン界のイチローと言われていた会社が倒産し、あのシャープも業績悪化が伝えられ、そして牛角も買収されました。このような報道に接していますと、一見、業績がよさそうに見えても、華やかそうに見えても、または成長著しそうに見えても、蓋を開けてみないとわからないなぁ、というのが実感です。
 ところで…。
 牛角を買収したコロワイドですが、買収する側の企業だからといって安心万全の企業ということではありません。本業である居酒屋の競争が激しく、いつなんどき買収される側に回るとも限らないのがビジネス界の姿です。
 今は低迷しています牛丼チェーン吉野家も一時はいろいろな企業を買収する側でした。それが世の中の流れに乗り遅れ低迷しています。このように見て行きますと、企業の実態を知るには、蓋を開けるだけではこと足らず、底が抜けていないかも確認する必要があるかもしれません。
 じゃ、また。




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