<自立>

pressココロ上




 あけましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いいたします。
 …というわけで今年も残すところ11ヶ月と25日となってしまいました。
 …などと売れない芸人のような言葉からはじめてみましたが、昨年最後のコラムで書きましたように、僕は年末年始も普通に仕事でしたので特に改まった気持ちになることもなく本日を迎えています。
 僕の一年のはじまりは毎年恒例の家族ボーリング大会ですが、今年も無事に大会を催すことができました。大会は親世代対子ども世代の対決ですが、今年は僕たち親世代が勝つことができました。
 これも毎年書いていますが、僕がお正月の楽しみにしているテレビ番組にダウンタウンの浜ちゃんがやっている芸能人格付け番組があります。あの番組は料理などに関して通ぶっている芸能人たちの本当の実力をあからさまにしてくれますので、とても楽しみにしています。いつも偉そうにコメントしている芸能界の重鎮と呼ばれる人たちが実際は味覚や聴覚や感性において本当は平凡な能力しか持ち合わせていないことが顕になるのが痛快です。
 そんな中、現在、見事に一度もはずすことなく本物を当て続けて24連勝中なのがアーティストでもあり俳優でもあるガクトさんです。
 ガクトさんは、例えばスーパーで販売している牛肉と高級レストランで提供している牛肉の違いを判別することができます。そうした高級品と安物の違いをワインにしろバイオリンの調べにしろ、感じることができます。これこそが真に「違いのわかる男」です。
 実は、僕は本当はそんな違いがわかることに大して興味がありません。ですが、いつも偉そうなコメントをする人を見ていますとその人の本当の実力を知りたいという気持ちにはなります。
 高級品と安物の違いを判別できるということは、そのものの真の価値をわかることでもあります。真の価値をわかる人であるなら高級品を身につける資格がありますが、価値をわからない人は高級品を身につける資格はありません。価値をわからない人が高級品といわれるブランド品を身につけている様は道化師にしか見えません。
 「価値をわかる」という能力はその能力自体がその人の存在価値ともなります。世の中にはいろいろな人がいますが、できれば存在価値の高い人になりたいという欲望を誰しも持っています。まさに、芸能人が本物の価値がわかるように振舞うことはこの欲望がさせる行為です。
 存在価値の高い人には共通点がありますが、その共通点のひとつに「周りに頼らずに自立していること」があります。その観点で考えるとき、僕は会社員という立場でなく独立している人を尊敬しています。企業という看板を背負わなくても立派に自分という存在を主張できている人です。しかし、残念ながら企業という看板を背負っていなければ存在価値がないような人もいます。
 ずっと以前にこのコラムでも書きましたが、現在の心境として書きたい気分ですので重複を承知で書かせていただきます。僕が20代後半に脱サラを考えるようになったきっかけになる話でした。
 僕の最初の社会人1年目はスーパーに勤めました。それほど真剣に考えて就職を考えていなかった結果ですが、そこでスーパーにテナントに入っていた呉服店のご主人と親しくなりました。そのご主人はたまに僕を飲みに誘ってくれていろいろな話を聞かせてくれました。正確には「教えてくれました」でしょうか。
 そのご主人は元々は僕が勤めていたスーパーではない大手スーパーで呉服部の部長を務めていたそうです。大手スーパーでの部長ともなりますとかなりの権限があります。ですから取引先の方々も丁重に接してくれます。お歳暮もたくさんもらいますし、賄賂とはいいませんが、それに近いような行為があってもおかしくはありません。なにしろ問屋にしろメーカーにしろ大手スーパーと取引ができるか否かはとても重要な要因です。
 そんな環境にいたご主人は月日が過ぎるにつれて段々と大手スーパーに務めていることの限界を感じるようになったそうです。当時のスーパーは、社長が世襲で決まっていましたのでそのような思いになったようです。そしていつしか、独立が頭の中をよぎるようになりました。
 もちろん独立することに対してリスクはつきものということはわかっています。部長にもなる人ですから、ビジネスマンとしての一応の情報も知識も持ち合わせていて当然です。そこで取引先の方々にそれとなく尋ねてみました。
「もし、独立するようなことがあったら取引をしてもらえるか?」
 この質問に対して全ての取引先が一にも二にもなく「喜んで」と答えたそうです。そして、この方は実際に大手スーパーを退職し独立を果たすわけですが、そのときに待っていた取引先の方々の対応は予想外のものでした。
 取引条件が大手スーパーと比べて格段に悪かったのでした。中には、「実績ができるまで取引をできない」とまでいう業者もいたそうです。その方はそのときになってやっとわかったそうです。
 今までの自分の実力は大企業という看板を背中に背負っていたからこその実力で本当の実力ではなかったのだ…。
 この方は、大企業という看板がなくなった途端に手のひらを返すように態度を豹変させた取引先の業者の対応に自分の本当の実力を見たのでした。
 僕は人を判断するときその人の真の実力を計ります。基本的に、会社員は上げ底を履いている状態ですので真の実力ではありません。先ほどの例のように企業という看板を失った途端にメッキがはがれることがあります。
 実は、僕がこんなことをこの時期に考えたのは元巨人で大リーグに渡った上原浩二投手をテレビで見たからです。
 年末でしたが、日曜朝に放映している情報番組に出演していました。上原投手は髭を生やしていましたが、その風貌に対してスポーツ界の先輩が苦言を呈していました。苦言の内容は単に「スポーツマンとしてみっともない」ということのようでしたが、それに対して上原投手は反発するでもなくさりげなくこう答えました。
「大リーグでは、日本人は見下されるんですよね。だから少しでもふてぶてしくしていないと…」
 この話はそれ以上は進展しませんでしたが、その話し方がさりげなかっただけに余計に上原投手が大リーグに渡った覚悟が垣間見えました。そういえば、イチロー選手も同じような状況であることをなにかの記事で読んだことがあります。
 僕が上原投手を尊敬するところは巨人という看板をいとも簡単に捨て去ったことです。普通なら、巨人という球団にいるだけで充分恵まれた環境にいることになります。やはりマスコミからの注目度が違いますからほかの球団にいるよりも数段有利な野球人生を送れることは間違いありません。それを投げ捨てての大リーグ挑戦であり、そして活躍していますから自立という観点から考えますと素晴らしい行動力でした。
 「寄らば大樹」とは正反対の生き方をしているビジネスマンや社会人のうしろ姿ほど逞しく美しいものはありません。たとえ成功していなくとも…。
 ところで…。
 日本未来の党の嘉田代表が代表を辞任しました。ホリエモンふうにいいますと、想定内の行動ですが、その考えの甘さは批判されてしかるべきです。ほんの1ヶ月前に有権者に投票を呼びかけていたのですからその責任は決して軽くはありません。嘉田氏に期待して一票を投じた人がたくさんいたことを忘れないで今後の政治活動をしていただきたいものです。
 日本未来の党のようなことがおきますと、やはり次は日本維新の会と思ってしまいます。党の要職のほとんどを旧太陽の党の方々が占めている状況をみますと、分裂も時間の問題ではないかと思ってしまいます。
 橋下氏が自立するのはいつでしょう…。
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする