<とかくこの世は難しい>>

pressココロ上




 今週のコラムは、先週の月曜祝日に執り行われました「息子の礼服(フォーマル)購入譚」から。
 最初に考えるのは「どこで買うか?」ですが、普通は有名な紳士服チェーンを思い浮かべます。テレビや折込チラシなどで頻繁に広告を見ますから「安くて品質がいい」というイメージがあります。そこで改めてチラシをみますと、ある大手チェーンは1万円以下の価格が載っていました。しかし、よくよく丁寧に詳細にチラシをみますと、「限定5着」と書いてあります。たったの5着だけではとうに売り切れていると考えるのが普通の感覚です。そこで商品数に限定のない商品を探しますと少し高くなって4万円から6万円の価格が平均的な価格でした。
 実は、僕の先入観としては礼服は3万円前後で買えると思っていました。長いこと礼服はおろかスーツ類も購入していませんので昔の思い出強く記憶に残っていたようでそのような価格が刻み込まれていた次第です。
 自分の先入観に間違いがあるのがわかったのは、ほかの大手チェーンのチラシも見たからです。どのチラシを見ても似たような価格が表示されていました。
 調べついでにネットでも見てみました。今はネットの時代ですから、テレビや新聞などでは広告していな紳士服専門店を期待したのですが、新鮮味のある情報はありませんでした。
 結局、折込チラシが入っていた自宅近辺の大手チェーンを幾つか回って安い店で買うことに決めました。チラシを見た際に僕たちの関心を引いた広告文がありました。それは「スーツの下取り」システムです。どんなスーツであっても下取りに持っていくとその場で「20,000円値引き」と書いてありました。僕は着なくなったスーツを幾つも持っていますのでそのひとつを車に積み込み僕たちはでかけました。
 最初に向かったのはショッピングセンターにテナントとして入っている紳士服専門店です。しかしそのお店にはフォーマルの商品数が少なく、しかも大手チェーンのチラシで見た価格とは2万円以上も高い値札がついていました。僕たちはすぐに店をあとにしました。
 実は、この時点で3人の共通認識として「次に向かう大手専門店チェーンで買う」ことが心の大半を占めていました。それは先の専門店で見た値札が高かったからです。「やっぱり、大手チェーンは違うよなぁ」というのが3人の先入観として入り込んでいました。
 ですから、次の大手チェーンの駐車場に停めたときは、下取りスーツを出すタイミングを計るだけの心模様になっていました。
 自宅を出発したのが夕方でしたので、お店に入った時間は既に午後6時を回っていました。たぶん、その時間はお店にとってはもう販売のピークを過ぎたアイドルタイムに入っていたと思います。実際、足を踏み入れた店内はお客様の人影はほとんどなく販売員の方がすぐに目に入る状況でした。
 そんな店内ですから、おじさんとおばさんそして20代後半の男性の3人が入りますと目立ちます。しかも僕たちは買うべきものが決まっていますから、目的のフォーマルを目指して歩みを進めていましたから、お店の側からしますと格好の鴨に見えたことでしょう。
 礼服売り場が2階にあることがわかり、3人で迷うことなく階段を上がっていきました。すると、すぐにあとを追いかけてくる女性販売員の足音が後ろから聞こえてきました。僕たちが礼服を見て回っていますと、タイミングを待っていたかのように女性販売員が近づいてきました。
 50代後半に見えるその販売員の方はたぶんベテランなのでしょう。僕たちの行動を見て「買うことを決めている」のを見抜いていました。ですから、話しかける言葉は「息子のサイズを測ること」でした。
 結局、いろいろなやりとりがあったあとに購入することにしたのですが、実は決して満足または納得しての購入ではありませんでした。それはチラシに掲載されている価格の安い礼服は品切れのものが多く、結局6万円以上の礼服を買うことになったからです。しかも下取りシステムにも不満が残る販売法でした。
 先に、下取りはどんなスーツを持って行っても20,000円の値引きと書きましたが、値引きの対象となる価格に問題がありました。値札には既に「値引きされた価格」が表示されていましたが、20,000円の値引きは値引きされる前の価格からされるシステムだったからです。
 例えば、元値が60,000円の価格が値引きされて48,000円の値札がついていたとき、下取りシステムで20,000円値引きされるのは48,000円からではなく元値の60,000円からという意味です。しかも、その説明は精算をする最後の最後まで引っ張っていました。僕たちが納得できなかった気持ちがわかってもらえると思います。
 どんな企業でも企業の一番の目的は販売することです。しかし、その目的の最大の意義は「リピーターになっていただくこと」です。1回限りの売上げではいつまで経っても売上げは上がりません。それどころか下がってしまいます。売上げはリピーターが増えることで自然と上がっていきます。
 しかし、今回、僕たちが経験した大手チェーンでの販売方法はこの意義をないがしろにするものです。確かに、その時点での売上げで考えるなら、チラシ掲載品の価格の安い商品ではなく、その倍以上の商品を販売したことになりますから成功したことになります。短いスパンで見るなら成功の部類に入りますが、もっと長いスパンで見るなら決して成功したとはいえません。なぜなら、僕たちはそのチェーン店で購入したことを後悔しているからです。不満な気持ちだけが残ったからです。
 今回の経験から僕はいろいろなことを考えました。チラシのあり方もそのひとつです。企業は目玉商品をチラシに載せることでお客様を呼び込めると思っていますが、しかしその広告の打ち方には疑問があります。僕の経験からしますと、チラシに掲載されている商品が少なく、来店したお客様にセールス話法で高い商品を販売するやり方は、企業に対する信頼感を失わせる効果しかありません。本来、企業はお客様の心の中に好感が芽生えるようにすることが一番の目的です。しかし、チラシに激安価格を表示してお客様を呼び込むやり方は逆効果のような気がします。
 同じようなことを感じるのが映画やテレビドラマの宣伝方法です。現在一番多く取られている宣伝方法は「とにかくいろいろな番組に出まくる」ことです。例えば、ある映画が公開される前にはその映画の主演者らがバラエティ番組に出まくっています。テレビ欄を見ていますとその主演者が各局のいろいろなバラエティ番組に出ているのがわかります。しかし、僕からしますと同じ人がいろいろな番組に出て同じことを話している様には辟易する気持ちしか起こりません。僕と同じように感じる人は多いのではないでしょうか。これでは宣伝・広告の目的とは正反対の効果しかないように思います。
 だからといって、宣伝・広告をしなかったなら多くの人に知ってもらうことができないのも事実です。先の映画の例で考えるなら、主演者らがいろいろな番組に出演するとしたら、いったいどのくらいの露出割合が理想なのでしょう。もしかすると、全く出ないこともひとつの方法かもしれません。それを考えたのは次の記事を読んだからです。
 百田尚樹さんという放送作家をご存知でしょうか。主に大阪で活躍している方ですが、一昨年当たりから小説も書きベストセラーを連発しています。この百田さんがタレントの価値について新聞で述べていました。
 百田さんは大阪で視聴率の高い番組を作っていますが、その番組での体験を話していました。ある高視聴率の番組でMCを務めていたタレントさんが引退したあとの視聴率の変化についてです。
 当初、番組はそのタレントさんの力量で視聴率を稼いでいると思われていたそうです。そのタレントさんはMCとしての能力も高く話術も優れていたからです。ですから、そのタレントさんが引退したあとは視聴率が下がると心配していました。しかし、それは杞憂だったそうです。
 また、引退した島田紳助さんを引き合いに出し、紳助さんがMCを務めていた番組についても同じような結果が出ていたそうです。紳助さんはいろいろな番組のMCを務めていましたが、紳助さんが引退したあともそれらの番組で視聴率に大きな変化は起きていないそうです。この事実は、番組の視聴率を決める大きな要因は「タレントではなく企画だ」ということを意味しています。百田さんによりますと、テレビ業界はこれらの事実から今後は番組の作り方を変えていくそうです。
 そうは言っても、「笑っていいとも」でタモリさんが引退したら視聴率は絶対に落ちると思いますし、「スマスマ」もSMAPが引退したら番組は消滅するだろうし…。難しいところです。
 えっ、例えに出した番組が古いって…? 
 あまりテレビ見てないから仕方ないでショっ。




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