<テレビへの露出度と人間性の関係>

pressココロ上




 僕がテレビを見るのは、テレビを見ている妻の後ろを歩くときの数秒です。または、僕がパソコンに向かっているとき、近くでテレビを見ている妻の背中越しに気分転換の一環として見るときです。ですから、スマップのスマスマも見ることがありますし、日本テレビの県民ショーもときたま見ます。
 最近気になっているのが「世界の秘境の地にいる日本人を紹介する」ような番組です。秘境の地とはいわないまでも、「なんでこんなとこに日本人がいるの?」というような地にまで千原の兄やんが出かけて話を聞くようすはとても面白いです。しかし、テレビ界の悪弊ですが、似たような番組がまたぞろ出てきているのにはちょっと辟易する気分にもなります。
 そんなテレビ界を見ていて、最近気になったことがあります。それは秋元康さんがやけに番組に出演していることです。いろんな番組に出まくっている感があります。
 テレビ界のひとつの傾向として、ある一定の時期に同じ人がいろいろな番組に出まくることがあります。そういうときは必ずといっていいほど、なにかの宣伝です。テレビドラマの宣伝だったり、映画の宣伝だったり、新しく出版される本の宣伝だったりします。
 「そこまでやるか!」と思うほど集中的に1週間とかひどいときは一日中、テレビに出続けていることもあります。こうした現象を見ていますと、いかに宣伝が大事であるかを証明しています。しかし、宣伝で売上げが決まるのは僕としては感心しない気分があります。
 このように、今のテレビ業界で番組に出まくるのはなにかの宣伝が目的であることがほとんどです。しかし、ここ1~2週間の秋元康さんのいろんな番組への出まくり現象は少し違う意味を持っているように思いました。
 今をときめくテレビ界の実力者であり、大御所といわれる秋元さんです。そのような大物の立場にいる人が現場の仕事をしているのはどう考えても腑に落ちません。どこの業界でもそうですが、大物はうしろにデンと構えて、子ネズミのようにチョロチョロと動き回ることはしないものです。ヤクザの世界でも親分はあまり動かず、実際に身体を使って動くのは下っ端の若い人と相場が決まっています。
 しかも、元々、秋元さんは構成作家出身ですし、ディレクターとかプロデューサーといった裏方の仕事がメインの人です。また、性格的にもうしろでタレントさんや芸人さんたちを操ることに快感を覚えるタイプの人のはずです。
 だからと言って、表に出るのが絶対に嫌いというタイプでもありません。ですから、これまでにもいろいろな番組に出演して盛り上げることもしていました。たぶん、裏方の人が表に出るようにしたきっかけを作った人ではないでしょうか。
 しかし、基本的な立ち位置は親分です。間違えました。大物です。ですから、AKBがテレビ業界で活躍するようになっても、あまり表に出てはきませんでした。あくまで総合プロデューサーという立ち位置から離れることはありませんでした。そうした状況はAKBが弾けて数年経ちますが、弾けた当初から、そしてテレビ界を席巻している現在まで同じです。
 そのような立場の秋元さんが番組に出まくっているのが不思議でした。秋元さんはAKB48の総合プロデューサーですのでAKBを宣伝することは必要かもしれません。ですが、今のAKBを取り巻く状況は秋元さんがわざわざ現場で動かなくてもきちんと回る状況になっています。
 なんでだろ…。
 しばらく考えて、ふと思い出しました。朝ドラ「あまちゃん」の太巻さんこと荒巻さんのことです。たぶん、あまちゃんを見ているほとんどの人が荒巻さんは秋元さんをモデルにしていると思っています。あの太い黒縁のメガネやスーツ姿や腕組みをするポーズなど、秋元さんを連想させるに充分な要素を詰め込んでいます。
 そして、あまちゃんの中で荒巻さんは悪役です。アイドルを作るためにはどんな手段も厭わない黒幕の役です。脚本のクドカンさんはまるで今の秋元さんを揶揄するかのように荒巻さんを描いています。
 ここ1~2週間、秋元さんが番組に出まくっているのはあまちゃんのせいです。テレビは民衆に大きな影響を与えます。テレビで演じた役がそのまま俳優のイメージになることはよくあることです。あまちゃんが描く荒巻さんこと秋元さんは、そのまま秋元さんという人間のイメージを固定させています。
 秋元さんは、このイメージを覆そうとしているようです。僕には、そのように思えました。そうであるなら全てに合点がいきます。
 秋元さんは、ここ1~2週間にバラエティ番組に出まくっていますが、共通していることがあります。それはあまちゃんについて全く語らないことです。「語らない」どころか「触れても」いません。あれだけ視聴率がよくて、しかも自分自身がモデルになっている役柄があって、扱っている内容も「アイドルの成長」です。これほどトークのネタに相応しい内容はありません。ですが、全く触れていません。
 考えようによっては、他チャンネルの番組なので「触れない」ということもあり得ます。ですが、秋元さんほどの大物になればそんなタブーは無視することができるはずです。タブーを守るよりも本音を聞いたほうが番組的には成功といえます。やはり、この理由では今ひとつ納得できません。
  2~3年前のことですが、頭脳明晰がウリでクイズ番組などに出演して活躍していた女性タレントの不倫騒動がありました。この騒動は女性タレントと有名ジャーナリストとその奥さんの三角関係ですが、この騒動では女性タレントも非難されましたが、一番悪いのはジャーナリストの男性です。結婚をしていながらほかの女性と関係を持ったのですから当然です。男性は芸能レポーターから集中非難を浴びました。それはそれは凄いレポーターたちの糾弾でした。このような状況になりますと、普通の人が考えるのは姿を隠すことです。ほとぼりが冷めるまでどこかに身を隠そうとするのが平凡な人の考えです。たぶん、政治家はほとんどがその行動を取ります。
 しかし、このとき男性は正反対の行動をとりました。男性はテレビに出まくったのです。不倫で有名になったことを逆手にとってバラエティ番組に出まくりました。そして、その行動が功を奏し、時間が過ぎるにつれて少しずつ悪人というイメージが払拭されていったのです。テレビに出るということは、このような効用があります。
 週刊誌などで悪事がばれたとき、仮にそれが事実であったとしてもテレビでの露出度が高いなら悪いイメージは広まらない、薄まるという効果があります。悪事の内容とタイミングによりますが、よほど対応を間違えなければ、悪いイメージはすぐに収まります。人はテレビで見る機会が多ければ多いほどその人に対して親近感が湧くのかもしれません。
 僕は、秋元さんはそれを狙っているように感じました。テレビに出まくることで悪いイメージを押し返そうとしているように思えました。
 さて、僕の推察は当たっているのでしょうか…。
 ところで…。
 あまちゃんと同様に今回のクールで高視聴率を上げているドラマは半沢直樹です。実は、僕は一度も見たことがないのですが、騒がれれば騒がれるほど半沢直樹に関して違う感想を持ってしまいます。
 それはTBSのドタバタぶりです。TBSは思いもよらぬ半沢直樹の高視聴率ぶりに慌てふためいているように見えます。例えば、いろいろな番組に出演俳優を出演させたり、番組宣伝を強化したりしています。放送時間を延長したりするのもそのひとつです。
 しかし、その付け焼刃的な対応を見れば見るほどかつての「ドラマのTBS」といわれていた栄光の時代がかすんでいくように思えてなりません。岸辺のアルバム、ふぞろいの林檎たち、青が散る…。
 じゃ、また。




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