<費用対効果>

pressココロ上




 たまたま見かけた二景。
 それほど大きくないスーパーのトイレの前の腰掛に70才前後のおばあさんとおまわりさん数人。おばあさんを取り囲むように大の大人の男性警官が6~7人はいたでしょうか。
 トイレに行くときにそれとなくようすを覗ってみますと、おばあさんは万引き犯のようでした。僕の見た感じでは「少し痴呆の症状がある」ようにも思えるおばあさんの素振りでした。暴れるでもなく取り乱すふうでもなくただ漠然と椅子に座っていたからです。
 普通の感覚の持ち主ですと、警官6~7人に囲まれているのですから緊張しているとか落胆しているとか普通の状態ではいられないはずです。しかし、おばあさんはごく普通の表情をしていました。
 次の光景。
 大きな道路を横断するために信号待ちをしていました。道路を渡った先には規模の大きなマンションが立っていました。おしゃれふうに建てられたマンションは歩道から中が見えないように草木で囲まれていました。
 その草木のはずれのほうを見ますと警官の姿が見えました。さらによく目を凝らしてみますとその人数が尋常ではないほど多いことがわかりました。草木の中にも警官の姿が多数見えたからです。
「いったい、なにごとだろう…」
 信号が青になり、警官が集まっている場所をさりげなく覗き込みますと、そこには酔っ払いらしき60才前後の男性が首をうなだれて座り込んでいました。僕の想像では、マンション敷地内に不審な浮浪者が侵入してきたのを警官が職務質問している感じです。警官は男性の近くにいる人を除くと単に周りを取り囲んでいるだけでした。中には表情が緩やかな警官もいて緊迫した雰囲気は微塵もありませんでした。ここでもやはり7~8人の警官がいたでしょうか。さらに僕がその場を通り過ぎて先に進んで行きますと、あの現場に向かうらしき警官とすれ違いました。警官の人数が増えることになります。
 この2つの光景を見た僕の感想は「警官の人数が多すぎ」です。スーパーでは70才を過ぎた高齢のおばあさんが警察官たちの対象人物です。どう考えても屈強な警官が6~7人も必要ではありません。走って逃げるだけの体力があるようには見えませんでしたし、その気持ちがあるようにも見えませんでした。
 マンション現場でも、男性は座り込んでおり逃げる意思があるような素振りは全くありませんでした。なにしろ半分酔っ払ってるのですから…。そんな状況のところに警官が7~8人も必要ではないはずです。
 もし民間企業であったならこのような人員配置はしません。理由は費用対効果で考えたとき無駄な要素が多いからです。無駄が多いということはそれだけ無駄な出費が多いことで、それはすなわち利益を減らすことになるからです。利益があるなら減るだけで済みますが、それが進みますと赤字になってしまいます。それはつまり倒産することを意味します。倒産とは存在が消滅することです。
 先々週注目を集めた兵庫県の野々村議員はとうとう辞任に追い込まれましたが、議員の報酬について注目が集まっています。議員の報酬は国民が納めている税金から支払われます。記憶に残っている方も多いでしょうが、今年の5月から国家公務員と国会議員の給料が上がっています。
 一応は「一時的に減額していた分を元に戻しただけ」という大義名分がありますが、現在の国家財政の状態から鑑みますと簡単に納得できる対応ではありません。民間で働いている人間からしますと、お金に対する感覚が公務員関連の人たちはずれているように思います。
 公務員の方々の感覚のつながりでいいますと、僕が納得できないのは「取調べの可視化」が骨抜きにされたことです。このことから感じられるのは、法務省の官僚の人たちは平等で合理的な取調べを実現することよりも自分たちの裁量権を失うことを不安に思っていることです。
 しかし、今回の法制審議会が設置されたのは郵便局事件の村木氏やパソコン遠隔操作で嘘の自白をさせられた男性らのようなことが起きないようにすることが目的だったはずです。それが、骨抜きにされたのではいったいなんのために議論をしたのか意味がなくなってしまいます。
 可視化にはいろいろと面倒なことが多いことはわかりますが、そうしたことを考慮しても容疑者が真実を語るという効果を考えるなら、可視化は決して効率の悪い選択ではないはずです。法務省の人たちはどうして村木を犯人と決め付けたのか、またはパソコン遠隔事件で本当な犯人でもない人が自白をしたのかを真剣に考える必要があります。
 僕には官僚の人たちが全員悪い人とは思えませんが、このような一連の出来事を見ていますと、「やはり官僚の人たちは、自分たちのことしか考えていない」という感想を持たずにはいられません。
 たったひとりの年老いたおばあさんや酔っ払いの浮浪者に大勢で対処する警官の人たちは自分たちのやり方になんの違和感も疑問も感じないのでしょうか。僕はそれが不思議でなりませぬ。
 だれか本を出さないかなぁ…。
「もし普通の警察官がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする