<品質が落ちる理由>

pressココロ上




 先週は免許更新に行ってきました。5年ぶりでしたが、昔は3年に一度の更新でしたのでそれを思いますと誠に規制緩和は利用者にとって喜ばしいことです。さらに昔に比べますと、いろいろな点で利用者には便利になっています。
 昔は試験場までわざわざ足を運んで更新手続きをする必要がありました。しかし、現在は試験センターや指定警察署などでも手続きをすることができます。ただし、試験場以外で手続きをできるのは優良運転手という条件があります。
 今回、僕は久しぶりに優良運転手でしたので車で15分くらいの指定警察署で手続きを終えることができました。もちろん、署員の対応も昔に比べますと格段とよくなっていまして、かつてのような横柄で偉そうな対応をする人はほとんどいませんでした。やはり、僕くらいの年齢の男性署員の場合は昔の名残を引きずっていますので「感じがいい」とはいえない雰囲気を漂わせていましたが、それでも昔に比べますと十分に丁寧な対応でした。
 更新所に来る人全員にいえることですが、手続きの進め方に慣れていません。しかも、視力検査という緊張する試験もあります。結構、視力検査が苦手な人は多いのではないでしょうか。
 確か、僕も一度視力検査で引っかかってしまい、追試験を受けた記憶があります。僕は二種免許を持っていますが、二種免許には「深視力」の試験があります。これは3つの棒が並んでいて真ん中の棒だけが前後に動き、3つが並んだところでボタンを押す試験です。簡単そうですが、不思議と見れば見るほど3つが並列した瞬間というのがわからなくなります。ですから、僕も視力検査には恐怖感を持っていました。
 しかし、「運よく」というか「どうにかどうにか」というか、ともかく合格をいただきまして更新することができました。これで5年間は更新手続きをせずに済みます。また、自動車保険もゴールド免許割引を適用することができます。これも、うれしい!
 先に書きましたように自動車免許の更新手続きは昔と比べますと格段に簡易になっています。更新期間が3年から5年と延長されていますし、手続きができる場所も増えていますし、更新手続きの期間が誕生日を挟んだ2ヶ月間と延びています。また、優良な運転手は講習時間も30分と短くなっています。
 このようにいろいろな面で利用者の利便性が向上されてきた免許更新手続きですが、これも規制緩和の発想があったからです。規制によって品質が守られるなどプラス面もありますが、総合的には規制緩和は既得権益者や独占権益者だけが得をする状況を改善する効果があります。
 しかし、世の中にはいろいろな人がいますので僕の意見とは相反する考えを持っている人もいます。先日は、そういう方とお話をする機会がありました。
 規制緩和に反対する意見の持ち主ですので、その方はもちろん免許が必要な仕事をしている方です。資格名をいいますと、家屋測量士です。家屋測量士の仕事を簡単に言ってしまいますと、「不動産の物理的状況を正確に登記記録に反映させるために、必要な調査及び測量を行うこと」です。
 その方のお話によりますと、顧客は弁護士が圧倒的に多いそうです。僕は仕事について考えるとき、真っ先に考えるのは「顧客は誰か」ということです。コンビニやファーストフード店のような一般消費者が顧客である場合はとても簡単です。身近で見たり利用したりしていますので想像することが容易です。しかし、一般的にはあまり知られていない仕事というのもたくさんあります。ですから、「顧客は誰か」を知ることでその人の考え方や発想の源がわかってきます。
 家屋測量士の場合は仕事を弁護士からもらうわけですから、一般消費者を相手にしているような業種と同じような顧客の探し方はしません。しても意味がありません。では、どうするか。弁護士と知り合うような普段から行動様式をとることです。これしか方法はありません。
 この方は測量事務所を構え、従業員も数人雇用しているようでした。そして、ビジネスでうまくいっている人の常套句である「仕事を丁寧にやっていると、それを見て新たな紹介がある」を連発していました。年齢は僕より2才ほど年長でしたが、成功者がよく口にする言葉を並べていました。
 こういう話を聞くときに、大切なことは最初の顧客の掴まえ方です。「丁寧な仕事」が新たな顧客を呼ぶのはわかりますが、最初の仕事がなければなにも始まりません。僕はそこを突っ込みました。すると、ちょっと戸惑ったような表情で、「弁護士事務所に間借りをしていて……うみゃむにゃむにゃ…」。結局、詳しい返答は聞けませんでしたが、そこのあたりに家屋測量士として独立できた本当の理由があるように感じました。
 そして、この方がしきりに話していたのが、小泉首相が進めた規制緩和によって測量士業界および弁護士業界が混乱していることでした。だいたいにおいて既得権益者がいう「混乱」とは売上げが落ちることを指しています。つまり、規制緩和によって価格競争が起きて売上げが落ちていることを「業界が混乱している」と表現しているのです。そして、それと同じくらいに話していたのが
「人間はお金だけが目的で働いていちゃぁダメだよね」
 規制緩和に反対する人たちの真の理由は、既得権益者が利益を取れなくなるからです。ですが、それを率直に話す人はほとんどいません。代わりに出てくる言葉が「品質が落ちる」です。
 この方も話していましたが、規制緩和に反対する人たちが主張する「品質が落ちる」は反対するための隠れ蓑です。「品質が落ちる」のは利益を優先させた企業の経営問題であり、規制緩和が理由ではありません。
 繰り返しになりますが、規制緩和反対論者が主張する「規制緩和で競争が激しくなって品質が落ちる」という意見は逆です。規制緩和がないほうが品質は落ちます。なぜなら、競争がないのですから品質を落としてもなんの損失も受けないからです。共産主義時代のソ連を思い出してください。競争がある中での品質劣化は競争に負けることにつながり、それは市場からの退場にまで発展する可能性があります。
 もし、マックやファミマが競争に晒されていなかったなら、今回の中国の工場との取引も中止もなかったでしょう。競争があったからこそ、消費者からの信頼を失わないためにとった対応です。
 測量士さんとの会話では僕は聞き役に徹していたのですが、既得権益者の側にいる人たちが自分たちのだけの利益ではなく、社会全体のことを考えた発想をしない限りいつまで経っても世の中は変わらないなぁって思った次第です。
 でも、自分が損することを選択するのは勇気がいりますよねぇ。
 ところで…。
  経営のプロであるはずのベネッセの原田社長が情報流出事件に際して対応を適切に取れていないことが不思議です。
 エヘへへ。ちょっと嫌みかなぁ
 じゃ、また。




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