<自動車保険>

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 結婚した娘から自動車保険の相談を受けました。娘婿が車の買い替えをしたそうで、そのときに販売会社の人から保険についても変更を勧められたからです。婿殿も保険にはあまり詳しくないようで、今までの保険内容について尋ねますと対物には加入していませんでした。僕からすると、恐ろしいことです。
 誰でもそうですが、できるだけ安い保険に加入したいと考えるものです。しかし、本当に安いかどうかがわからないのが虚しいところで価格だけでは比較できない部分があるのは確かです。
 婿殿がこれまで加入していた保険はネット通販の保険会社でした。そして、販売会社の人が勧めた保険は日本の大手損保会社でした。この段階で、どちらが安いかは一目瞭然です。通販のほうが安いに決まっています。大手損保会社は代理店を通しての販売ですので、どうしてもその中間マージン分が高くなるからです。この場合は販売会社が代理店になっています。
 僕も保険販売の現場を離れて大分時間が経ちましたので細かいところまでは把握できていません。ですが、大まかな点についてはさほど変わっていませんのでいろいろと相談に乗りました。
 そして、相談に乗りながら一般の人は保険について正確に理解せずに加入している人がまだたくさんいるように感じました。なにしろ説明をしだしたらキリがないほど細かく決められているのが保険という商品だからです。反対にいいますと、それだからこそ大手保険会社は売上げを作ることができます。
 というわけで、今週は自動車保険について解説することにしましたが、先ほど書きましたように現場を離れて久しいのですべてが正しいという自信はありません。一応はネットで現在の状況も調べながら説明しますが、お読みになる方はあくまで「参考にする」というスタンスで読んでくださるようお願いいたします。
 さて、自動車保険は大きく分けて対人賠償保険と対物賠償保険、傷害保険、車両保険に分類されます。最初の2つは賠償をする保険で、傷害保険は自分および同乗者のケガや死亡・後遺障害を補償する保険で車両保険は自分の車に対する保険です。
 自動車保険でよく聞く疑問は補償の重複疑惑です。補償が重複しているということは片方は無駄な補償ということになりますから、その保険料は捨てていることになります。具体的な保険では人身傷害保険と搭乗者保険は「違いがよくわからない」という声を聞きます。
 どちらも自分の車に乗っていた人を補償する保険ですが、確かに目的が同じなのですから重複していると考えても間違いではありません。ですから僕などは人身傷害保険だけでも問題ないと思っています。実際には、僕は搭乗者保険にも加入していますが、その理由は加入している代理店が知り合いですので保険料をあまり低くするのに遠慮があるからです。そうした事情がなければ人身傷害保険でも問題はないと思っています。
 このように保険で一番損なことは重複で補償を受けていることです。ですから、中には強制保険である「自賠責保険だけでも問題ない」と考えている人がいてもおかしくはありません。
 基本的なことの解説になりますのでご存知の方にはつまらないと感じるかもしれませんが、ここで自賠責と任意保険の違いについて簡単に説明したいと思います。
 自賠責とは車には必ずついている保険です。この保険の目的は被害者救済です。ですから、よほどの過失がない限り被害者は自賠責で補償を受けることができます。ただし、問題点は補償額が少ないことです。傷害の場合は120万円までしか補償されません。この120万円で十分と考える人もいるかもしれませんが、治療代から慰謝料や休業損害補償までとなりますとやはり少ないのが実情です。
 ちょっと大きめの事故で重症になりますと120万円を超えることもありますので、そうしたときのためにあるのが任意保険です。任意保険などと言葉にしますとなにやら堅苦しいイメージがありますが、要はテレビやネットなどでしきりに宣伝している自動車保険のことです。
 先ほど自賠責は対人だけを補償し、しかも傷害の場合は120万円が上限と説明しました。しかし、死亡や後遺障害の場合は3000千万円から4000前万円となっています。僕は任意保険における対人賠償は無制限を勧めていますが、その理由は最悪の場合被害者を死亡させたなら3000万円では足りないからです。そうしたときに価値を発揮するのが任意保険です。ですから、任意保険に加入するなら無制限でなければ加入した意味がなくなると僕は思います。
 このように被害者を死亡させたときのために任意保険は必要ですが、同時に120万円を超えた傷害の補償に対しても意義があります。被害者を死亡させたなら3000万円まで保険金が支払われますが、死亡せずに1000万円などといった中途半端な被害額ですと1000万円から120万円をひいた880万円を賠償しなければなりません。普通の社会人が簡単に用意できる金額ではありません。ですから、任意保険に加入せずに交通事故を起こしたときは、人生を棒に振らざるを得なくなることもあります。車には必ず任意保険に加入しておきましょう。
 さて、任意保険に加入する必要性は理解できたとしてもやはり補償の重複は避けたいものです。しかし、一般の人は補償の説明を受けても中々理解できないのが実情です。そういう人には具体的な状況で説明するのが最もわかりやすくなります。
 Aさんは自分が運転する車に奥さんと子供さんと会社の後輩を乗せて走っていました。このときに事故を起こしてしまい、過失割合が相手が6割でAさんが4割だったとします。この状況で誰に対してどのような保険の補償が受けられるかを知ることで保険の必要性と重複について理解することができるはずです。
 まず後輩に対してです。運悪く後輩は重症を負ってしまい、入院治療になり会社も休職することになりました。後輩の損害額は治療費や慰謝料や休業損害なを含めて総額500万円だっとします。このときに後輩に支払われる保険金は、相手の自賠責保険の上限である120万円と任意保険の過失6割分と、そしてAさんの自賠責と任意保険の過失4割分です。
 このように説明しますと、相手方の自賠責および任意保険での対人賠償保険だけでなくAさんの自賠責および任意保険での対人賠償保険でも支払われることに驚く人がいます。しかし、対人とはまさしく「人」に対する賠償ですので当然Aさんの自賠責や任意保険の対人賠償保険でも補償を受けることができます。
 この事実を知りますと、自賠責および任意保険の対人賠償保険だけで「事足りる」と考える人が出てきそうです。ですが、次の場合が問題です。
 奥さんとお子さんの場合です。やはりどちらも重症でそれぞれ損害額が700万円だっとします。もう説明するまでもありませんが損害額とは治療費や慰謝料などです。この2人に支払われる保険金は相手の自賠責と任意保険過失6割分です。問題はこのあとです。後輩のときはAさんの自賠責と任意保険過失4割分が支払われました。しかし、身内の場合は自賠責は支払われますが任意保険は対象外になっているのです。
 つまり、奥さんとお子さんに関しては相手方の自賠責と任意保険6割分とAさんの自賠責からしか保険金の支払いはないことになります。具体的に説明しますと、奥さんとお子さんはそれぞれ相手方から700万円の6割である420万円とAさんの自賠責から120万円の540万円しか補償されません。残りの160万円は自分で負担することになります。
 このようなことにならないために搭乗者保険や人身傷害保険があります。この2つの最も大きな違いは支払われる保険金が定額か実費かにあります。現在、搭乗者保険は人身傷害保険と「補償が重複する部分がある」という批判に応えるかたちでほとんどが「部位症状別払い」形式になっているはずです。これはケガをした部位によって5万円とか10万円などという定額を支払う方式です。
 人身傷害保険は実費分を補償するのですが、この実費というのが曲者です。曲者という表現はあまりいい表現ではありませんが、人身傷害保険にはそうした一面があります。
 人身傷害保険は損害額のすべてを実費で支払う保険ですので、中には対人賠償保険と人身傷害保険の両から実際の損害額よりもかなり多くの保険金がもらえるように考える人がいそうです。しかし、それは違います。あくまで実費なのです。
 つまり、人身傷害保険は運転者も含めて車に同乗していた人全員を補償しますが、あとから自賠責や対人賠償保険に請求をします。つまり被害者は自賠責や対人賠償保険と重複して人身傷害保険から保険金をもらえるわけではありません。ですが、単独事故を起こしたときは同乗しているのが家族だったときは自賠責からしか保険金がでませんので、やはり人身傷害保険は大きな意義がある保険です。
 そろそろ終わりの時間ですが、最後に「いざというときに」役に立つ保険を紹介します。それは個人賠償責任保険と弁護士費用保険です。
 サイトの「~する前に」コーナーの損害保険に加入する前にのテキストでも紹介していますが、個人賠償責任保険は歩行中や自転車に乗っているときに車と接触したときに価値を発揮します。
 以前息子が自転車に乗っていて車と接触して自転車が半壊に近い状態になったことがありました。この事故では、なんと相手方が「自転車がぶつかったせいで車のバンパーが傷ついたから5万円弁償しろ」と写真つきで手紙をよこしてきました。このときに個人賠償責任保険を使うことで反対に相手方から賠償金を受け取ることができました。
 実は、この事故では相手方がこちらの過失を主張したことで得をすることができました。なぜなら、個人賠償責任保険はこちら側に過失責任がないと使えないからです。過失があったおかげで保険会社に交渉を代理してもらうことができたわけです。
 このことは交通事故でとても大きな要因です。「このこと」とは「保険会社が交渉の代理を務めること」です。一般の人は交通事故にあうとすぐに保険会社に連絡をしてあとは保険会社に任せておけば大丈夫と考えています。しかし、こちらに過失が全くない場合は保険会社は法律によって交渉を代理することができません。
 ですから、例えば反対車線から対向車が飛び出してきた場合などでは過失はありませんからこちらは保険会社に交渉をしてもらうことはできません。相手方の保険会社がきちんと対応してくれるなら問題がありませんが、そうでないなら納得できる補償が受けられないことになる可能性があります。そういうときのために僕が役に立つと思っている保険が弁護士費用保険です。この保険は弁護士に依頼するための保険ですのでお金に心配することなく弁護士に依頼することができます。
 今週は保険について説明をしてきましたが、保険というのは奥が深くこのコラム程度の文字数で説明しきれるものではありません。ですが、このコラムが自動車保険について興味を持つきっかけになれば幸いです。
 じゃ、また。




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