<健さん>

pressココロ上




 高倉健さんが亡くなられてから追悼番組や昔の映画が放映されていますが、先週「幸せの黄色いハンカチ」を観ました。今から30年以上も前の映画ですので若々しい健さんが出ていました。もちろん初めて観たわけではありませんので内容は知っていますが、それでも最後は感動しました。不思議なものです。
 実は僕は実物の健さんを20メートルくらいの距離で見たことがあります。また、武田鉄也さんとは同じ車に乗ったことがあります。桃井さんとは会ったことがありませんが、桃井さんと雰囲気が似ていた内藤やすこさんとも同じ車に乗ったことがあります。正確には両者とも「乗った」ではなく「乗せた」ですが…。
 今から10年くらい前ですが、副業でポスティングのバイトをしていたことがあります。そのときに健さんの家がある地域を担当したのですが、いわゆる高級住宅街ですべての家が僕からすると豪邸に見えるような住宅でした。高い塀で囲まれておりとにかくでかい。
 あとでなにかで読んだのですが、その健さんの家の隣には健さんのマネージャーのような役割をしていた女性が住んでいたそうです。もちろんその家も豪邸でした。
 ポスティングについて少し説明しますと、要はチラシを配る仕事です。僕がやっていた頃に比べますと、ポスティングをしている人の年齢が高くなっている感があります。たぶん、ある年齢以上になりますと働ける業種も限られてきますので自ずとポスティングをやる人が多くなるのかもしれません。
 基本的に、ポスティングは時間給ではありません。投函したチラシの枚数により給料が決まります。例えば、1枚が3円とした場合200枚で600円です。今でも求人情報誌にポスティングが載っていますが、1日で8千円から1万5千円の収入などとなっています。
 僕はバイトでしたのでそこまで働いたことはありませんが、専業にしている人に話を聞きますとあながち大げさでもないようです。ただし、1万円以上の収入を得るにはバイクで移動するなどいろいろな条件が必要なようでした。
 では、普通の人が普通に働いた場合どのくらいの収入になるかといえば、時給に換算して800円くらいです。もちろん人により歩く早さが違いますので個人差はありますが、平均するとそのあたりでしょうか。
 配布できる枚数に歩く早さは大きく影響しますが、それと同時に、いえそれ以上に大きく影響するのが家の大きさなのです。健さんの住宅のような高級住宅街は一軒一軒の敷地が広いので大変でした。ポストに投函してから次の家のポストまで距離があるからです。
 こじんまりした家が並んでいるところですと、ホイホイと時間をかけることなく配布できますので効率がよくなります。さらにマンションなど集合住宅ですともっと効率がよくなります。なにしろポストが連なっていますので移動することなく枚数を稼ぐことができます。
 参考までにお伝えしますと、こじんまりとした家が並んでいる住宅街ですと1時間に配布できる枚数は200枚が平均です。ですから、歩くのが早く一生懸命配布する意志がある人ですとそれよりも多く配布できますし、反対の場合は少なくなります。つまり、時給換算ですと、600円から1,000円の間といったところでしょうか。
 さて、僕が健さんと遭遇したのは健さんの家の近くを歩いているときです。健さんの家は高い塀で囲まれているのですが、建物は少し高くなっています。つまり、階段を上って玄関まで行くのですが、階下にはガレージがあります。もちろんガレージにはシャッターが降りていて中を見ることはできません。
 健さんの家のブロックの隣のブロックを配り終え、次は健さんの家というときです。健さんの家のほうをみますと、ゴミ袋をゴミ置き場においている男性がいました。僕は「もしかして…」と思い、男性のようすを窺っていますと、男性が顔を上げました。なんと高倉健さんその人ではありませんか!
 健さんはゴミを置き、自宅に戻ろうとするときにたまたま僕のほうを見ました。僕は思わず軽く会釈をしてしまいました。知り合いでもなんでもありませんので会釈をする資格などないのですが、思わず会釈をしてしまったのです。すると、健さんも軽く会釈を返してくれたのです。ああ、このうえない人生の絶頂…。
 世の中にはたくさんの人間がいますが、一般人で健さんと会釈をし合った人はそう多くはいないはずです。僕はそのひとりなのです。ああ、生きていてよかった。ポスティングのバイトをしていてよかった。そんなことを思った僕でした。
 その高倉さんが亡くなってしまいました。反日の強い中国でも健さんは別扱いのようで、いつも中国のニュースに出てくる強面の報道官も好意的に訃報を伝えていたそうです。因みに、健さんが中国で人気のある理由は、文革後初めて公開された日本映画が健さんが主演していた映画「君よ憤怒の河を渉れ」で、なおかつその内容が「腐敗した偉い人をやっつける役だったから」だそうです。
 武田さんと遭遇したのは僕がタクシー乗務員だったときです。それについては大分前に書いていますので今回は省略しますが、やけに腰が低かったことを覚えています。
 それにしても「幸せの黄色い…」を久しぶりに観て思ったのですが、話の内容はそれほど珍しいことでも意表をつくようなことでもありません。映画解説によればアメリカのコラムや映画を参考にして作ったそうです。しかし、そうであっても最後の場面で観る人にあれだけ感動を与えられるのですからすごいことです。
 いや~、映画ってホントにいいですね。
 ところで…。
 報道番組などに選挙に絡み政治家が出演することが多いですが、テレビ出演ではどうしても言葉遣いやパフォーマンスがうまい人が得をする傾向があります。しかし、そのような人が当選したあとに国民のために、国民の視線で活動してくれるとは限りません。
 僕は願っています。不器用でも誠実に政治家の仕事を全うしてくれる人が当選しますように。そのためには投票に行くことが大切です。
 じゃ、また。




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする