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pressココロ上




 とうとう安保関連法案が参議院でも可決して成立しました。世論調査では約60%の人が反対しているそうですが、それでも成立しました。テレビや新聞などマスコミではセンセーショナルな見出しで報じていましたが、僕はそんな報道の仕方に違和感を覚えました。なぜなら、衆議院を通過した時点で「60日ルール」により成立するのは動かしがたい現実だったからです。
 ご存知の方も多いでしょうが、一応「60日ルール」を説明いたしますと、衆議院で可決された法案が参議院で否決されても衆議院で3分の2以上の賛成で可決されたなら成立させることができるルールです。このルールからおわかりのように、参議院よりも衆議院のほうが優越するという考えが根本にあります。
 ですから、原則的に考えるなら今の段階で大げさに騒ぐのは本来はあまり意味のないことです。僕の違和感を理解してもらえると思います。
 yafooトピックを見ていましたら、安保法案に対していろいろな芸能人が意見を述べていることを伝えていました。芸能人という職業柄、普通は「政治的発言はしない」のが基本的スタンスなのだそうですが、今回はそのタブーを破っているそうです。それほど日本という国にとってエポックメイキングとなる大きな出来事いうことかもしれません。
 また時代の変化もあるように思います。かつては芸能人といいますと、社会情勢に疎いまたは無頓着というのが一般的イメージでした。しかし、最近は「教養がある」芸能人が増えてきているように思います。「教養がある」といいますと語弊がありますが、世の中に関心を払い自分の意見を持っている人が多いように思います。音楽界やお笑い界などいろいろな分野の著名人が声を上げているのが今回のデモの特徴です。
 そのような人たちのほとんどと言っていいくらいの人が「反対」を表明しています。これらの人たちは数多くのファンを持っていますので、この方たちの意見表明が大きな影響を与えるのは当然です。今回の盛り上がりに貢献しているのは間違いありません。
 どんなことでもそうですが、あることが盛り上がるにはきっかけというものが必要です。たとえばある本が売れるときは、その本が大きな賞をとったり有名人が紹介するなどがきっかけになっています。
 その意味でいいますと、今回の安保法案は間違いなく6月に行われた衆院憲法審査会がきっかけでした。なにしろ与党が推薦した長谷部恭男・早稲田大教授までもが「憲法違反」と断じたのですからニュースにならないはずがありません。これ以降審査会は開かれていないのですが、それほど大きな転換期となってしまいました。
 長谷部教授が意見陳述をしたときの審査会幹事を務めていた自民党・船田元氏(党憲法改正推進本部長)の驚いたようなあっけにとられたような表情が忘れられません。
 このニュースがきっかけとなり世の中が動き出したように感じます。もし、このきっかけがなかったなら反対の主張が盛り上がることもなく安倍首相のペースでズルズルと審議が進んだのではないでしょうか。
 その後、反対デモを主催するSEALDsという学生団体の活動などがマスコミで取り上げられることになり、反対運動がさらに盛り上がるようになりました。実は、僕はこのときもSEALDsという学生団体に対して懐疑的でした。
 これまでの過去を振りかえりますと、学生運動に限らずなにかしらの集団ができるときそこに不純な目的があることが多かったからです。たとえば、政党絡みの背景があったりまたはある個人が社会をのし上がるために利用する意図があったりなどです。僕のような疑り深い性格で了見の狭いおじさんはそうした意識がどうしても働いてしまいます。
 しかし、TBSのラジオ番組で主要メンバーのひとりである奥田愛基氏の話を聞いて僕の意識が杞憂であると思いました。
 まず奥田氏は「自分はSEALDsの代表ではない」とキッパリとことわっています。そして、その話し方には気負いが全く感じられませんでした。よく芸能界で見かけるような「自分が前に前に」という目立とうパフォーマンスが微塵も感じられませんでした。その姿勢はのちの公聴会でも出ていたように思います。そして、そのあとのテレビインタビューでも「自分は代表ではない」とことわりを入れています。その姿勢に好感です。
 しかし、好むと好まざるに関係なく進むのが人生です。たぶん、今後奥田青年は政界やマスコミ界に翻弄されることでしょう。なんと言ってもまだ学生という社会的には未熟な立場です。ですから、これから奥田氏に必要なのは奥田氏をきちんとした方向に導いてくれる大人です。奥田氏を利用しようとして近づいてくる大人が幾人も現れるのは想像に難くありません。誰を選ぶかがとても重要になってきます。
 かつて学生運動が花盛りだったとき、結局は集団における権力闘争に陥り学生運動は大衆から離れてしまいました。どんな高邁な思想を持っていようとも、行動に移すのは生身の人間です。そして、その人間は権力という魔物に取り付かれやすい性向を持っています。
奥田青年が今のまま根本が変わらないことを願っています。
 そしてあとひとつ僕が願っているのは、今回のことで政治に関心を持った若い人や主婦といった無党派層の人たちが今の気持ちを次の選挙まで持ち続けてくれることです。なにしろ投票率が50%そこそこというのはあまりに情けない民主国家です。
 じゃ、また。




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