<責任を負う>

pressココロ上




 驚きました。熊本・大分での大地震です。地震の速報が出たのは14日(木)の夜でしたが、そのときの速報ではあまり被害の大きさが伝わってきませんでした。ですので、その時点では「被害はそれほどでもない」と感じていました。しかし、翌朝になり被害の深刻さが明らかになってきました。
 報道によりますと、地震の規模は阪神・淡路大震災や東日本大震災に匹敵するくらいだったそうですから、被害が小さいはずがありません。テレビの映像では倒壊した家屋や寸断された道路、崩落した橋などが映し出されていました。運よく逃れられた人もいましたが、亡くなられた方もいます。夜でしたのでお休みなっていた方もいたのでしょう。これ以上、亡くなられた方が増えないことを祈るばかりです。
 今回の震災が先の2つの地震と最も違う点は地震が収まりそうな気配がしないことです。震度6以上の地震が1度ではなく数度起きていますが、このような現象は先の2つの地震では見られませんでした。これまでは大きな本震が起きたあとは余震が起きながらも少しずつ収束していくパターンでした。しかし、今回は本震と変わらない揺れの余震が幾度も起きており収まりそうな雰囲気が感じられません。それがとても不気味です。
 人間は先のことが見通せないときは不安が大きくなります。早く状況が落ち着いて今後の目処がつくような状況になることを願っています。政府はもちろんのことすべての政治家が政局のことなど考えずに被災者を救助することに全精力を傾けてほしいと思います。
 テレビでは地震発生以来多くの時間を割いて被災した地域の様子を伝えていますが、実は僕は気になっていることがあります。それは原発の状況です。今回の震源地の隣の県には唯一稼動している川内原発がありますが、その情報が少ないように思います。徒に不安を煽るのは慎まなければいけませんが、あまりに軽く触れるだけのニュースにも不安を感じます。たぶん僕と同じように感じている人は少なくないでしょう。なにしろ東日本大震災では震災後5年が経ってから明らかになってくる事実があるのですから…。
 人生指南書などの本には「ある人物の評価は問題が起きたときに定まる」と書いてあったりします。普段、わかったようなことを口先だけで教訓めいて話している人が「いざ!」というときになにもできずに化けの皮が剥がれるということはよく見る光景です。実際の行動が伴わないのでは評論家と一緒です。評論家ほど実際には役に立たない人種はいません。安倍首相も今回の対応で政治家なのか評論家なのかがわかるかもしれません。
 経済界でも驚くようなことがありました。セブン&アイHDの鈴木敏文会長兼CEOが退任したことです。以前コラムで書いたことがありますが、僕はここ数年の鈴木会長の経営手腕に疑問を感じていました。理由は、経営者でありながらまるで評論家のようなことばかりを話していたからです。
 そもそも論になりますが、鈴木氏はイトーヨーカドーの幹部としてセブンイレブンを創業し成功させたことが認められて親会社のトップにまで上りつめました。そのセブンイレブンの企業形態はフランチャイズシステム(FC)です。そしてFCは一般企業とは異なり、企業形態が特殊です。リスクを加盟店に押し付けて本部はリスクをできるだけ負わないシステムになっています。
 このようにFCは本部がとても有利な状況で経営できるのですから成功して当然という側面があります。なにしろ店舗運営の責任を負うのは加盟店主ですから、FC本部は店舗運営において人員確保の心配も残業代の心配も、もちろん社会保険料を負担する心配も要りません。小売業で最も大変なこれら店舗運営における人材的な負担がないのですからとても有利です。ほかの一般企業の経営者からしますと、失敗する要因が見つからないと感じるのではないでしょうか。
 もし本当に鈴木氏が経営者として能力が高いなら親会社イトーヨーカドーの社長に就任しても好業績を出すことができたはずです。しかし、結果はそうはなりませんでした。業績は落ちたままです。
 そしてさらに問題なのはイトーヨーカドーの業績が上がらない責任を自らは全く負っていないことです。まるで他人事のように担当者の部下を責めたてているだけです。本来、CEOという役職は企業の最高経営責任者のはずです。
 今年のはじめに鈴木氏は東洋経済という経済誌でインタビューを受けています。そのインタビューにおいて鈴木氏はセブン&アイのCEOとしての役割を「方向性を示すこと」と語っていますが、方向性を示すだけで具体的な施策は部下がやることと考えているようでした。しかし、方向性を示すだけなら評論家と大して変わりありません。経営者は具体的に実際に動いてこそ責任を全うしたことになります。
 ところが面白いことにインタビューで鈴木氏は部下を「評論家になっていて具体的な対応ができていない」と叱責していました。繰り返しになりますが、鈴木氏によりますとCEOは「方向性を示すこと」だそうです。
 このような考えでいるならCEOという役職は企業の業績の責任を負う必要がないことになってしまいます。このような状況はやはり健全とはいえません。僕はずっとだれが鈴木氏の首に鈴をつけるのかを注目していました。報道によりますと、その役目を果たしのは鈴木氏のあとにCEOに就任する井阪隆一氏のようでした。
 鈴木氏は24年間もトップに君臨していたそうですが、僕からしますと遅くとも10年前には退任していてもおかしくないように思います。やはりどう考えても24年は長すぎます。今回の退任劇が起きるまで、それまでにいた役員の人たちはいったいなにを考えながら仕事をしていたのでしょう。役員としての責任を負っていなかったのでしょうか。僕にはそれが不思議でなりませぬ。
 みんな茶坊主だったのかぁ…。
 じゃ、また。
 




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