<見て見ぬふり>

pressココロ上




本日は投票日ですが、台風が来ていますので投票率がどうなるか心配です。最近は期日前投票を利用する人が多いようですが、投票場所を工夫することで投票率はもっと上がるのではないでしょうか。さらに言うなら不正投票を排除することが確保できるなら電子投票という方法も投票率アップに貢献するように思います。ですが、選挙において最も大切なことは真面目に真剣に政治と向き合う姿勢です。いくら投票率が上がったところでポピュリズムに流されたり自分のことしか関心がないのでは選挙自体が意味をなさないことになってしまいます。
世界中のみんなが自分だけではなく、「世界をよくする」という視点でものごとを見たり判断したりしないといつまで経っても平和な社会を実現することはできません。
…こんなことを書いていますと、学生時代に言われた言葉が頭をよぎります。
「おまえ、青臭いな!」
その青臭い僕が先週最も憤りを覚えた事件は福井県で起きた男子中学生の自殺事件です。報道によりますと、担任や副担任の「厳しい」を通り越して「激しい」叱責が続いたことが原因のようでした。お母さまは「先生によるイジメが原因と思っている」と話しています。この事件が報道されてからはフェイクニュースもたくさん出回っていそうですので事実確認には注意が必要ですが、教育委員会の発表ではやはり担任と副担任の先生としてあるまじき教育態度に原因があるようです。
この事件で僕が胸を締め付けられたのが、中学生の祖母にあたる方が家庭訪問をした担任に「副担任と二人きりにしないようにお願いしていたこと」です。これには理由があるようで、男子生徒が小学生時代にこの副担任が教習生として教えに来ていたことがあり、その際にこの教習生が男子生徒に対してイジメに近い接し方をしていた過去があるからです。偶然にも中学校に上がってからそのときの教習生と「副担任と生徒という関係」で遭遇ししてしまったことになります。祖母はそのような二人の関係を覚えていたのだと思います。
おそらく祖母は「副担任からイジメられないように配慮してほしい」との思いで担任にお願いをしたのでしょう。しかし、その担任もまた男子生徒をイジメる側の人間だったのです。これでは暴力団の組員に脅されている人が暴力団の組長に助けを求めるようなものです。状況が悪くなることはあっても改善するはずがありません。男子生徒の気持ちは如何ばかりだったでしょう。彼の気持ちを想像しますと心が張り裂けそうです。
もう20年以上前ですが、TBSドラマに「人間・失格」という堂本兄弟が俳優デビューした作品がありました。このドラマの主演は赤井英和さんですが、脚本は野島 伸司さんです。野島さんは80年代後半にフジテレビでいわゆるトレンディドラマを書いていた人ですが、僕の想像ではトレンディドラマブームが終わったあとに次の方向を模索している中で作ったのが「人間・失格」だったように思います。それ以降もたくさんのヒット作を作っていますが、その中でも「人間・失格」は特に暗いドラマでした。
因みに「人間」と「失格」の間に「・」が入っているのは、最初は「人間失格」だったのですが、太宰治さんの遺族から「クレームが入ったことが理由」となにかで読んだ記憶があります。
話を戻しますと、「人間・失格」はイジメのドラマです。これでもかこれでもかというほどの陰湿なイジメがドラマの中で行われていました。そのイジメによって自殺した我が子のために赤井さん演じる父親が復讐するドラマですが、今回の福井県のイジメ事件の報道を見ていますと「人間・失格」を彷彿させてしまいます。子供は世界が狭いのですから少しのイジメでさえ逃げ場がなくなります。そうであるだけに担任と副担任という本来生徒を助ける側である教師がイジメの張本人だったのですから言葉がありません。あまりに男子生徒がかわいそうです。
あのドラマが放映された当時も既にイジメは社会問題化していました。あれから25年以上経っていますが、イジメを取り巻く環境は全く変わっていないことになります。僕にはそれが不思議でなりません。教育関係者の怠慢以外にありません。
自殺した男子生徒にはお父様がいらっしゃらないようですが、そうした家庭環境も教師の対応に関係していたのではないか、と僕は邪推しています。つまり、男親がいないので「うるさいことを言われることがない」と甘くみていたという意味です。この考えはちょっと行き過ぎかもしれませんが、このようなよからぬ考えが思い浮かぶほど僕は学校関係者に対して怒りを感じています。
このような事件があるたびに僕は思うのですが、周りの先生たちはいったいなにをしていたのでしょう。ある程度の普通の大人であるなら中学生という子供の精神状態を想像することができます。先生という子供と接することを仕事にしている大人であるなら、なおさら生徒の気持ちを理解できるはずです。生徒の気持ちを理解できないのであれば先生という職業に就く資格がありません。先生は機械を動かすのが仕事ではありません。人間というこれから大人になる子供たちを導くのが仕事です。その先生が生徒を自殺に追い込むのでは子供たちはどのように教育を受ければよいのでしょう。
今、学校の先生たちの職場環境が問題になっています。サービス残業の問題とか日曜にも部活動があったりして「休みが取れない」など労働者という側面からしますと大変であることはわかります。ですが、このような事件がありますと本当に先生たちは「生徒に真剣に向き合っているのか」という疑心暗鬼な思いが浮かんできます。先生たちは「自分たちが楽をしたいだけではないか」と、そのような考えが浮かんでくる今回の事件です。
先にも書きましたが、イジメを苦にして自殺をしている生徒が出ているのは20年以上前です。先生という職業に就いているならそのような事件を知らないはずがありません。それでもなお先生が生徒を自殺に追い込むような事件が起きるということは先生という職業に就いている人たちが、生徒に対して「いかに真剣に“生徒”に“教育”に向き合っていないか」を示しているようにも思えます。
繰り返しになりますが、これまでイジメが原因で自殺事件が起きたとき周りの先生たちはなにを考え、どのように対応していたのでしょう。
今回の事件でも、同僚の先生が「叱責の行き過ぎ」を諫めるような話をしたというような報道がありますが、実際に自殺が起きているのですからなにもしなかったのと同じです。先生という職業に就いているのなら、そのくらいの厳しい反省を自らに課してほしいと思います。
あと一つ僕が思うのは、先生という個人の資質だけに頼るのではなく、「システム」や「制度」といった全体的な環境を作ることの重要性です。「システム」や「制度」といったもので生徒を守る環境が整っているなら一人や二人くらいの教育者としての資質に問題がある先生がいたとしても生徒が自殺に追い込まれることがなくなります。
具体的には、生徒が学校を自由に移動できるようにすることです。この自由な移動を可能にするだけで地獄からのがれることができます。本当に、イジメに遭っている生徒にしてみますと、学校は地獄でしかありません。先生方はそのことを強く認識してほしいと思います。先生という職業に就いているなら「見て見ぬふり」はイジメを助長しているのと同じなのです。
もう遅いけど、選挙で投票しないということも「見て見ぬふり」だよなぁ。
じゃ、また。




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