<コンビニ業界>

pressココロ上




経済誌のサイトに大手コンビニチェーン本部の社長の方々のインタビューが載っており、ともて興味深かったので今回は久々にコンビニついて書きたいと思います。
憶えている方はかなりコンビニについて関心を持っている方ですが、2011年に東日本大震災が起きるまでコンビニ業界は壁にぶつかっていました。いわゆる閉塞感というものですが、「お店の飽和状態」が指摘され出店はあまり行われていない状況でした。しかし、東日本大震災のときにコンビニが社会貢献または地域貢献という意味も含めて存在価値が高まり、コンビニが見直されたことが契機となり出店競争が再開されることになりました。
実は、コンビニが一気に伸びるきっかけになったのは東日本大震災が初めてではありません。その前の大震災である阪神淡路大震災のときもコンビニは復興に大きな力を発揮しています。当時のローソンはダイエーが経営していましたが、そのトップである中内さん自らが陣頭指揮をとって地域の再建や加盟店の再建に尽力していた報道がなされていました。あのときも「コンビニがあって助かった」と感じた住民および国民の方は多かったはずです。そして加盟店および本部にとってもコンビニの価値をアピールすることができて、やりがいを感じていたはずです。
そのような業界ですが、コンビニの勢力地図は大手3社で固まりつつあります。そして、昔から言われ続けていることですが、セブンイレブンが頭一つ抜け出ています。僕のような第三者からしますと不思議に思えるのですが、常にセブンイレブンは約10万円も売上げが高くなっています。
今の時代は真似をすることが容易です。製品を作ることもそうですが、飲食業などでは店の造りもメニューも簡単に真似ができます。このことはつまり各会社による差別化が難しいことを示しており、それは即ち売上げについてもあまり差がつかないことになるはずです。
実際、居酒屋業界では業績のいいチェーンの「店の内外装」や「メニュー構成」、「メニュー名」などを「真似された」として裁判に訴えている事例がたくさんあります。それほど他社との違いを継続することが困難なのですが、コンビニ業界には当てはまらないようです。
繰り返しになりますが、セブンイレブンは他社よりも売上げが10万円も高い状況がずっと続いています。そして、その理由が判然としません。
経済誌や評論家が分析はしていますが、今一つ的を得たものはないように思います。そもそも、もし本当の理由がわかったならこれだけの売上げの差がついた状態が続くはずはありません。「違い」を真似すればよいだけですから、本当の理由はだれもわかっていないのです。
経営の世界ではトップの力量で企業の業績が決まると言われています。ですから、その意味で言いますと、セブンイレブンのトップの経営センスが優れているということになりますが、僕にはどうみても特別に優れているとは思えないのです。なぜなら、本当に優れた経営者であるならセブンイレブン単体ではなく、セブン&Iホールディングス全体の業績も上がっているはずです。ですが、セブン&Iホールディングスはコンビニ以外は今一つの業績です。つまり経営者による能力の差はあまりないと考えて差し支えないことになります。セブンイレブンは昨年創業者とも言える鈴木敏文氏が第一線を退きましたが、その鈴木氏が活躍していた当時のほかの2社の社長も鈴木氏に見劣りする経営者ではありませんでした。
それでも、売上げが10万円も違っていたのが現実です。
最初に「セブンイレブンを追い詰められるかも」と期待したのがローソンの新浪 剛史氏でした。ですが残念なことに社長を退くまでの間にその差を縮めることはできませんでした。新浪氏は現在サントリーの社長に就任していますが、これはサントリーの会長である佐治 信忠氏に経営力を見込まれたからです。その新浪氏にしてもセブンとの差を縮められなかったのですからこの10万円の差の大きさがわかります。
僕は新浪氏については忘れらないエピソードがあります。それは「24時間営業の見直し」です。新浪氏は社長に就任当初、加盟店の負担を軽くするために「24時間営業の見直し」を模索していました。マスコミを通じてその発言を聞いたセブンの鈴木氏は「コンビニの24時間営業は絶対に必要な要件だ」と雑誌のインタビューで答えていました。結局、新浪氏は「24時間営業を見直す」ことはありませんでしたが、やはりコンビニにとって24時間営業は絶対条件なのかもしれません。
因みに、「売れない深夜帯でも営業していなければいけない理由は、売れない深夜帯を閉店すると昼間の売上げも落ちる」からと言われています。僕はその真偽はわかりませんが、新浪さんでさえ24時間営業を続けたのですから真実なのかもしれません。
新浪さんは売上げに関してセブンとの差を詰めることはできませんでしたが、企業イメージを上げることには成功していました。それと同時に経済人として有名になっていたことも重要です。メディアに頻繁に出ていましたので業績以上に好印象を世の中に与えていたように思います。
ローソンのイメージが上がりましたので業界第3位に甘んじていたファミリーマートに「取り残され感」がありましたが、そうした状況を覆そうと改革したのが伊藤忠からやってきた上田準二氏でした。上田氏が最も力を入れたのは万年3位に甘んじている社員の意識改革でした。僕の印象では新浪氏と同じような感覚で企業風土を変えていたように思います。簡単に言いますと、「おかしいと思うことを改善する」に尽きます。それまでは「少しくらいのことはまぁいいや、どうせ3位だから」というものでしたので、上田氏の改革は社員からしますとイノベーションのように映ったかもしれません。
企業というのは働く人のモチベーションでいくらでも変わりますが、万年3位に慣れきっていた社員のモチベーションを上げる施策が功を奏して活気がみなぎったように見えていました。現在、上田氏は第一線を退いていますが、現在の好調を維持しているのは上田氏の功績が大きいと思っています。
さて、このような足跡の大手3社ですが、現在曲がり角にきているようです。各社とも社長が変わったこともありますが、ここに来て方向性の違いが鮮明になってきたように思います。
メディアに書いてありました各社のキャッチコピーを紹介しますと、セブンイレブンは「24時間営業は絶対続ける」、ファミリーマートは「コンビニは間違いなく飽和状態」、ローソンは「まだまだ店舗は増やせます」となっています。
興味深いのはファミリーマートの社長とローソンの社長の認識が正反対であることです。野次馬的に見ますと、どちらが正解なのか結果がとても楽しみです。ファミリーマートの社長は沢田貴司氏という方で、ローソンの社長は竹増貞信氏という方ですが社長に就任した背景などについてつぶさに見て行きますととても面白いのですが、長くなってしまいますのでそれについては来週に書きたいと思います。
新聞やテレビなどでコンビニに関する記事が出ますが、それらのメディアは重要な根本的な問題を避けているように思います。おそらくコンビニが上得意の広告主であることと無関係ではないと思います。ですが、根本的な問題を避けてコンビニ経営について語るのは正しい分析とは言えません。働いている人に給料を払うのではなく、働いている人から上納金を絞り上げるシステムはどう考えても正常な経営システムではないからです。
じゃ、また。
兄弟ブログ
僕が出会った「いい人・悪い人・変な人」




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする