<柔らかい発想>

pressココロ上




僕はおじさんですので大分前に漫画を読まなくなりましたが、大人になってからも読んでいた漫画で最も印象に残っているのは「ドラゴンボール」です。ちょうどラーメン屋を営んでいたのですが、お店用に漫画を購入していた関係で「ドラゴンボール」を読むようになったと記憶しています。
当時は「ドラゴンボール」を読みたいがばかりにジャンプの発売日を楽しみにしていました。こうした気持ちは僕だけはなく当時の少年たちのほとんどが同じ気持ちだったように思います。その証拠に本来の発売日の前日に販売をしていたお店の情報が行きかっていました。すぐに売り切れてしまうので競って買いに走っていました。
僕の場合は毎週隣のコンビニで購入していましたので店主の方がジャンプが届いた日(本来の販売日の前日)にわざわざ教えにきてくれていました。ですから、僕はほかの人よりも1日はやく読んでいました。(笑)
ドラゴンボールを読んでいて、僕が「いいな」と思っていたのは悟空が暮らしていた地球ではいろいろな人間や動物や神様が一緒に生活していることでした。そこには差別などもなく平和で穏やかな社会があるように見えました。
しかし、現実の地球ではいつまで経っても争いが絶えません。その原因を考えますと、そこには人間の業があるように思います。「業」とは「自分だけが得をしたい」とか「有名になりたい」「賞賛されたい」といった欲です。この欲が世の中のすべての悪の根源です。
今から40年前学生だった僕は、世の中が公平で平等になるには共産主義とか社会主義も悪くはないのではないか、と思った時期がありました。しかし、その後共産主義は消滅してしまうのですが、その結果を見て学者でも評論家でも知識人でもない平凡なおじさんがたどり着いたことは「人間に業がある限り共産主義は成り立たない」という結論でした。
資本主義は人間の業を利用して経済を発展させようとするシステムのように平凡なおじさんには思えます。僕はコラムを書き始めて15年以上経ちますが、コラムを書き始めた頃僕は幾度か「修正資本主義」という言葉を書いていたように思います。僕がこの言葉を初めて目にしたのは経団連の会長を務めていた奥田 碩氏がマスコミのインタビューに答えていたときですが、「なるほど」と合点がいった言葉でした。
「修正資本主義」をざっくりと言ってしまいますと、「競争によって生じた格差を国策によって修正しよう」という考え方です。あれから20年近く経ちますが、残念ながら今の世の中は激しい格差社会になっています。競争に勝った人がその成果を手放したくないと思うのは当然ですので勝者が格差社会を支持することは理解できます。しかし、まだ勝者になっていない人が格差社会を受け入れる考えになっているのは不思議に思えます。
現在、労働組合の組織率はわずか20%前後です。僕には、この数字が若い人たちが格差社会を受け入れる心情になっていることを示しているように思います。労働者がみんなで経営側から果実を獲得しようと活動するのが労働組合です。こうした活動に積極的にならないのは「自分は勝者の側になる」という意識が働いているからです。と、想像します。
人間は労働に対する見返りがなければ働きません。「見返り」には金銭もありますし「賞賛される」とか「有名になる」といった精神的なものも含まれます。そういった見返りが経済を活発化させるうえで必要です。共産主義が崩壊したのは見返りがなかったからです。仕事を適当にやろうが一生懸命に働こうが見返りが一緒では誰も一生懸命に働こうとはしません。
しかし、現在日本ではボランティア活動が活発化しています。災害が起きますと若い人を中心に多くの人が支援に動いています。ボランティアですから見返りがないにもかかわらずです。ボランティアで得られるものは充実感でしょうか…。
今最も注目を集めている経営者と言いますと、やはりzozotownの創業社長・前澤友作氏でしょう。タレントとの熱愛報道も注目されていますが、僕が興味を持ったのは「競争はいらない」という経営哲学です。競争は資本主義の基本原理ですから競争のない社会は共産主義と一緒です。一生懸命働こうが普通に働こうが見返りが一緒では働く意欲が沸かなくなります。
ところが、zozotownでは社員のお給料が同じなのだそうです。「競争はいらない」という経営哲学の元で働くのですから当然と言えば当然ですが、疑問に思える部分もあります。
zozotownを運営しているのはスタートトゥデイという会社ですが、前澤氏は元々はバンドを組んでいたそうでレコードを輸入して販売したのがはじまりだそうです。つまり最初はバンドの仲間と会社を創業したことになりますが、こういうケースでよくあるのが仲間内の主導権争いです。わかりやすく言いますと、「誰が社長になるか」で揉めるのはありがちなトラブルです。
実は、創業時に仲間ではじめながらも業績が上がるに伴い仲間内で諍いが起きるのはよく見かける光景です。前澤氏はzozotownの成功によりマスコミに登場することが多いですが、創業仲間の動向について報じているメディアがありません。反対に言いますと、創業メンバーとの軋轢は影の部分と推察することもできます。
「競争はいらない」という経営哲学は理念としては理想的ですが、現実的ではありません。前澤氏は競争しない市場に展開すると話していますが、いくら自分が競争しない市場で展開していても競争相手が参入してくることもあります。競争相手が出てきたからといってそのたびにその市場から撤退していては企業として成長・存続するのは不可能です。上辺だけで伝えられることを疑いもなしに受け入れるのは危険です。真実を見抜く目を養うことが大切です。
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オウム真理教事件の犯人の死刑が執行されました。これを機にオウム真理教事件について解説する記事を幾つか読みましたが、学歴からしますと騙されそうにない人たちが簡単に麻原教祖にからめとられています。こうした犯罪が今後起きないようにするためには常に思考を柔軟にして、自らを俯瞰する姿勢を持つことが大切なように思います。
じゃ、また。




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