<いつの間にか>

pressココロ上




河野外務大臣が記者会見で、記者の質問に対してはなにも答えずに、まるで質問などなかったかのように無視して「次の質問をどうぞ」と答えたそうです。しかも一度だけではなく4回も同じ対応をしたことが物議を醸していました。後日、河野大臣が自身のブログで謝罪しましたので、この騒動は収束しそうですが、僕も違和感を感じた一人です。以前の河野氏なら絶対にしないであろう対応だと思うからです。
僕は河野氏に期待をしている一人です。今の要職に就く前はラジオなどに出て自民党に苦言を呈する発言をすることが多かったからです。つまり安倍首相に批判的な立場を標榜していたのですが、その河野氏が内閣に入りしかも外務大臣という内閣の要職に就任したときは驚きました。
河野氏が内閣に入り、そして外務大臣になったとき僕は勝手にいろいろなことを想像しました。例えば、自民党もしくは日本を変えるには権力の中枢に入り込む必要がある、と考えたからではないか、などです。少し大げさですが、これまでの言動からしますと「自民党をぶっ壊す」と叫んで首相に上りつめた小泉首相に近いイメージを抱いていました。
それほどの人物を安倍首相は入閣させたわけですが、その人事について政権よりと言われている産経新聞が解説していました。それは、河野氏が麻生副総理の派閥に入っていることと、菅官房長官が河野氏と同じ選挙区で兄貴分という立場だからです。この二人の存在で河野氏をコントロールできると判断した、と解説していました。
しかし、この解説を反対から読みますと、それだけ河野氏は安倍首相とは異なる政治姿勢の持ち主であることの証明になります。「安倍首相とは異なる」とは国民目線で弱者にやさしい政治を目指していることです。さらに言うなら庶民感覚を持っている政治家という意味です。
その河野氏が記者の質問に答えないどころか、無視していると思える「次の質問をどうぞ」の返答は僕のこれまでの河野像とはかけ離れたものでした。しかも4回も行うのはあまりにも失礼です。政治家としてあるまじき振る舞いです。
ですが、これまでの言動からしますと誠実で真摯な政治家を目指しているはずの河野氏です。なにか理由があるのではないか、と考えました。たまたま機嫌が悪かったということも考えられなくもありませんが、立派な大人ですので「機嫌の悪さ」だけでは納得できないものがあります。
そこで考えられるのは、記者の姿勢です。テレビニュースでは河野氏が「次の質問どうぞ」という言葉を連続して発する映像だけが流れましたので河野大臣の発する言葉がぶっきらぼうに答えている印象を与えます。文字で伝える記事にしても河野大臣の発言だけを報じるだけですと、そこに至るまでの経緯や背景は読者にはわかりません。
ここから先は僕の想像ですが、もしかすると記者が「あまりに不勉強な質問をする」のでそれを批判する意図があったのかもしれません。後日の謝罪ブログでは「不適切な対応だった」ことと「いつものように、お答えできかねます」と答えるべきだったと「お詫び」し、記者に対して失礼な対応だったことを認めています。「外交では相手方にこちらのカードを見せては失敗する」とも書いてありましたが、それを承知のうえで「お詫び」をしていますので会見での自分の振る舞いに対して非を認めていることになります。
そうなりますと、余計に「非」に至った理由が気になるところです。そこである評論家のコラムを読んでいましたら、「官邸が外務省を飛ばしてロシアと交渉していること」に対しての「イラつき」を示したのではないか、と解説していました。
大臣と官僚の関係はとても微妙です。政治家は大臣になりますと官僚からレクチャーを受けますが、僕はそこで大臣と官僚の力関係が決まるように思っています。かつてと言いますか、現在でもそういう人はいますが、官僚と政治家の関係はほとんどが官僚が主で政治家が従です。つまり大臣は官僚に言われるままに言動をしていればよいのです。もし能力のない政治家が官僚を動かそうとしますと完全に政治は止まってしまいます。官僚が政治家を大臣(上司)として認めていないからです。かつて民主党が政権を取ったときはこの状態になり崩壊しました。
これは民主党に限った話ではなく自民党でも同様です。先ほど「現在でもそういう人はいますが」と書きましたが、政治家が政治を動かすには完全に官僚の言いなりになるか、または実力がある人が官僚をコントロールするコツを身につけるしかありません。マスコミの報道から察しますと、河野大臣は後者のようです。官僚との関係を良好にしているようですし、コントロールもしているようです。それが可能なのは官僚が河野氏を大臣として認めているからです。
このような視点から先ほどの記者会見を振り返ってみますと、「次の質問どうぞ」という発言は記者に対してよりも、官邸(安倍首相と取り巻き)に対するなにかしらの反抗メッセージと思えなくもありません。先ほどのコラム氏によりますと「官邸は外務省の頭越しにロシアの外相と交渉をしている」そうです。河野氏と官僚がタッグを組んで官邸に抗っているように見えなくもありません。
人は誰しも変わります。気がつかないうちに変わっていることもあります。もし、河野氏が大臣という権力に飲み込まれたことでの「次の質問どうぞ」という発言であったなら、これほど悲しいことはありません。
今EUでは反政府運動が活発化しています。フランスではガソリンの増税からデモが続いていますが、それが隣国にも及んでいるそうです。格差社会と言われるようになって久しいですが、貧困層に属する人たちの反発が激化しそうで不安です。
「内戦は『今日から始める』と宣言して始まるのではない。気がついたら、いつの間にか始まっているものなのだ」
これは国連のイラク問題の特使の言葉ですが、「いつの間にか」になる前にすべての人が気づくことが大切です。河野外務大臣もいつの間にか「傲慢になっていた」とならないように常に自分自身を見つめてほしいと思います。
でも、常に自覚しているのって難しですようねぇ。僕、いつの間にか人生の終盤に差し掛かっています。
じゃ、また。




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