<バレーとバスケの違い>

pressココロ上




以前、noteという投稿サイトにおいて、一番読まれている僕のコラムが「ミュンヘンへの道」という話を書きました。それから次第に読まれることもなくなっていたのですが、最近になってまたどなたかが読んでくれるようになっています。

おそらく理由は、現在行われている「バレーボール ネーションズリーグ2024」の影響だと思います。今までの男子バレーは1972年のミュンヘン大会での金メダルを最後に低迷した時期がずっと続いていました。まさに「失われた50年」だったわけですが、ここにきてようやく光が見えはじめてきているように感じます。昨日のニュースではついに決勝戦まで勝ち進むことが伝えられていました。

僕は中学時代にバスケット部、高校時代にバレーボール部に入っていたこともあり、それらのスポーツについてたまにこのコラムで書いています。その際に書きましたが、この2つの部活を選んだ理由は「背が伸びる」と聞いていたからです。整列するといつも一番前に立つことになっていた僕には「背が伸びる」ことは重要なファクターでした。

高校のバレーボール部に入部したときに新入生が挨拶をする場で、入部の理由を「背を伸ばしたいから」と答えたときの先輩たちの大爆笑は僕の自慢の思い出です。それはともかく、僕はバスケットボール(以下バスケ)とバレーボール(以下バレー)の両方を経験しているわけですが、両方の共通点は「身長が高い人が有利」な競技ということです。ちなみに、身長が低い僕でもレギュラーになれたのですが、それは一にも二にも厳しい練習に耐えられたからです。

僕の高校は公立校だったのですが、一般的に公立校では運動部に限らず部活動ではあまり厳しい練習をしないものです。ですが、僕の高校の場合は顧問が日体大でバレーボールをやっていた先生でしたので「一般的」ではありませんでした。「ミュンヘンへの道」にも登場していた森田選手などと一緒に練習をしていた経験の持ち主で、その先生が顧問として指導していたわけですから「なぁなぁ」の練習が行われるはずはなく、自ずと厳しい練習となっていました。ですが、厳しいながらも暴力的なところは一切なく、それが僕が続けられた理由です。

結局、夏の合宿が終わり秋を迎える頃には、新入生として入部した部員の大半が退部し、5人しか残っていませんでした。ご存じのとおりバレーボールは6人で戦う競技ですので僕のレギュラーが確実となった次第です。もちろん身長が低い僕のポジションはセッターでした。

そうした経験のある僕が常々考えていたのは、バスケとバレーでは「どちらが身長の低い選手が、身長の高い選手と対等に渡り合えるか」という問いでした。両者の違いは相手チーム選手との境界線があるかないかです。バレーはネットにより自チームと相手チームに境界が設けられていますが、バスケは境界がなく自由に動くことができます。「自由に動ける」ということは、身長の低い選手が相手選手と対等に渡り合える大きな要因となります。僕の答えはずっと「バスケットボール」でした。

ところが、最近の日本バレーの快進撃を見ていて僕の答えが揺らぎはじめました。日本チームの主将兼エースは石川祐希選手です。石川選手に関しては前にも紹介しましたが、石川選手はバレー選手としてはそれほど身長が高くはなく1メートル92センチしかありません。ミュンヘンオリンピック時の三羽ガラスと言われていた大古選手や森田選手、横田選手たちでさえ194センチくらいありました。石川選手は50年以上前の日本選手よりも低い身長で活躍しています。それはそれは凄いことです。

石川選手は現在、世界各国の代表選手が集まるイタリア・セリエAでプレーしていますが、単なる選手としてではなくキャプテンを務めるほど活躍しています。世界の代表選手が集まるのですから192センチの石川選手の身長は間違いなく低いほうでしょう。その192センチの身長で、ほかの選手から頼りにされるキャプテンとして活躍しているのが、僕はとても不思議でした。もちろんズバ抜けたジャンプ力はあるでしょうが、セリエAがそれだけで活躍できるほど甘くないのは容易に想像がつきます。

僕はYouTubeでたまにバスケットボールのNBAの動画も観ています。僕の年代ですと「神」と呼ばれたマイケル・ジョーダン選手が最も有名ですが、リングから数メートル離れたところから空中を舞うようにして打ちつけるダンクシュートはジョーダン選手の代名詞となっています。

そのバスケがバレーと違うのはネットのような境界がないことで、そのことによって自由にコート内を動き回ることができます。動き回ることで身長の低さをカバーできますので、「身長の低い選手でも高い選手と対等に渡り合える」と僕はずっと思ってきました。

しかし、先日観たNBAの動画は僕の考えを覆すものでした。高身長がそろっているNBAの選手の中でもさらに図抜けて身長が高い選手がゴール下に陣取り味方からパスを受け「いとも簡単に」リングにボールを入れているのでした。本当にシンプルに、ゴール下で味方からのパスを受け「いとも簡単に」得点をしている光景を幾度も見ました。まるで中学のバスケの試合みたいに。

僕が中学1年生の頃、3年生には中学生でありながら180センチを優に超えているTさんという先輩がいました。ですので、3年生チームの戦い方は実にシンプルで、Tさんをゴール下に行かせ、そのTさんに味方の選手がパスをするだけでした。中学生で180センチを超えていますと、ほかの選手とは頭一つどころから二つは抜けています。Tさんへのパスを防ぐのはほとんど不可能でした。シンプルで確実な戦法でした。

その中学時代に見た光景と同じ光景を世界のNBAで観たのです。驚きというよりもショックでした。もちろんリングから離れた位置からシュートする「スリーポイント」も大切ですが、確率は100%ではありません。それに対して、ゴール下からリングにボールを入れる方法はほぼ100%に近い確率がありました。身長が高い選手のほうが圧倒的に有利なのは間違いないようでした。

192センチしかない石川選手が世界で通用しているのは、ジャンプ力もさることながら打つコースと、タイミングのとり方です。自分よりも身長が高い選手がブロックをしてきますと、それを打ち破るのは並大抵ではありません。それでも、石川選手はブロックを打ち破っていました。

テレビでは得点を決めたあとなどにスロービデオが出てくることがありますが、その映像を見ていて僕はあることに気づきました。石川選手はブロックに飛んでくる二人の選手の隙間、もしくはブロックの両手の隙間を狙っているようなのです。本人に確認したわけではありませんが、スパイクを決めている場面では、ほとんどそのようになっていました。僕には偶然と思えませんでした。

あと一つのテクニックはブロックアウトです。これもブロックの隙間を狙う打ち方に通じるものですが、というよりも隙間を狙って打ちますと自然にブロックの手の正面ではなく端もしくは側面に狙うことになります。それが結果的にブロックアウトを誘うことになります。僕の想像するところ、石川選手はそれを意識的にやっています。いえいえ「やるテクニック」を身に着けています。そうでないと、192センチの選手が世界で通用するわけがありません。このテクニックを身に着けたなら、身長差はものともせずに済むことになります。

というわけで、バスケとバレーでは「どちらが身長の低い選手が身長の高い選手と対等に渡り合えるか」という問いの答えは、以前は「バスケ」でしたが、現在は「バレー」と思っています。

ちなみに、「バレーボールネーションズリーグ2024」決勝戦はフランス相手に明日(7月1日)です。日本、ガンバレ!

さて、身長が低い僕ですが、年をとるとさらに低くなる(縮む)ことを60歳を過ぎた頃に知りました。人生で最も高かったときは168.8 センチだったのですが、次第に低くなり今では165センチになってしまっています。悲しいです

…、すみません。見栄を張ってしまいました。本当は164センチです。

じゃ、また。




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