<業務委託>

pressココロ上




いやぁ、暑い日が続きます。外で作業をしている僕にはやはり堪えます。太陽を浴びて知らず知らずのうちに体力が消耗されているのですが、仕事中は作業に没頭していますので体力が落ちてることを忘れてしまうことがあります。ですが、帰宅して妻に僕の首周り、特に首筋あたりの日焼けぶりを指摘されて、自分が陽を浴びていることを実感し、体力維持を心掛けるようになっています。

首筋の日焼けを指摘されるのは妻に髪の毛を切ってもらうときなのですが、僕は結婚以来ずっと妻に切ってもらっています。結婚して40年経ちますので、つまりは40年間床屋さんに行っていないことになります。妻に髪を切ってもらうことにした理由は、自分がマザコンのようで告白するのが恥ずかしいのですが、実は僕は、結婚前は髪の毛をお母ちゃんに切ってもらっていました。その流れで妻にも切ってもらうことにしたのでした。ですので正確には、50年以上床屋さんには行っていないのですね。

よく「母の味」を嫁が引き継ぐなどと言いますが、僕の場合は調髪が引き継ぐ対象となっていました。ですが、「味」のように「髪の切り方」をお母ちゃんが妻にわざわざ伝授するようなことはなく、お母ちゃんからしますと、単に面倒なことをしなくてよくなり喜んだだけというのが実態です。

では、髪の毛など切ったことがない妻はどのようにしてハサミを使いこなしたかと言いますと、それは「適当」です。僕の愛する妻は、、、本当です、、、気が強く意地が悪いのですが、、、本当です、、、不思議と料理と裁縫方面に関しては素晴らしい才能の持ち主です。ちなみに、掃除方面は不得手です。

妻は40年以上前に、いわゆる集団就職で上京してきた方ですので、ある意味まだ世間知らずの家事など全く経験のない田舎娘の状態でした。そうした状態のままもうすぐ22才になろうかという年齢で結婚したのですから、本来ですと料理や裁縫などはできそうもありません。ですが、なぜかできていました。高校は家政科だったそうですが、高校で習うことなどたかがしれていると思いますので、それを思いますと、気が強く意地悪ではありますが、家事方面に関しては持って生まれた才能があるのかもしれません。

そういう妻ですので、僕の髪の毛も適当だとは思いますが、なんやかんや言いながらそこそこ毎回きれいに切ってくれていました。そんな妻が昨年、自転車で転んで利き腕の肩付近を骨折したのですが、その話はこのコラムでもご報告しました。プレートを埋め込む手術をするほどの大けがだったのですが、結局完治をするまでに半年以上もかかることになっています。(まだ、最終確認のための通院をしています)

ちなみに、妻はラーメン店時代にも交通事故で足首を複雑骨折という大けがを負っており、足首にもプレートが埋め込まれたままになっています。つまり、妻は肩と足首に鉄板が埋め込まれたサイボーグ人間なのであります。

一家の大黒柱である妻がケガをしますと、同居している夫としてはとても困ります。生活するということはいろいろな家事をこなすことでもあります。具体的なこととしては洗濯や料理などがありますが、妻のケガによってそれらはすべて下部(しもべ)である僕が担うことになります。

実は、きちんとできるかどうかは別にして僕は料理も洗濯もさほど苦ではありません。ですので、家事全般は大変なことは大変ですが、なんとかこなせます。ですが…、そうなのです。困ると言いますか、全く手に負えないのが髪の毛、調髪なのです。こればかりは夫ひとりではいかんともしがたいことでした。

妻は手術をしたあと、よく腕を骨折した人がしている格好、腕を直角に曲げ、その腕を首から白い布でつり下げている、あの格好をしていました。いかにも「骨折したぞー!」という姿ですが、あの姿の一番の理由は「腕を動かさない」ことにあるらしいです。つまり折れた骨がしっかりとつながるまで動かしてはいけないのです。

しかし、一定期間が過ぎますと今度は反対です。少しずつ動かさなくてはいけなくなります。それまで腕を動かしていなかったので筋肉が固まってしまっているからです。その筋肉を骨折する前の状態に戻すためにリハビリをする必要がありました。人間の肉体は本当に複雑にできています。

妻がリハビリを始めたのは手術が終わってから1ヶ月半を過ぎた頃でしょうか。毎週リハビリのために通院していました。リハビリをするということはある意味腕を動かしてもいいことになります。そこで僕は妻にお願いしました。「髪の毛、切ってくれない?」

妻は了承してくれたのですが、やはり肩はまだ完全に動かせていない状態です。前のようにハサミをテキパキと素早くは動かせないでいました。それを見て僕は思いました。「そうだ!京都行こう」…、違った、「そうだ!電動バリカンを買おう」。

かくして僕はamazonで電動バリカンを買い、妻はそれを使い肩に負担をかけずに調髪ができるようになりました。ケガがほぼ治った現在でも電動バリカンは重宝しており、ハサミとうまく使い分けながら調髪しています。電動バリカンの一番のメリットはなんといっても調髪に時間がかからないことです。

床屋さんに行きますと4千円前後かかりますし、今流行りのチェーン店でも千円程度はかかります。それを妻にただでやってもらっていますので、得をした気分になります。ですが、床屋さんがそれ相応の金額をとるのは資格があるからです。妻はただでやってくれますが、お金を受け取って調髪するには資格が必要です。

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僕はビジネス関連のサイトを運営していますので、ネットを見ていますとビジネスに関連した広告が出ることが多くなります。そのときに、最近気になっているのが求人サイトが出稿している独立に関する広告です。ある求人サイトは独立を目指している方向けの広告でフランチャイズチェーンを紹介しているのですが、僕からしますと「その仕事、フランチャイズじゃなくて、業務委託でよくね」という思いがしています。

「フランチャイズ」と「業務委託」の最も大きな違いは初期費用です。「フランチャイズ」では最初に加盟金とか研修費用の名目で幾ばくかの、またはそれなりの金額を本部に収め、また仕事に必要な道具なども自分で購入するシステムになっています。さらに毎月ロイヤリティをとる本部、業種もあります。それに対して「業務委託」では加盟金も研修代も必要ありませんし、作業用の道具一式なども仕事発注元が貸与してくれるのが一般的です。

この説明からわかるように、仕事をする側にとって「フランチャイズ」はあまりに不利な条件になっています。それにもかかわらずわざわざ「フランチャイズ」で仕事を探している人がいるのが不思議でなりません。おそらく仕事関連の情報を正しく収集できていないからではないでしょうか。

数週間前、「フリーランス」というタイトルでコラムを書きましたが、その中でも正しい情報を持っていない場合は損失を被ることを書きましたが、今回も同様です。「業務委託」は「請負契約」とほとんど同じ意味になりますが、無料でときには報酬を支払ってまで仕事を教えてくれる「業務委託」「請負契約」がある中で、わざわざ自分でお金を負担して仕事をすることほど馬鹿げたことはありません。そもそも、そのような仕事をフランチャイズシステムとして加盟店を募集している本部が良心的であるはずがありません。

これまでにも書いていますが、僕の現在の仕事は「業務委託」であり「請負契約」です。道具類はすべて発注元から貸与されています。ときには自分で必要と思ったものを自腹で購入することはありますが、基本的には発注元の会社が貸与してくれています。先日、ほぼ同じ内容の仕事がフランチャイズとして加盟店募集が行われていました。加盟金30万円その他の名目もくわえて総額50万円くらいの初期費用でした。しかも毎月ロイヤリティまで徴収される契約です。僕は同じ内容の仕事を初期費用0円、ロイヤリティ0円で「業務委託」で契約しています。

大まかに言いますと、一般的に会社は仕事を受注する営業員がいて、その仕事を実際に作業する作業員がいて成り立ちます。このときに、受注がない場合は仕事が発生しないのですから会社としては作業員のお給料を手当するのも一苦労です。一般的な作業員は月給制ですので、仕事があろうがなかろうが支払わなければいけないからです。

それに対して作業員を業務委託とか請負契約にした場合は月給制ではありませんのでリスクはありません。仕事を発注していないのですから報酬を支払う義務がないからです。ですので、お金の負担的な面から言いますと、会社は月給制の従業員を雇用するよりも業務委託で外注にしたほうがリスクを少なくすることができます。固定の人件費がないからですが、それでも当然ですが、業務委託に対する報酬は支払う義務があります。

ところが、フランチャイズシステムは本部が作業をする人に作業代を支払わなくて済むどころか、反対に作業をした人からロイヤリティを徴収するシステムなっています。これほど現場で働いている人にとって不利な働き方はありません。

会社に雇用されない働き方を目指している人にとって、フランチャイズに加盟するのは一つの選択肢ですが、ほぼ同じ条件で「業務委託」とか「請負契約」という働き方もあります。繰り返しになりますが、フランチャイズにには加盟金やロイヤリティなど負担しなければいけない金銭があるのに対して、「業務委託」「請負契約」はそうした金銭的負担はありません。フランチャイズに加盟する前に同業種での「業務委託」「請負契約」を探しましょう。

調髪は妻に切ってもらう分にはただなのです。

じゃ、また。




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